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この国の田んぼを、次の世代へつなげたい。「北鎌倉精米所」が見据える農業の未来

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
全国各地から選りすぐった有機米を販売するネットショップ。かわいらしいパッケージのお米は出産祝いなどのギフトとして人気を集め、多数の雑誌に取り上げられています。今回は「カラーミーショップ大賞2019」地域賞を受賞した同店で、起業のきっかけや、米農業の未来と目標について伺います。

40才で脱サラ、有機米販売の道へ

自宅のガレージを改装した精米所でネットショップを営む店主・波田 直哉さんにお話を伺います

精米所を立ち上げたのは何年くらい前ですか?

ちょうど7年かな。
そのころに会社をやめて、本格的に店をやりはじめてからは6年半になります。

前職でもお米関係の仕事を?

いえいえ、とある大手企業で広告の原稿を作る仕事をしてました。ちょうど僕が会社をやめたときは、“広告1件で何万円” というビジネスモデルから “送客数につき何万円” という単価設定に移行していく過渡期だったんですけど。
なんていうか……僕、ぜんぜんそういう仕事に興味がなくて。

当時は、どんなものに興味があったんですか?

その頃から有機農業に関心がありました。まだ東京に住んでたときも、休日はよくこのあたりまで土を耕しに来てたんですよ。いわゆる家庭菜園のような感じですね。
もともと僕が有機農業に興味を持ったのは、ダーウィンの著書『ミミズと土』を読んだのがきっかけで…… ダーウィンの本って読んだことありますか?

読んだことないです…。

あのおじさん、すごく小さな発見からめちゃくちゃデカい構想までたどり着く人なんですよ。

あるとき巨大な岩を何十年かぶりに見てみると、昔よりちょっと地面に埋まってることに気付くんです。よくよく考えてみたら古代の遺跡はどれも土に埋もれてる。みんなは「風向きの影響だ」とか言うんですけど、本当にそうなのか? 詳しく調べてみると、そこの土にはミミズがたくさん棲んでいることがわかったんです。

ふむふむ。

ミミズは時々地上に出てきて、うんちをしてまた戻っていく。ものすごい数のミミズたちが長年それを繰り返すことで、土はだんだん耕されて、循環していくわけです。

地上の石も少しずつ沈んで、土に埋もれていくんですね。

そう。そこから「もしかしたら地球の生きものはミミズに生かされてるんじゃないか?」なんてデカいことを言い出すんですよ、あの人。
僕はそれがすごくおもしろいなと思って土に興味を持ち始めて。それで土作りとかいろいろやってるうちに、やっぱり有機農業がおもしろいっていうんで、野菜を作りはじめたんですよね。

お米ではなく野菜だったんですか。

お米をやるには田んぼの整備とか水の権利とか、準備がいろいろ複雑なところがあって。
たまに米農家さんの草むしりを手伝ったり農業体験もしてたんですけど、自分で田んぼを持つのは夢のまた夢だなと思いましたね(笑)まあ、いろいろ考えてるうちに、有機米を扱っているお米屋さんの講演を聞く機会があって。

日本の低い自給率を支えているのはお米で、そのなかでも有機米って全体の0.12%しか作られてないそうなんです。ほとんど誰も作らない有機米を広められれば、もっといい世界が作れるんじゃないかっていう話だったんですけど。僕もそれを聞いて「じゃあ米屋でもやってみるか」と思って、40才になるタイミングで会社をやめました。

なるほど、それが起業のきっかけだったんですね。

それまでは、お金持ちのクライアントにさらにお金持ちになってもらうための仕事しかしてこなかったんで、なんかもっと地に足のついたようなことができないかなと思ったんですよね。
前職でのマネージャー経験のおかげで送客・集客へのノウハウは多少あったので、ネットショップを始めることにしました。
 

手作りのお米ならではの温かみあるデザイン

ショップのデザインや構築はどなたが行ったんですか?

前職でつながりのあった葉山在住のデザイナーさんにお願いしました。手作りのお米の店なので「全体的に手描き感を出したい」とオーダーして。
デザイナーさんにお願いしたまま作りっぱなしで運営するのはありえないなと思ってたし、細かな改善のしやすさという点まで考えると、カラーミーにしてよかったなと思いますね。

ありがとうございます。現在は波田さんがすべて更新しているんですか?

うん、HTMLやCSSは書けなかったけど、今は見よう見まねでいろいろやってます。
商品写真はそこの裏山まで撮影しに行って Adobe Photoshop や Illustrator で画像を作って、商品パッケージも無駄が出ないようにひとつひとつ社内で印刷してます。

この鳥さんのモチーフ、すごくかわいいですよね。

ああ、これね、羽根のところがしゃもじになってるんですよ。

ほんとだ。名前はあるんですか?

いやあ、特に…「しゃもじ鳥」とか呼んでるくらい(笑)
このへんは春になるとメジロやウグイスがたくさんやってくるんです。もう鳥の鳴き声だらけ。ここで創業するからには鳥のイメージにしたかったので、せっかくだし何かお米と絡めたモチーフにできないかなってことで。もともとお米は何種類も扱うつもりだったので、色の組み合わせを変えていろんな品種を表してます。
 

“お米” ではなく “土” を見て話す

店で扱っているお米は、各地の農家さんから直接買い付けを?

そうですね。基本的にはさっき話したお米屋さんに紹介してもらうことが多いです。
おいしい有機米を熱心に作られてる方って、商売っ気のない頑固なおじいちゃんが多いんですよ。こだわりが強くて普通の社会にはあまりいないタイプだから、信頼のおける誰かからの紹介じゃないとコンタクトが取りにくくて。

いわゆる「一見さん」が普通に訪ねていっても難しいんですね。

うん。そもそも作られてる人がすごく少ないし、売り先も決まってるし。農協に買い取ってもらう道を選ばず、化学肥料も農薬も使わない人たちは、自分で販路を開拓するんですよね。

そういった農家さんたちとはどんなふうにコミュニケーションするんですか?

年に数回は直接足を運んでます。実際にどういう作り方をしてるのか、どういう思いで作られてるのかは現地のおじいちゃんに聞かないとわからないので。

商売の話をしてもあまり盛り上がらないけど、土の話をするとみんなめちゃくちゃ嬉しそうに喋ってくれます。彼らが本当に語りたいのは土のことなんですよ。土をがんばって作った結果、いいお米ができているわけだから。「この土めちゃくちゃフカフカですね!」って言うと「わかる?」みたいなね(笑)

ご自身でも土いじりをされてきたぶん、その熱意が理解できるんでしょうか。

うん。業界は違うけど、システムエンジニアさんにも「複雑な処理なのに、こんなにコード短いの?」とか聞くと「わかります?」って反応が返ってくるんですよ。彼らがコードの美しさを自慢したくなるのと似てるんでしょうね。
それに、なんていうか、いい意味で偏屈な人であればあるほどお米づくりが上手な気がします。そういう人のほうがものづくりには向いてるのかもしれない。

農家さんを訪問されるとき、主にどこに注目していますか?

現場を見に行けば、その農家さんがどれくらいの腕なのかはだいたい分かります。
肥料のあげすぎや過剰な植え付けで根っこがきちんと育たなくて、稲穂がすごく倒れてる田んぼもあるんですよ。そういうところのお米ってあまりおいしくない。気合いの入ったおじいちゃんの田んぼではほとんど稲が倒れてないから、見た目で分かっちゃうんですよね。

お客さんの中にも、マニアックなことを聞いてくる人はけっこういます。「有機米」縛りで販売してるんで、ご自身やお子さんにアレルギーのある人がうちにたどり着くケースが多いんですよね。どんな有機肥料を使ってるのかとか詳しく聞かれることがあるので、そういう部分まできちんと答えられるように現地でヒアリングもしています。
 

こだわりゆえの高価格。納得して買ってもらうために

今後、ここで実店舗を展開するご予定は?

リアルで店舗をやるのは考えてないですね。接客もやったことないんで。
お店だとちゃんとした服を着なきゃいけないけど、ネットショップだったらジャージでもできるからね(笑)

今後もネットショップ一本なんですね。生産者さんの熱意を画面上だけで伝えるにあたり、難しいと感じるポイントはありますか。

うちのお客さんは7~8割がギフト注文なんですよ。なので「熨斗はどんな形ですか?」や「メッセージは何文字まで?」など、商品としての見栄えが重視される傾向にあります。ギフトとして利用したい人に農家さんの話をしてもあまりおもしろくないだろうから、情報をもっとうまく出し分けたほうがいいのかもしれないですね。

アピールしたい情報と、実際にお客さまが求める情報が少し離れているんですね。

そうですね。内祝いだと1人から20~30軒にお返しすることもあるので、それぞれのご家庭で無農薬のお米を食べてもらって「おいしかったね」と、そこから有機米を食べることに関心をもっていただければ…という狙いでギフト商品を展開したんですが、まだまだ先は長いです。

そもそも「高いお米を買う」っていう習慣がまだまだ根付いてないんですよ。“お米=安いもの” ってイメージじゃないですか?

安くてたくさんあればいいっていう人は多いですね。

そうそう。それこそ今はドラッグストアなんかでも売ってるし、ネットで買うときも送料無料なら何でもいいやとかね。購買層の中では「1kgあたり300~400円」ってだいたいの価格感が決まっちゃってる。出せても500円くらい。うちはそこに倍以上の価格で売りに行くわけですから、納得して買っていただくにはどうすればいいのか…ずっと模索してますね。

奥さまお手製、つや姫の塩むすびをいただきます

新米のおむすび、とっても甘くておいしいですね…!

お米の「おいしい」って難しいんですよね。お米自体の良し悪しはもちろんですが、各家庭の炊き加減でも味が決まっちゃうので、おかずに比べると魅力を伝えにくい側面があります。

新米の時期ならスーパーでも時々おいしいお米が手に入るけど、時間が経つと急激に匂いが出てきて味が落ちる場合もあって。おそらく肥料をあげすぎてるせいだと思うんですけど……本当に作りのいいやつは新米の時期を過ぎても変な匂いがしなくて、おいしいんですよね。

精米や保管の環境によっても味は変わるんですか?

ほとんどは作りですね。うちのお米は全部冷蔵庫に入れて保管してますけど、以前訪れた農家さんで出されたお米がものすごくおいしくて。「これ何なんですか?」って聞いたら2年前に収穫されたお米で、しかも冷蔵庫にも入れずそのへんに置いてあったやつだったんですよ。

作りにこだわる農家さんによっては、一般的な植え付け密度の半分くらいで作ってたりするので、ふつうの価格で売ってしまうと全然採算が合わないんですよね。「だからこれくらいの価格になっちゃうんです」ということを、きちんと説明しなきゃいけないんですけど。

作りの違い、味の違い。購入者さんにどう伝えるかが難しいですね。

うんうん。ストーリーをもっとわかりやすく伝えたいなとは思ってます。
 

田んぼを次の世代へつなげるお手伝いを

今の国内農業には多くの課題があると思いますが、波田さんはどのように見ていますか。

農家さんを訪ねていくと作り手がみんなおじいちゃんなんですよ。60代でも若手だし、80代の人も現役でがんばってる。息子さんにも「大変だからやめとけ」と言って農業を継がせない人も多いんですよね。自分の子どもには苦労せず普通に働いてほしいと。

高齢化と後継者不足の問題……。

いい立地に田んぼを持ってる人にすら跡継ぎがいない。それってひとえに儲からないからなんですよね。苦労に見合うだけ儲かるようにしないと、この問題はなかなか……。僕たちだけでは数軒の農家さんが暮らしていけるだけしか買い取れないので、これからは買い手を増やせないと、かなり大変になっていくと思います。

もはや時間もあまり残されていないですよね。

うん。今後10年で70才の人は80才になるわけですから、作り手は急速に減っていきます。

いずれ大きな商社などが田んぼを買い取るようになれば、ドローンが農薬や肥料をジャンジャンまいて、まるで工場のようにお米を作る世界になるでしょうね。そうなれば今まで農家さんがやってきたことがすべて水の泡。せっかく土から作ってきたのに、農薬や化学肥料でやりはじめたら土もへったくれもないですから。

お米の販売に携わる立場として、そういった状況のなかで目指すものはありますか?

一人でも多く「跡継ぎができたんだよ」っていう声を聞きたいですね。
今までお付き合いしてきた中で、息子さんが継いでくれた農家さんが2軒あるんですが、次の世代にタスキがつながっていくのがとにかく嬉しかったんですよね。息子さんじゃなくてもいい、誰かやる気のある他人でもいいから、やる気のある人がつないでいってほしいなと。

お客さんも生産者さんも大事だけど、農地と仕事を次の世代へとつないでいくことがいちばん重要なんですね。

そうですね、一人でも多く後の世代につなげられたら嬉しいです。それが目標かな。
本当は僕たちが関わることで農地が増えるのが一番いいんですけど、これからは絶対に減ってしまうので…極力その流れを食い止められるように、少しでも何かできることがあれば。うちが少しでも買い取ることが農家さんの将来につながればいいなと思ってます。

今日はありがとうございました。