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おいしいものがあふれる時代だからこそ、ウチを選んでもらう理由を作る!「ブエノチキン浦添」2代目店長の話。

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
※ブエノチキン浦添さんはカラーミーショップを卒業されました。
沖縄県でやんばる若鶏の丸焼きを販売している「ブエノチキン浦添」。広告代理店で働いていた2代目店長・幸喜朝子さん(ブエコさん)がネットショップを立ち上げ、家族で焼いたチキンを全国へ配送しています。今回は、ネットショップ立ち上げから繁盛までの道のりや、SNSでの情報発信などについて伺いました。

ネットショップ開業のコツは、とにかく人に頼ること

さっそくですが、お店を始めたきっかけから教えてください。

もともと私は、広告代理店でコピーライターとして働いていました。当時の上司の「広告をするなら自分で物を売ってみなきゃ」という一言で、両親が営むチキン専門店「ブエノチキン浦添」のネットショップを始めたんです。 その後、店長である父が体調を崩して長時間の立ち仕事ができない状況に。少しでも両親の助けになれればと考えた末、代理店を辞めてお店を継ぐことにしました。
今まで両親がコツコツ積み上げてきたおいしさをもっと多くの人に知ってもらうために、2代目ブエノチキン店長として、そしてネットショップの店長として、本気の運営をスタートしたんです。

お店のコンセプトは決めていましたか?

コンセプトは「にぎやか家族が元気に働くお店」です。私の考える“よいお店”って、商品がよいのは当たり前。それを売っている人が商品を心から愛していて、楽しそうにイキイキと働いていることが大事だと思ってて。なのでブエノチキンも、60代にもかかわらず今も元気に働く父母や、脱サラするほどチキン好きな私の存在をもっと知ってもらうことを重視しています。そのためにスタッフ写真をたくさん使って、私自身の店長プロフィールもこんなかんじで長~く書いているんです。
「こんなにチキンが好きで、こんなに楽しく働いてる人たちが作るものなら、きっとおいしいに違いない!」さらには「家族経営って、楽しそう!」欲張りですが、そこまで感じてもらいたいんです(笑)

ブエコさん(写真左)とご両親。

狙いどおり、見ているだけで楽しくなってきます! ネットショップの立ち上げはご家族でされたのですか?

当初はすべて自分で行っていました。ですが、もともとHTMLをかじっていた程度しか知識がなかったので、カラーミーショップの開業から文章・バナーの作り方、ツイッターでの拡散方法、お客さまの心をつかむ手紙のやりとりなど…広告代理店時代の上司にすがりながら、必死の想いで細かい部分まで教えてもらいました。資金はカラーミーショップの初期費用を含め1万円ほど。ブエノチキンは1羽から買えるようにして、2~5羽のセットも販売しました。
それからしばらく経った2013年にショップをリニューアルしたのですが、そのときは構成と文章、ディレクションを私が担当。コピーライターとして培ったノウハウは存分に活かしつつ、デザインや撮影はWebデザイナーの友人にお願いしました。

周囲の方にたくさん助けていただいたんですね。

開業準備のコツは、困ったらとにかく周りの人に頼ってみることです!
 

恥も外聞も捨てて、自分自身が広告塔になる

集客の工夫はなにかされていますか?

世の中においしいものがあふれてる今、価格競争に巻き込まれることなく長く買ってもらうには「あなたから買いたい」と思っていただくことが必須! ですのでネットショップでは両親や私の「個性」を感じていただけるように努めています。
そこで活用しているのがメールです。決して高すぎる商品ではないので、ショップ店長である私のキャラクターは「近所にいる、たまに立ち話する陽気なお姉ちゃん」ぐらいの立ち位置に設定しています。なので単に丁寧なメールではなく、お互いに前から知ってるような気持ちでやりとりをさせていただいてて。その効果か、商品の受発注や発送のお知らせメールからやりとりが続いたり、商品を購入していない時でもメールをいただいたり。たわいもない会話ですけど、そうやってお客様の表情が見えてくると、ショップ運営も楽しさがぐっと増します。こうしたやりとりを通してお客さまが実際に沖縄まで遊びに来てくれたときは、涙がでるほど嬉しいです!

素敵!

仕事もプライベートも関係なく、出会った人にはとにかくブエノチキンの美味しさを語るようにしています。場合によっては変なTシャツも着ます(笑)沖縄から全国に知ってもらうためには恥も外聞も捨てて自分自身が広告塔になることが必要だったんです。「チキンを見るとブエコさんを思い出す」「ブエコさんを見るとチキンが食べたくなる」…そういうパブロフの犬的な効果を狙って生きています。

うちは実店舗があるので、ネット購入はもちろんですがお店に来てもらうことが最高のゴールです。商品を買うだけじゃなく「お店に行ってみたい」「スタッフに会ってみたい」というぐらいブエノチキンに興味・愛着を持ってもらうことが、長いお付き合いにつながると信じています。

ブエコさん、SNSもすごく活用されていますよね。

Facebookページでは、お客様スナップやブエノチキンを使ったレシピ、メディア情報などをお届けしています。ただのお客様スナップではなく、何の仕事をしている人?どこから来たの?など、できるだけ聞いて書くようにしています。Twitterは、1日4~5回くらいの更新。ブログ更新のお知らせやお客様スナップなどをFacebook・Instagramと連携しているので、より細かな更新情報になってきます。
それから、個人的にとても活用しているのがInstagram。料理やお客様スナップ、日常の1コマ…。おしゃれで楽しい暮らしをしているチキン屋さんという印象ができるよう活用しています。ブログは個人的な書き物のようにして使っていますね。チキン愛や商売への考え方を知ってもらい、共感してもらうことが目的です。週に3回程度の更新で、お店の近況やわたしの日々考えていることを発信しています。

ショップを作るにあたって、影響を受けた方はいらっしゃいますか?

とにかくたくさんの方がアドバイスをくださったんですが…中でも事業プロデューサーの島田昭彦さんは特にお世話になりました。彼は会社員時代に出かけた、セミナーで出会った「クール京都」の仕掛け人。私の実家がブエノチキンだと知ると「おもしろい! 継ぎなよ!」と言ってくださって、その一言が「いつか2代目やろう!」と思うきっかけになりました。また、彼の言葉に「つくる力を1としたら、伝える力に5かけろ」というものがあり、PRの大切さもそこで教わりましたね。
そして、会社員時代の上司(会長)にして人生の師匠、沖縄公共政策研究所を立ち上げた安里繁信さん! 私は彼のブログを5年ほど担当していて、その中で信念を持って生きること、新しいことに挑戦すること、すべては自己責任であること…などなど、大切なことを山ほど教わりました。私の半分は彼の教えでできています(笑)

ふむふむ。では日頃の運営の参考にしている方がいれば、教えてください。

フードクリエイティブチーム「eatrip」主催、野村友里さんのサイト。ここは本当におしゃれでおいしそうで、見ているだけで行きたくなってくる。憧れの人であり、憧れのショップです。
それからECコンサルタントの水上浩一さん。全国各地でEC運営の勉強会を開催している先生なのですが、沖縄でもたくさんの仲間が水上先生のノウハウを使って目標達成しています。私も友だちに紹介されて半年間受講し、少しずつですが確実に成果が出てきました。「個人プロフィールを強化する」など小規模店舗が伸びるためのノウハウを学べる、とってもおすすめの勉強会です!

あとは「くまモン」をデザインしたアートディレクター・水野学さんの講座で“色を大切にする”ことを教わり、企業や商品を効果的に使うのに今も役立っています。彼の著書『アイデアの接着剤』もとても勉強になりました。書籍でいうと、先に挙げた島田さんの『デキる人は皆やっている』もおすすめです。

たくさんインプットされているんですね!

クリスマス受注が7倍に。困惑と苦悩を乗り越えるまで

ネットショップを始めてから、苦労したことがあれば教えてください。

2009年のオープンから、調子がよくても月の売上はだいたい5万円…。ほそぼそと4年続けてきて、やっと盛り上がってきたのが2013年でした。ブログやFacebookでの地道なPRが実を結んだのか、クリスマスの受注が倍増。前年の約7倍になったんです!

すごい! それなのになぜ苦労を…?

私はすごく嬉しかったのですが、ただでさえ忙しい時期に梱包や発注などが増えてしまったので、慣れない作業に両親が困惑したんです。60代の両親には新しいルーティンや急な繁忙は歓迎されなくて。店長である父からは「ネットショップはやめなさい」とまで言われてしまいました。
お店を盛り上げるためにしていることが、逆に両親の負担になっている。なんのために2代目を始めたのか? 私の存在はお店に必要ないのか? とすごく悩みましたが、喜んでくれるお客さまがいることもまた事実。「やっぱりネットショップをやりたい!」と強く思い、なんとか両親の力を借りずに運営できるよう工夫することにしました。

どういった工夫を?

梱包作業などネットショップに関わることは私がやるようにして、両親の物理的な負担を減らしたんです。それから、お客さまからいただいた感謝のメールを両親と共有するようにしました。

なるほど。お客さまの声が作り手に届くのは、それだけですごく励みになりそうです。

ネットショップがあることで喜んでくれる人が全国にいることを、伝えたかったんですよね。
 

「あんな小さなお店が、こんなことやっちゃうの?」と誰もが思うことをしたい

その後、ご両親にはネットショップ運営を受け入れていただけましたか。

幸いにもネットショップのお客さまが来店してくださるようになって、徐々に両親もネットショップのよさを理解してくれました。さらには2014年のカラーミーショップ大賞「デザイン賞」を受賞できたこともあってか、今では進んで協力してくれるまでになったんです!
私の跡継ぎに反対していた母も、お客さまに「ブエノチキンが繁盛してるのは娘のおかげですよ~!」と言ってくれるようになって、今では家族もショップもいい感じに回せるようになりました。

それはよかったですね…! そんなブエノチキンさんが今後やりたいことは何でしょうか。

今後は同じ市内のパン屋さんと「ブエノサンド祭」をするなど、他店とのコラボもしていく予定です。そうですね、いつかは海外進出とか「ブエノチキン野外フェス」とか…(笑)。「あんな小さなローカル店舗がこんなことやっちゃうの!?」って誰もが突っ込みたくなっちゃうような、おもしろいイベントをやっていきたいですね。

さらなる展開が楽しみです。最後に、ブエコさんにとっての「ネットショップ」とはどんな存在ですか?

私にとってのネットショップは「世界の入口」です! 小さな南の島にいる、幸喜朝子という普通の人が、ネットショップを通して日本中の人と友だちになれたんですから!

これからのEC業界には、セレクトショップが増えていくんじゃないでしょうか。
食品とか衣料とか家電とか、そういう分野ごとのショップじゃなくて、存在感のある人がセレクトしたものを売るショップが増えていく。つまり、オーナーさんのセンスと信頼感が商品価値を高めていく時代がきっと来ると思うんです。人生を豊かにしてくれるこのすてきなツールで、大好きな商品を通して、ぜひ世界とつながってみてください!

今日は素敵なお話をありがとうございました!

※ このインタビューは、2014年にカラーミーショップで公開したインタビューを再編集したものです。