3姉妹の会社経営ルール
それにしても…3人とも、そっくりですね。
一卵性の3つ子なんです。
なんと! 3姉妹でハンドメイド雑貨を販売するようになった経緯を教えてください。
大学生のころ、3人でアパレルブランドを起ち上げたことがあったんですが、そのときはどうやって売ったらいいか右も左もわからず、結局上手くいかなくて。
なので「それぞれ別の仕事でスキルアップしたら、いつかまた一緒にやりましょう」って一度解散したんです。大学卒業後は、それぞれ企業でデザイナーやパタンナーとしてキャリアを重ねて。それで2013年11月のデザインフェスタを機に、わたしが2人に声をかけて、ハンドメイド雑貨のブランドとして活動を始めました。
初めてデザインフェスタに出たときは何を販売したんですか?
あそこに飾っているような、布製のオーナメントですね。
最初はてるてる坊主を販売しようとしたんだけど、制作が追いつかなかったんだよね……。
てるてる坊主…! イベント出店は、今も継続してされているんですか?
半年に1回くらい出店しているんですけど、最初のころは、少しでも信頼度や知名度が上がるならと思って、銀座三越、新宿マルイ、渋谷ヒカリエなど有名店への出店を重ねました。
現在は、会社として活動されていますね。
はい。安定した品質のサービスを永続的に行うために2016年に「株式会社kyi(キィ)」として法人化しました。わたしが取締役で、京子が代表取締役。
法人化した日は4月4日なんですけど、わたしたちの誕生日でもあるんです。
『トリコラキィ』での3人の制作分担を教えてください。
わたしがイラストを描いて…
わたしが刺繍担当で…
わたしは縫製などをしています。
みなさん、もともとハンドメイドが好きだったんですか?
そうですね。母がずっと手芸や絵画や書道をしていたので、その影響が大きいかもしれません。
経営まわりは、どんなふうに分担をされていますか?
ネットショップの運営や写真撮影は、わたしが。
わたしはお金まわりの管理を。
SNSの更新はわたしが担当しています。
SNSというと、Instagramの写真投稿とかですか?
そうですそうです。わたしたちの場合、Instagramを始めるのは遅いほうだったんですけど、あのときは佳子とケンカしちゃって……。
ケンカですか?
「そろそろわたしたちもInstagramを始めようか」と話をしたあと、育子が変な写真を勝手に投稿したんですよ。それでちょっと怒ったら「もうやらない!」って言い始めて。
いやいやいや。SNSでファンを増やすには、まず数を投稿しなくちゃいけないと思ったんです。もちろんクオリティも大事なんですけど、わたしたちが活動していることをアピールしないと認知は上がらないし……。
いや〜、わたしとしては、他のハンドメイド作家さんたちとの差をだすことが一番大事と思っていて、プロとしてやっているのだから写真1つでも手を抜きたくないんですよ。だから変な写真をあげたくなかったのに……。
そもそも、変な写真はあげてないでしょ?(笑)
いや、せっかくキレイに撮影した写真を、Instagramのフィルタか何かで、適当に加工してたじゃない〜!(怒)
今みたいに2人がケンカになったときは京子さんが止めるんですか?
いえ、だれも仲裁には入りません。(笑)
(笑)ケンカは多いですか?
多いです! 最近はだいぶ減りましたけど。
そういえば、1回だけ「もうやめよう!」ってなったことがあったよね。
そうそう。仕事場でタッパーを片づけないで帰っちゃったり「なんでわたしばかり片付けを…」みたいな小さなストレスの積み重ねでね。(笑)
姉妹で長くビジネスを続けるコツはありますか?
姉妹だからゆるい働き方もできるじゃないですか。なのでルーズにならないよう、あえて勤務時間を決めたり、最低限の時間管理をしています。
あとは話し合いをたくさんするかもしれません。忙しいときほど話し合う時間が長くなったりするんですけど、そこで商品の企画が生まれることもあるね。ケンカになることもあるけど。(笑)
なるほど。時間管理とコミュニケーションを大切にする。あたりまえだけど、姉妹だから甘えがちなところをきっちりルール化しているんですね。
モールとネットショップの使い分け
3人はどんな商品をつくっているんですか。
自分の持っている雑貨を見て「え!なにそれかわいい!」と声をかけられると、すごくうれしいじゃないですか。そういうふうに言われるようなもの…持っていてちょっぴり誇らしくなるようなものを目指して、雑貨をつくっています。
オーナメントのようなインテリア雑貨にはじまって、ファッション、キッズ、キッチン雑貨なんかをつくっていますね。
2014年5月には「minne」に出店していますが。
そうそう。出店してわりと早くにiPhoneケースを取り上げてもらって、そこから商品が売れるようになったんです。
そのあと2016年にネットショップも立ち上げてね。
なぜ「minne」で売れているのに「カラーミー」でネットショップを始めたんですか?
ハンドメイドの世界って、ビジネスじゃなくて、いろんな想いで販売されている方がいるじゃないですか。それこそたくさん時間をかけてつくったものを「500円でいいから売れたらうれしい」って人もいる。
商品販売よりも作品展示に目的がある人たちと価格競争するのは、生計を立てていく道を選んだわたしたちには厳しいものがあったんです。だから、自分たちのビジネスとして、ハンドメイド雑貨の販売を成り立たせるための場所をつくるために、ネットショップを始めました。
実際、ネットショップに来てくれる人は、イベントでわたしたちのことを知ってくれた人もいて、「minne」で購入してくれるハンドメイド好きの属性とはちょっと違う人もいます。
そうそう。お客さんも、モールにたくさん商品が並んでいると、どうしても「安いのがあたりまえ」という感覚で、ものを選んでしまうと思うんです。ですから、そういった価格の先入観を持っていない人へアプローチするためにも、ネットショップの必要を感じたんです。
今は、最初に「minne」に商品を出して、反応を見ています。ハンドメイド雑貨を探している人が多く集まっているので、そこでの売れ行きや感想をふまえて、イベントやネットショップに並べる商品を考えたり、新しい商品企画に反映させる。
ブランドの世界観みたいなものは、ネットショップで構築して、そこでファンを増やしていく。そういう役割分担をしていますね。
時間をかけず手をぬかない、こだわりのギフト
『トリコラキィ』で今一番売れてる商品は、どれですか?
アルファベットのシリーズかな。
そうですね。最初は、イベントに出たとき、お客さんが手に取りやすいものが必要だなと思ってつくったんです。少しつくるのに手間がかかるんですけど、アルファベットみたいなモチーフって、身近で手に取りやすいじゃないですか。
これがすごく売れたので、試しにポーチをつくったら、また売れて。そこからお客さんから「アルファベットのポスターがほしい」と声をもらったりしたので意見をとりいれながら、さまざまな商品へ展開していった感じですね。
最近、反響の大きかった商品は?
このサシェは、ロングセラーだよね。やっぱり猫は人気。あとは傾向として、機能よりもビジュアルで直感的に「かわいい!」と思うものが売れている感じがします。
そうそう。みなさん、見た目のかわいさからギフトに選んでくださるみたいで、ほとんどのお客さんが購入時にラッピングを選択するんです。
ギフトの需要が高いんですね。ラッピングで何か工夫されていることはありますか?
気をつけているのは「このお店で買ったら、絶対このラッピングでくるからまちがいない」と思わせること。いかに安定して期待通りのラッピングをお届けできるかを考えています。実際、わたしたちのお店はギフトで利用いただいて満足されて、リピートされる方がもとても多いです。
とはいえ、1点1点ラッピングするのは時間もかかるので、こういう紙の簡易版の包装も用意しはじめました。パチンと止めたらリボンをかけるだけ。大中小とサイズ展開もつくって。時間をかけない、だけど手をぬかない工夫をしています。
「売れる」というやりがい
ものづくりと販促活動、両方を担うのって大変ですよね。
そうですね。生活するには、つくりたいものと必要とされるもの、両方をつくらなくちゃいけない。わたしたちのモチベーションと世間の需要のバランスをとるのは、むずかしいです。
でもやっぱり、商売って楽しいんですよね。
たしかにつくることも楽しいんだけど、つくったものがあたったときの「やっぱりこれ売れたか〜」っていう手応えは、すごくうれしい。売れるってことは、センスに共感してくれた結果。選ばれた実感がわきます。
今後やってみたいことはありますか?
『トリコラキィ』としては、アクセサリーを充実させていきたいです。
なぜアクセサリーを。
アクセサリーはやっぱり需要が高いんですよね。しかも、目にとまりやすい頭の上のほうに身につけるものから売れていくらしいんですよ。ヘアアクセサリー、イヤリング、ネックレス、リング…みたいに。おもしろいですよね。なので、上からちょっとずつつくってみたいです。(笑)
なるほど。おふたりはどうですか?
わたしは、商売とはちょっと違うんですけど、もうちょっと作家的な活動に挑戦したいです。最近は、仕事でしか手芸をしていないので、大作をつくって展示してみたいなと思います。
わたしもずっと商品を縫っているから、同じかな〜。
1人ではしたことあったけど…確かに。いつか3人で展示会してみたいね!
ネットショップの今後の展開はもちろん、作家としての3人の活動が楽しみです。今日は、ありがとうございました!