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同じアンテナの持ち主を集めれば、価格競争にも負けない。インテリアトイの店「INSTINCTOY」の話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
飾って眺めて、大人も楽しめるインテリアトイの専門店「INSTINCTOY」。大学浪人時代に始めたネットショップでは、オリジナルフィギュアのほかメーカー生産品の販売も行っています。今回は店長の大久保博人さんに、日頃のショップ運営で意識していることなどを伺います。

本当に好きなものと向き合っているからこそ、運営を楽しく続けられる

本題に入る前に…「インテリアトイ」ってどんなものですか?

インテリアトイは、お部屋に飾ったり眺めたりして大人も楽しめるフィギュアのことを指します。フィギュアといっても、僕のお店に並んでいるのは美少女キャラクターではなく、3頭身で少しユニークなフォルムや質感だったりと、奥深いストーリーの詰まったものなんです。

大久保さんは、どんな経緯でインテリアトイのお店を始めたのでしょうか。

初めてインテリアトイの世界を知ったのは、受験で上京した19歳のときでした。おしゃれなセレクトショップにカッコいいフィギュアがずらっと並んでいたんですね。それまでフィギュアに対して抱いていたピカチュウやドラえもんなどのイメージとはまったく違っていて、かなり衝撃を受けました。
そのころの僕は芸術大学を目指していたこともあって「自分でおもちゃを作って世に送り出したらおもしろいんじゃないか?」と思い立ち、すぐにお店を始めることを決意しました。まだ浪人なので資金もなく、もちろん店舗は持てません。2006年にネットショップからスタートしました。

すごい行動力! お店ではどんな商品を扱っていますか?

オリジナル商品のほかに、メーカーさんが生産した商品も扱っています。
実は商品の仕入れって誰でもできるんですよね。おもちゃは取扱いに免許もいらないですから。

オリジナル商品はどんな点にこだわりを?

テクスチャーや汚れをつけたりと、徹底的に細かい部分を追求しています。造形については、街を歩いていて出くわす建築とかディスプレイの中で「この形かっこいい!」というインスピレーションを受けることもありますね。
映像の感動をどうフィギュアで表現したらいいのか? みたいなことも考えます。


 

独自ショップで、おもちゃ市場の価格競争から脱出

インテリアトイを売るのに、カラーミーショップを選んだのはなぜでしょうか。

おもちゃ市場は、価格競争になりがちな側面があります。その点カラーミーショップでは、個性的なデザインや機能を持った独自のショップを作れるので、ライバルとの差別化ができます。集客さえしっかりすれば、大手モールに頼る必要はないと思いました。
あとは他のカートASPサービスと比較した中でも、カラーミーが一番使いやすかったんです。毎日触るからこそ、一番使いやすいものを選びました。

ありがとうございます! 実際の運用面ですが、スムーズにできていますか?

すごく使いやすい。受注の見逃しもないです。
受注がいま何件あって、誰に受注メールを送ったか、入金チェックは終わっているか…一つ一つのステータスをきちんと把握できます。カラーミーに入った注文は佐川急便と連携しているので、納品書もボタン一つでちゃんとしたものが出てきます。総合的に見て、カラーミーのシステムのおかげでどれほどの人件費を削減できているか…計り知れません(笑)。

お役に立ててよかったです。現在大久保さんはレギュラープランを利用されていますが、いかがですか。

レギュラープランで年間数万円ほどお支払いしていますが、経費かかっているな~とか感じたことがないくらいの感覚です。たとえばモール系のショップ作成サービスでは細かい点を気にせざるを得ないというか、食べていけるか不安になるくらいの手数料がかかったりするんです。それに加えて、半年に1回のセミナーとか更新料も…。 以前はほとんどのモールに出店していたのですが、今は全部切ってカラーミーだけです。そのほうが気持ちも楽ですし、コストもかかりません。システムが一つだと注力する場所が一つだけになるので、やっぱり効率的ですね。
 

商品自体の価値以上に、価値のあるショップになる

ネットショップのデザインや見せ方の工夫について、詳しく教えてください。

ウェブデザイナーである弟に、デザインは作ってもらっていました。
見せ方の工夫ですが、1ページ見ただけで「こういうお店なんだ!」って分かってもらうことを大事にしています。多分ほとんどのお客さんは、1~2ページ見たら離脱しちゃうと思うんです。ですから、いかに着いた場所でショップに興味を持っていただくかが勝負だと思っていて。たとえば、ページの中でおすすめしたいことが10個あっても全部いっぺんにおすすめしたら1つも見てもらえない事態になりうる。確実に興味を持ってもらうために、伝えるメッセージを欲張らないように心がけています。

なるほど…!お客さんを集めるために、具体的に何から始めましたか?

そうですね、まずは信頼を獲得しなくちゃ始らないので「スピーディかつ丁寧な対応」に注力しました。入金があったら即出荷するとか、きれいに梱包するとか。こういった対応が後々の満足度やリピートにつながっていったと思います。

何か販促や広告はされたんですか?

うーん。それよりもブログやSNSに注力しましたね。おもちゃのコレクターさんは「きっかけ」を提供することで集まってくるのではなく、能動的に来訪してくれる特性があります。ということは情報屋になれば勝てるんじゃないかと思いまして、自分のところとは関係ないフィギュアの発売情報だったり、業界にいるからこそ知り得る情報を発信するようになりました。
あそこのブログを見ていれば有力な情報が得られるぞ」と思わせることで、商品自体の価値以上に、価値のあるショップになる。そうするうちに自然と集客が上手くいくようになりました。

ショップの価値を、情報を使って上手く高めているのですね。

はい。もう一つ、ショップの価値を高める手段として、どんなに人気がある商品でも僕が興味のないものは取り扱わないというポリシーがあります。僕の気になる情報だけをピンポイントでお知らせすることによって、僕の「好き」と同じ感覚を持ったお客様しか集まらないようにしているんです。

そうすることで、どんなメリットが?

同じようなジャンルで同じような毛色のものを取り扱っているので、検索などで興味を持ってやってきたお客様の離脱を防げます。
世界中のデザイナーズトイの、それこそ一流のアーティストから無名のアーティストまで、僕とお客様の感性がマッチしていれば購入してくれる可能性も当然それだけ高くなります。そしてその中にオリジナルの商品を投入しても、お客さんは違和感なく一緒に見てくれるんです。

なるほど! 情報をただ発信するだけでなく、オリジナル商品と出会うきっかけにもなっている。

そうです。あとは、自分が好きな商品じゃないとそもそも紹介しつづけるのはむずかしいですよね。
ずっと気持ちよく運営できているのは「自分が何を好きで、その商売をしているのか」っていうことが根底にきちんと流れているからだと思います。
 

ネットショップは、才能と世界をつないでくれる窓口

ネットショップをやっていてよかった!と思うことはありますか。

最初はフィギュアで生計を立てていけるのか正直不安でした。
でも、あるとき海外のお客様が「LIQUID(リキッド)シリーズが大好きで、木に飾り付けて “リキッドツリー” にしています」って僕に写真を送ってくれて。そこにはメッセージが添えられてたんです。「毎朝リキッドツリーを見て元気を貰ってから仕事に行っています。あなたみたいなアーティストがいるから、僕は元気をもらって今日も楽しく生活しています」って。僕のやっていることが誰かのエネルギーになっているんだ…と実感できて、とても感動しました! 自分の作品が誰かの心の支えになっているのであれば、それはもうとても幸せなことです。

作り手として、最高にうれしいメッセージですね。

そうですね。メッセージだけでなく、カラーミーの管理画面上でリピーターさんが分かるのも非常に嬉しいです。うちのネットショップは80%がリピーターといっても過言ではなくて、カラーミーは管理画面でリピーターにマークがつくので、一目でリピーターだと分かる。しかも何年も前の履歴も残るから、過去にその方が何を買ったかまで全て分かるんです。「よく見る名前だな」と思ってその人の購入履歴を調べると長年オリジナル商品を購入してくれていたりして「この人、ずっと自分のこと応援してくれているんだ」と。お客様と僕をつないでくれる、すばらしいシステムだなと思います。

大久保さんにとってネットショップはどんな存在ですか?

気づいていないだけで、誰でも何かしらの才能を持っていると思います。その才能と世界をつないでくれる窓口こそネットショップじゃないでしょうか。いろんな経緯があって、僕はいま滋賀県長浜市でお店をやっています。ですが実店舗だけをやっていたら、僕や商品を認めてくれる人って本当に数人しかいなかったと思います。

では、クリエイターとしての成功に憧れている方にアドバイスするとしたら?

21歳の僕は「自社ビルを持って社員を何百人抱えることが人生の成功だ」って、勘違いというか…そういう一辺倒な考え方を持っていました。きっとそういうふうに考えてる若い人も多いんじゃないでしょうか。人を雇うのって相当リスクが大きい。それを分かっていなかったんです。一番多いときで6人のスタッフを抱えていましたが、社長としてスタッフをどんどん引っ張るというよりは純粋にものづくりをすることに専念したいと、後々になって気づきました。そういう夢を支える手段として、ネットショップはとても心強い味方です。

そういえば、これは弟がポロッと言ったことなんですが「大人の趣味を突き詰めればなんでもかんでも商売になる」と。なるほどな、と思いました。みんながやっていることでNo.1を目指すのではなく、自分の好きなことを突き詰めればいいんです。あなたの好きな分野で、ぶっちぎりのNo.1を目指せばいい。その想いを前に出せば、カラーミーのように個性を出すことのできるツールはきっとすばらしい世界の窓口になってくれると思います。

今日は素敵なお話をありがとうございました!

※ このインタビューは、2014年にカラーミーショップで公開したインタビューを再編集したものです。