参加型企画「みんなのどうぐ」って?
「みんなのどうぐ」ですが、これまでに4回やっています。
これは包丁を作ったときのレポートです。
「三徳包丁はみんな持っているから、2本目の包丁を考えよう!」というテーマで10人くらい集まったのですが、こういう企画でありがちなのが、アイデアだけWEBで募集するみたいなやつです。
そういう企画じゃないんですか?
それだと単純なアイデア商品になっちゃうので「みんなのどうぐ」では、1回目からみっちり素材や技術について学んでもらいます。
ほう…!
包丁の場合は、みんなで工房見学に行きました。素材の特性だったり、どういった形なら製作できるのか、そういった製品企画のための基礎を固めます。
徹底していますね。
そのあとは話し合いでかたちを決めていきます。ふだん使っている包丁のイメージを共有して課題解決するために、みんなが使ってる包丁をもってきて話し合って、それでポイントをしぼっていくんですね。
こうなるともう参加する「使う人」たちは「お客さん」じゃないですね。
そうです、作り手のひとりなんですよ。かたちを考えたら職人さんに製作していただき、完成披露会では、実際に完成品を使って料理して、みんなで食卓を囲みます。
ひとつのものが生まれるまでに、かなり時間がかかりますね。
半年くらいかかるので、ビジネス的にはNGかもしれません。(笑)
それでも、続けているのは?
売り手や作り手が考えるのとはまた違い、使い手が自分ごとで考えて作ったものって、すごく可能性があるなって僕は感じています。
どんな可能性でしょう?
純粋に、使い手目線のものづくりが出来るということです。あとは、この活動を体験することでお客さんの見えている世界が変わっていく手応えを感じられるんです。お店で製品を見たときも、形やつくりが気になるようになって、ものの見方が変わったと言ってくださいます。
作り手のこだわりと使い手の価値観
「ものの見方」について聞いてもいいですか?
はい。今は、数えきれないほどのものが溢れていますが、一見似てるように見えても、価格には理由があり、ものづくりの中身も異なります。素材やものづくりを知っていただくことで、価格だけではなく、もう少しだけ、ものを奥のほうまで覗いて選べる方が増えたらと思います。
どんなもののことを指していますか?
たとえば、これは1枚の木から職人さんが削った器なんですけど、いろんなお店に行くと、同じように見える木の皿でも、価格帯はさまざまです。形はちょっと違うけど、いったい何がそんなに違うの?って思うでしょう。
うーん、たしかに何が違うかこうやってものだけ見ても説明できないです。
そうですよね、シンプルなお皿ですし、形以外あまりポイントが分からないと思います。ただ、このお皿を作るには、木の選び方、材料の取り方、刃で削る工程など、一つ一つの作業工程の積み重ねでできています。こうした流れを知ることで、細かく見るポイントが見えてきます。木目の模様だったり、刃で削った跡や、縁の仕上げなど。最終的に選ぶときは価格とのバランスや好みですが、このように見比べてみると、似たように見える木の皿でも、それぞれの違いがおもしろいんです。
違いが分かったうえでベストのものを選んでもらえるように
使い手にも、よいものを見極められる努力が必要に思えてきました。
「昔に比べて使い手の目利き力がなくなった」と言われることも多いですが、使う人たちは何も悪くなくて、作り手と売り手がきちんと違いを伝えてこなかった結果だと思うんです。
木の器にしても、その作りや価格の違いを知ったうえで、自分に合ったものを選んでいただけるようになればすてきだなと思います。
お客さんが知るきっかけがなかった、と。
そうです。そのきっかけさえあれば、その先は、ご自身の好みで選んでいただけますし、そうすればもっと楽しんで使っていただけるんじゃないかと思います。
中地さんが、使い手に理解してもらうためにされている努力はありますか?
イベントやWEBで商品説明をしっかりするのはもちろん、素材の説明ページも設けてます。あとは実際に触れてもらう機会をふやすために、レンタルリースを計画中です。
個人の方もそうですし、飲食店やケータリングで実際に料理をたのしんでもらったり、自分たちの日常にいかにフィットするかをまずは気軽に体感できるようにしようかと。
一度手にしたら、価値観も変わりそうです。
まさに百聞は一見にしかずで、説明じゃ伝わらない良さを感じてもらえると思います!
作り手と使い手をもっともっと、ごちゃまぜに
「Pint!」の今後の目標はありますか?
作り手と使い手をごちゃまぜにして、「使うこと」に向かったものづくりをしていきたいです。
ではどんな人に「Pint!」のプロダクトを使ってもらいたいですか?
どっぷりこういうものが好きな人以外にも、使っていただきたいです。
知って使ってみて「あ、木の器ってこんなに使い心地よかったんだ!」という人を増やしたいですね。
最後に…いまのお仕事、中地さんは楽しいですか。
楽しくて、ヤバイです! もっともっと活動を広げていきたいですよ。
今日は貴重な話をありがとうございました!
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