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高すぎたら仕入れない。説明できない野菜は置かない。ふつうの八百屋とちょっと違う「旬八青果店」の話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
都内に10店舗を展開する八百屋「旬八青果店」。気になるお店のコンセプトや店頭に並んでいる野菜の選び方、小売だけにとどまらない活動領域について迫ります。

かっこいいロゴが目を引くお店

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ロゴ、とってもかっこいいですね!

ありがとうございます。お店のコンセプトやデザインは、デザイナー、コピーライターと3人で企画しました。

旬八青果店(五反田店)にやってきました。

旬八青果店(五反田店)にやってきました。

お店の佇まいですが、おしゃれすぎず誰でも入りやすい雰囲気があります。

旬八青果店のデザインは海外のオーガニック系食品スーパーマーケットに影響を受けました。

海外のスーパーですか。

アメリカのホールフーズという大手チェーンを日本でしっくりくるデザインに展開したらどんなふうになるか?というところからスタートしました。

なるほど。海外で浸透しているスーパーのデザインを、日本の八百屋に展開してみたんですね。

はい。それで行き着いたのが「崩れるのありきのデザイン」なんです。

お話を伺ったのは、運営会社・株式会社アグリゲート代表取締役の左今克憲さん。

お話を伺ったのは、運営会社・株式会社アグリゲート代表取締役の左今克憲さん。

「崩れるのありき」?

スーパーの店内って開店したばかりのときは、すごくキレイですよね。でも、だんだんとディスプレイが崩れていくんです。

あーたしかに。近所のスーパーも、壁にガムテープとかチラシがいっぱい貼り付けてあります。

まさにそれです。そういった「崩れ」ってお店に立つ人はデザイナーじゃないし、日々の忙しさの中では仕方ないことじゃないですか。

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たしかに。旬八青果店は壁や棚にはPOPがたくさん貼り付けてありますけど、あまり汚い印象がないですね。

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このPOPにも工夫があって、話しかけてほしくないお客さんもいるのでそういう方のために、生産者さんの情報など説明書きを多めに添えてあります。

なるほど。

ヴィレッジヴァンガードみたい。

ヴィレッジヴァンガードみたい。

こういったPOPやチラシが自由に貼られても大丈夫なように天井や壁をあえてむき出しにして、「崩れ」が店の個性になるようにしています。そのかわり、のれんやポスターをポンッと置いてもらって、そこでかっこよくまとめてもらう。

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親しみやすさの中にどこか洗練された印象を受けるのは、最初から意図してそういったデザインをされているからなんですね。

なるほど。

なるほど。

 

バイクで日本1周。「地方がやばいことになってるぞ」

左今さんが旬八青果店をはじめたきっかけは何ですか。

さかのぼると大学時代になります。
当時2カ月くらいかけてバイクで全国を旅していたんですね。

バイクの旅!

はじめは、風景写真なんかを撮ってたんです。

ほうほう。

でもまわっているうちに、どこへ行っても若い人を全く見ないので「このままだと地方はまずいんじゃないか?」って単純に思えてきたんですね。

旅する中で地方に対して危機感を抱いたんですか。

そうです。

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その後、どうして農業でビジネスを?

地方の課題を探っていくうちに「農業」に行き着いたんです。
地方が外に売っていけるものを調べていくと結局工業製品か農産物・農産加工品なんですね。

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地域活性化をするための一手として「農業」を選んだんですね。

 

農業に人が集まるようにするには?

地方の農業が抱えている課題はいろいろあると思いますが、左今さんはどう考えたのですか?

とにかく人手不足です。
圧倒的に足りていません。
地方で農業をしたい人が少ないのは、なぜだと思いますか?

うーん…。

たぶん一番の理由が賃金です。
働こうと思って仕事を探すと、給料がだいたい12万円とか。それじゃ行く気が起きないですよね。

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たしかに。

この状況を変えるためには農家がきちんと儲かる体制自体を作っていかなきゃいけないと考えたんです。

 

就職先に選んだのは意外な業界

それで農家がきちんと儲かる体制を作るために、何からはじめたんですか。

まずは人材業界で営業として人気職種が成り立つしくみや様々な仕事環境について勉強しました。

その後は?

2年ほど勤めた後、退職して2009年に「株式会社アグリゲート」をたちあげました。

会社をたちあげて、最初はどんなことをしましたか?

営業に関してはある程度自信があったので「都心であなたの代わりに野菜を売りますよ」というかたちで地方の農家さんの営業代行をはじめました。

営業代行からスタートして、少しずつ事業領域を広げていったんですね。

はい。百貨店などの催事や青果売り場コーナーの請負などを経て、2013年に自社ブランド「旬八青果店」として八百屋をオープンするにいたりました。

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高すぎたら買わない

左今さんの名刺には「バイヤー」とも書かれていますが、今も市場に足を運ばれるんですか?

もちろん。創業時から今までずっと通っています。

もともとバイヤーの経験は全くなかったと思うのですが、どうやってノウハウを身につけていったんですか?

僕は完全な生活者目線で経験値を増やしていきました。

生活者目線?

たとえば、売り手に「これがおいしい!」とか「こだわってるよ!」とどんなに言われたとしても、高すぎたら買いませんよね。

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買い物するときは、やっぱり値段を気にしちゃいますね。

ですよね。
僕は同じ一人の生活者として買い付けにいって「このこだわりなら、この金額をだすかもしれない」っていう加減を見極めることに徹底しています。

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たとえば、ふつうのスーパーには「有機栽培」を売りにしている野菜が多く並んでいますが、旬八青果店は、そこにこだわらないです。

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それはなぜですか…?

有機栽培=高い=おいしい…そんなことないぞ!」っていうケースをいくつも見てきたので、それだけでは良し悪しを判断できないと考えています。

 

説明できない野菜は置かない

では旬八青果店に並ぶ野菜や果物の基準は?

まずは農家さん自身が、これはこんなふうに作っていますとしっかり説明できるかどうかを見ています。
僕たちが農家さんに代わってそれを伝えていくことが、大切になってくるので産地にも足を運びます。

その野菜の背景をしっかり伝えられるかをどうか、が基準なんですね。

そうです。

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最近、左今さんが産地に行って体験したことで、印象深いエピソードなどありますか。

北海道のJAびえいさんでしょうか。
象徴的だなと思ったのが、市場流通で出しているアスパラガスの品種と僕たちに売っている品種が違うんですよ。

なぜわざわざ違う品種を?

市場では曲がっているアスパラガスは売れないので、曲がらない固いやつを作っているんです。

ほうほう。

でも僕らだったら、理由をきちんと説明しながら売れるので、市場に出回らない風で曲がるくらいやわらかいアスパラガスを売ってくれるんですね。
で、彼らにどっちがおすすめですか?って聞くと「曲がってるほうがおいしいから、僕らはこれしか食べない」っていうんです。

だけどそれは市場に出回らないから、わたしたちはなかなか食べられないんですよね?

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そうです、市場に入れると「なんだこれは!」ってなっちゃうんですよ。

そんな規格外のものを、どうして旬八さんは手に入れられるようになったんですか?

農家さんを回って、もし市場流通してないもしくはできないものを見つけたときに「こっちもおいしいですよね!買わせてもらえませんか?」と確認して交渉していくんです。その積み重ねですね。
たとえばトマトも「摘果」といって、小さい果実は最初に摘んでしまうんです。大きい農家さんだとそれが何十kg単位であるんですよ。

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小さい果実も、味は変わらないんですよね。

そうなんです。おいしい農家さんが作ってるんだから、そりゃおいしいんですよ。もったいないですよね。ピクルスにできないかな、と考えているところです。

じゃあ旬八青果店にいくと、ふつうのスーパーじゃ手に入らない野菜に出会える可能性が高いってことですね。

そうですね。産地直送が4割、市場からが5割、自社農場からが1割といった割合で基準を満たした野菜をそろえています。

 

作る人と売る人が一緒に計画

自社農場もあるんですね!

茨城県のつくばみらい市にあるんです。このにんにくも、うちの農場で作ったものです。

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にんにくのほかにも、何か作っていますか?

今だと、じゃがいもですね。
「メークイン」や「インカのめざめ」など4種類作っています。

1種類の野菜を作っているわけじゃないんですね。

そうです。農家出身のスタッフもいるので、売り上げや市場の相場から「これを作ってほしい」と話をしつつ、彼らと一緒に作付け計画を立てています。

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なるほど!作る人と売る人が一緒になって計画を立てられるのはいいですね。

今の時期は自社農場の商品は少なめなんですけど、夏はどんどんでてくるので、楽しみにしていてください。

 

スタッフは女性9割!

八百屋と聞くと「おじさん」のイメージがありますが、旬八青果店は女性スタッフさんが多いんですね。

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男女比は、今9割くらい女性なんです。

9割女子!多いですねー。

それはちょっと誤算だったというか、そこまで増えると思わなかったんです。(笑)

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女性スタッフさんはお買い物する側としても相談しやすくてうれしいです。ちなみにお店は何店舗あるんですか?

三田、大崎、赤坂など都内に10店舗あります。

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都心中心に展開されてるんですね。

東京にいながら産地で購入するのと同じ体験を届けたいので。

 

八百屋ならではの旬の楽しみ方

八百屋ならではの買い物の楽しみというか、何かありますか。

たとえば同じJAさんでも味が違うんですよ。
同じ県のJAさんでもJAさんごとに味が違ったりするんですね。

その情報を知っておくと次に買い物するときに役立ちそうです。

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そうですね。生産者さんの情報のほかは、季節と産地の関係でしょうか。

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季節の野菜は、ふつうのスーパーにも並びますよね?

ですね。うちでは、それを産地とあわせて見てもらいたいです。

といいますと…?

夏野菜というと東京近郊ではオクラとかじゃがいもが育つので、そのイメージにしばられがちですよね。

たしかに。

だけど同じ時期、北海道のアスパラですごく甘いのがでてくるんですね。それを僕たちは置いたりします。

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地域で旬の野菜に時差があるんだ…!

そうなんですよ!
たとえばおいしいスイカというと熊本のイメージなんですが、季節を追うごとにだんだんおいしい産地は北上していくんですよ。

なるほど。

旬の最高なものだけを並べていくと結果的にいろいろな産地の野菜が並ぶことになります。

全国から集まった旬の野菜に触れられるのは、八百屋さんならではの楽しみですね。

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旬八青果店のこれから

小売事業以外にも教育事業なんかも展開されていますね。

はい! 旬八青果店スタッフ向けの社内教育を一般公開した「旬八大学」を開校し教育事業にも力を入れています。

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旬八大学」の活動をとおして、確実にニーズがあるというのもわかったので今後さらに力を入れていきたいです。

バイヤー講座 淀橋市場見学の様子。

バイヤー講座 淀橋市場見学の様子。

あとは産地のブランディングを、もっと積極的にやっていこうと考えています。販売促進のフェアやイベントですね。

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たとえば八百屋が企画するバスツアーなんて、他にはないでしょう。

さっきポスターを見て行きたいな〜って言ってたところです。

お客さんとのコミュニケーションを大切に、背景を届ける八百屋だからこその取り組みだと思ってます。ただ商品を並べるだけじゃない、独自のやり方です。

生活者と農業のふれあいをさまざまな角度から提案されてるんですね。

そうですね。地方の産地とお客さんがもっと身近に、密接になったらいいな、と考えています。

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最後にメッセージをどうぞ!

旬八青果店は、新鮮・おいしい・適性価格が基本コンセプトなんですが、地方で直売所にいったらそれがあたりまえです。

最終的にこんなにたくさん...!

地方の直売所で感じるような「ほんものの野菜ってこんなにおいしいんだ!」という感動を都心で味わってもらって、農業への興味、産地への関心を高めてもらえるよう、これからも活動を広げていきたいです。

今日は貴重なお話をありがとうございました!