鹿児島県指宿を拠点とする老舗鰹節工場のグループ会社・株式会社オリッジ。主力商品「イブシギンのしぜんだし」は、食塩無添加で安心して食べられることから子育て世代の人気を集め、全国のベビー用品店やスーパーなどに広く展開しています。
今回は、同社のEC運営とSNS運用などを担当していた西元 隆行さんに、自社ECを始めた経緯や反響の大きかった施策などについて伺いました。
制作会社に委託せず、自社での制作・運営を決意
自社ECを始めたのはいつごろですか?
私が入社する2020年以前からネット通販は行っていましたが、当時は販売業務を他社に委託していたようです。
運営も自社で行うきっかけとなったのはInstagramでした。インスタのフォロワー数が徐々に増えてきたので売上への影響を知りたいと思い、社長に直談判して自社でネットショップを運営することになりました。
サイト制作なども自社で行ったのでしょうか?
とあるデザイン会社に相談して見積りをとってみたところ、サイト制作費用もランニングコストも想像以上に高かったんです。かなり売上を出さないと元が取れないので、依頼は断念してすべて自社で手がけることにしました。
もともと販売を委託していた他社のECサイトもカラーミーショップだったのですが、全体的に使いやすく、素人でもサイト制作から運用まで手軽に行えたので、選んでよかったと思っています。
自社でサイトデザインを制作する際、迷ったり悩んだりしたことはありましたか?
「イブシギンのしぜんだし」は子育て世代からご支持いただいている商品なので、当初はそこをターゲットにしたデザインにしましたが、大人向けの新商品「いぶしぎん燻製ナッツ」を発売してからは方向性に悩むようになりました。しぜんだしとはコンセプトもパッケージも真逆ですからね。
ベビー・キッズ向けのしぜんだしと、大人向けの燻製ナッツ。両者を掲載しても違和感が生じにくいデザインとは?といろいろ模索した末、最終的にはスライドショーなどを活用し、バナーを並列的に配置することで決着しました。
初めて自社でECサイトを運営するにあたり、どんなことに苦労しましたか?
作業自体の大変さよりも、やりたいことがたくさんあるのに手が回らない状況が続いたことが苦しかったです。集客のためにメルマガの配信回数を増やしたり、季節のキャンペーンを実施したりとさまざまな施策を試してみたかったのですが、工場での製造業務の合間に行うには時間が足りず、非常にもどかしく感じていました。
モールに出店せず、自社ECサイトのみにチャネルを絞ったのはなぜですか?
卸先の企業も多く出店していますし、わざわざ手間や手数料をかけてまで当社が出店する必要はないと判断したからです。高額な出店コストに見合った売上を出さなければならないのも、モール出店に踏み切れなかった理由ですね。
製造作業の合間にショップとSNSを更新
自社ECサイト運営のきっかけとなったSNSは、どのような体制で運用していますか?
以前はInstagram、Facebook、Xをすべて私1人で運用していました。
当初SNSアカウントは積極的に活用されていない状態で、せっかく自社商品に関する投稿があるのに何の反応もしないのはもったいないと感じました。「誰もやらないなら自分が」と立候補して運用担当になったんです。
会社からは自由に運用する許可が得られたので、初期のころは親しみやすさを重視して、商品情報だけでなく社内で起きたことなどもゆるく発信していました。しぜんだしを使った離乳食の投稿にいいねしたり、ハッシュタグ付きの投稿にコメントしたりといった地道な活動が功を奏したのか、徐々にフォロワー数が増え、投稿の輪も広がって毎日何十件もタグ付けされるようになりました。
ECサイトでの売上にも影響はありましたか?
売上への影響は少なからずあったと確信していますが、実は詳細なデータ分析まではなかなか手が回らず、数字としての成果を明確には掴めていないんです。これもジレンマに感じていたことのひとつですね。
とはいえ、カラーミーショップのスマホアプリに続々と受注通知が届くのはやっぱり嬉しかったですし、レビューや備考欄に書かれたコメントを読むのも楽しみでした。お客さまの声は社内でも共有していたので、多くのスタッフの励みになっていたと思います。
キャンペーン実施、送料無料ラインの引き下げで売上アップに成功
特に効果的だったのはどんな施策でしたか?
5,000円以上に設定していた送料無料ラインを「3,000円以上」に引き下げたところ、購入者数がかなり増えました。当店は商品単価が1個600円程度でアイテム数も少なかったので、利用しやすいラインに設定したのは正解だったと思います。また自社商品だけでなく、抱き合わせで買っていただけそうな仕入れ商品をいくつか投入したのも効果的でした。
会員登録やレビュー投稿を行った方を対象とした「ポイント施策」の効果はいかがですか?
ポイントを使うためにリピート購入してくださる方は多いですね。当店がプレゼントしている300ポイントは、ちょうど燻製ナッツ1個分くらいなので、商品のよさを新たに知っていただくきっかけにもなっています。
以前、会社の10周年記念企画で「購入者全員に全額ポイントバック」というキャンペーンを実施したこともありました。大々的な広告は打ちませんでしたが反響はかなり大きく、顧客数や売上アップにつなげることができました。
とても大胆なキャンペーンですね! 今後ECサイトをどのように展開していく予定ですか?
会社としては個人向けの販売(BtoC)に加え、小ロットで注文したい企業向け(BtoB)の卸販売にも注力していく方針です。
私自身は直近の人事異動でECの運営現場からは離れてしまいましたが、新商品であるパンケーキミックスの責任者としてブランドの成長に貢献し、いずれは商品開発・製造・マーケティング・販売まで一貫して手がけていきたいと考えています。
今後の展開がますます楽しみです。今日はありがとうございました!