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手放した服と、生まれ変わってまた出会える。「BRING™」の衣類回収・再生事業が目指す未来

「服から服をつくる™」をコンセプトに、不要な衣類をリサイクルし、新たな服へと再生させているBRING™。約160社と提携し、不要になった衣類の回収活動を行っています。今回は、同プロジェクトの立ち上げ時からディレクターを務める株式会社JEPLAN(旧社名:日本環境設計)の中村 崇之さんに、プロジェクトの設立秘話や参加方法などについてお話を伺いました。

「一度きり」ではなく「何度でも」再生できる技術から生まれた服

まずは、「BRING™」を運営するJEPLANさんの事業内容について教えてください。

僕たちの事業は、大きく2つに分かれています。一つは、回収した衣類を分別して素材に応じたリユース・リサイクルを実施する中で、ポリエステル繊維については工場で原料に再生し、そこから最終製品を作って販売する事業。もう一つは、いろんなブランドや企業さんと提携して、店頭などでいらなくなった衣類を回収する事業です。

このプロジェクトはどういったきっかけから始まったのでしょうか。

もともと僕はWebデザインの仕事をしていて、10年くらい前に誘われる形で入社したんです。
当時、うちの会長に「Tシャツを作りたいんだよね」と言われたので、まずはネットショップのWebデザインを作って方向性を決めて。ところで売るための在庫はどこにあるのか?って聞いたら「ない」と。古着を集めてそこから作る、しかもこれから集めるって言うんです(笑)。

びっくりですね(笑)工場はその当時からあったんですか?

影も形もありませんでした。「Tシャツを作りたい」と言われたのに、蓋を開けたら在庫も原料も工場もなかったっていう(笑)。今の僕だったら嘘だろ?って思いますけど、当時まだ若かったんで気付かなかったんでしょうね。

では、完全にゼロから服の回収を始めたんですね。

そうですね。最初は経済産業省の支援のもと、数社の企業がプロジェクトメンバーとなって、繊維製品リサイクルの実証実験の一環としてプロジェクトが立ち上がりました。

不要な衣類を集めて素材ごとに適正なリサイクルをすれば、原料に戻してまた服として再生できる。そういった調査研究をさせていただく中で弊社が事業化をして。Webデザインだけでなくブランディングも進めつつ、まずは安定的に服を回収するところまで漕ぎつけたのが最初の5~6年くらいでしたね。

一般的な衣類のリサイクル方法とはどういった違いがあるのでしょうか?

一般的なリサイクル方法は「マテリアルリサイクル」と呼ばれるものです。
ポリエステル素材の服は石油を原料としたポリエステル樹脂から作られますが、マテリアルリサイクルであれば石油のかわりにペットボトルなどが原料になります。ただしこの方法は原料を熱で溶かすだけなので、色を抜くことができません。一度リサイクルした衣類は、溶かしても元の色が残ってしまうので、繰り返しリサイクルすることが困難なんです。

なるほど。

それに対して我々は「ケミカルリサイクル」という違ったリサイクル技術を用いているのですが、これはポリエステルを分子レベルまで細かく分解したあと、不純物を取り除き、また素材に再生する方法です。
イメージとしては、ポリエステルは小さな分子が鎖状にたくさん繋がってできているので、化学的にその鎖をバラバラに切ってしまう。そうすれば鎖と一緒に閉じ込められていた染料の分子を取り除くことが可能になり、染料などの不純物を取り除くことでまっさらな状態の素材に再生できるんです。動画を見てもらったほうが早いかもしれませんね。

動画、見ました。とっても壮大な……!

動画に登場する工場が2018年から操業開始し、プロジェクト活動が本格化していったというのがこれまでの歩みです。

すべての素材を無駄なく、素材に応じたリユース・リサイクル

さまざまなお店での衣類回収を、花の蜜を集めるハチになぞらえているのが素敵ですね。

いらなくなった服をみんなで集めてきて、ハチミツのかわりに新しい資源を生み出していきましょう、と。「集める」の象徴として、製品や衣類の回収ボックスなどにハチのデザインを取り入れています。

回収ボックスにはどんな素材の服でも入れられるようになっていますが(注:回収拠点ごとに異なります)、工場でのリサイクルは現状ポリエステルのみですよね。綿など他の素材の衣類はどこへ行くのでしょうか。

綿には綿のリサイクル方法があって、たとえば自動車の内装材や、工業用のウエス(雑巾)に生まれ変わります。他にも、ウールなんかは反毛をすることで再び糸にすることができます。

なるほど、すべて無駄なくリサイクルしてるんですね。これから企業がプロジェクトに参加するにはどうすればよいでしょうか。

専用の回収ボックスを店舗に設置してもらって、満タンになったら回収に伺うという形が基本ですね。ご興味のある方はBRING™のホームページにあるお問い合わせフォームからご連絡いただければ順次対応します!

「DNAが見える服」を目指して

2021年11月には実店舗もオープンされましたね。

このお店、実は当社の取引先がもともとショールームとして使っていた場所なんです。手狭になって移転するタイミングで「じゃあください」とお願いして、居抜きで使わせてもらってます。実はお店自体もリサイクル(笑)。

以前から実店舗を出す計画はあったのですか。

そうですね。「どこで試着できますか?」といったお客さまからのお問い合わせを多くいただいていたのですが、卸先すべての在庫までは把握できないこともあり対応が難しくて。やっぱりその場で直接説明して試着できるようなスペースが欲しかったんですよね。
ただ、うちは小売業をやってこなかったのでタイミングが掴めずにいて……偶然のめぐり合わせで場所を譲っていただけたのは渡りに船でした。

実店舗オープンにはそんな幸運があったんですね! では最後に、「BRING™」の今後の目標を教えてください。

そうですね、たとえばここで回収した衣類が、後日「X月X日に回収したあなたの服が、このアイテムに生まれ変わりました」とお知らせできたらいいなと思ってて。商品のタグにQRコードがついていて、それを読み込めばいつどこで回収された服が原料なのかすぐわかるとか。

すごい! また自分の服と出会える可能性があるんですね。

それってなんか嬉しいですよね。
最近は「DNA」という概念について話すことが増えました。衣類リサイクルって基本的に1対1のものではないので、100人や200人、それ以上の服が原料になることも十分ありえます。もしそのうちの1人が憧れのタレントさんとかだったら。

その人の服が……!

原料となって自分の服に入ることがあるかもしれませんね(笑)。そんなふうに、今後はこの実店舗を拠点にやれることがたくさんあるなと考えているところです。衣類回収についても、今後ますます拡大していきたいですね。気になった方はぜひ私どもにお問い合わせください!

回収から製造販売まで、サプライチェーンをすべて自社で展開しているからこそ、夢が広がりますね。興味深いお話をありがとうございました!