五味醤油さんって、どんな会社?
五味醤油さんは、いつできた会社なんですか。
うちは明治元年から150年以上醸造業をやってます。
150年! ものすごく歴史がありますね。
今は兄とわたしが中心となって、家族や職人さん、パートさんたちの力を借りながらお味噌を製造したり販売したりいろいろなPR活動を展開しています。
洋子さんは、もともと家業を継ぐ予定だったんですか?
じつは最初、わたしは継ぐ気がなかったんです。新卒で入社した東京の会社では食品の企画をしていました。
ではいったいなぜ家業を…?
4年くらい働いたとき「新しいものをずっと生み出し続ける仕事よりも、みんなにずっと愛されるものを広める仕事をしていきたいな」とふと思ったんです。「家業がまさにそれだ!」と気づいたとき、兄から声をかけてもらったんです。
「たくさんものを作るお仕事」ではなく「愛されるものをたくさんの人に届けるお仕事」を選んだんですね。
甲州味噌って、どんなお味噌?
「五味醤油」さんは社名に「醤油」とありますが、現在はお味噌だけを製造販売しているんですよね…?
はい。もともと醤油も作っていたのですが30年前に製造をストップしました。お味噌は甲州味噌という山梨独自のものを作っているんですが醤油は地域性のあるものではなかったので、大量生産・大量消費がはじまったころに潔く味噌一本に絞ったんです。
そもそもお味噌って、どんなふうに作られるんですか?
煮た大豆に麹(こうじ)を合わせて半年から数年発酵させるのが、一番シンプルな作り方です。
甲州味噌は、どんなお味噌なんですか。
甲州味噌は、米麹と麦麹をだいたい半分ずつミックスした合わせ味噌です。さっぱりした味の中に麦の甘みもあって、ほうとうのような野菜と煮込む料理に合いますね。
手間ひまかけて育てる、麹の作り方
五味醤油さんでは麹も作っているんですよね。どうやって作っているんですか?
蒸したお米や麦に3日間かけてかびを生やしていくんです。
かびを生やすんですか!知らなかった。
そうなんです。製造工程ですが、まず大きな圧力鍋で米を蒸します。
炊くのではなく、蒸すんですね。
はい。炊くと水分が多すぎて雑菌が入ることがあるので、蒸してちょっと固めの状態にするんです。で、菌は高温だと死んでしまうので80度くらいあるものを人肌くらいの温度に冷まして、菌をつけます。
「麹室(こうじむろ)」という場所で高温多湿になるようにストーブであたためたり加湿器をつけて温度管理をしていきます。蒸しあがったお米がどんどんモコモコと菌糸をおびていくと…こんなかんじになるんです。
これができたての麹ですか? ポップコーンみたいですね。
そう。モコモコしてるのがかびです。このまま食べられます。ちょっと噛んでると、甘酒みたいな味がしてくるはず。できたてなのでしっとりしていますが、このあと乾燥させてカチカチにしていきます。
こっちが2日目の麹です。麹って菌糸を増やしていくとき自分で発酵熱を出すんです。
ちょっとおバカさんなので、自分の熱で死んでしまうときがあるんですね。なので熱が上がりすぎないように職人が広げていくというか。ほら…サマソニの警備員みたいな。
サマソニ…!
盛り上がって自爆しちゃう人がいるからどうどう〜っておさえるのが職人の仕事というか。(笑)
麹って、かわいいところがあるんですね!
そうそう(笑) 1日目は温度が上がりにくいのでせまい容れ物に入れて密着させて温度を上げやすくさせて、2日目は温度が上がりやすいので冷ましてあげて…。けっこう面倒みてあげなくちゃいけないんです。
子どもみたいですね。
そうなんですよ。昨日も夜となりで打ち合わせしてたんですけど兄が「ちょっと見てくる!」って言って…ほんと子どもみたいですよね。
とっても手間がかかるんですね。知らなかった!
お味噌の製造量は、限られている
できあがったお味噌は、この木桶で発酵させていきます。他の蔵からもらった木桶もあるので…100年以上の歴史がある木桶もあります。
これは大きい…!
そう! 2メートルくらいかな…。これにどれくらい入ると思いますか?
えーーっと…1トンくらいですかね。
4トン入ってます! 家族で毎日味噌汁を飲むおうちだったら1ヶ月で1kg使うので…4000ヶ月分くらいです。(笑)
ほうとう何杯分だろう、すごい量です。(笑) 年間にどれくらいお味噌を作るんですか。
年間で80トンです。全然見当つかないですよね(笑)
多いほうですか…?
少ないほうです! たぶん大手さんとかが数日で作れちゃう量。
こんなに大きな木桶でも、大手さんだとすぐに作れちゃうのかー…!
3人の職人さんが1回の仕込みで2トン作るのが限界。作る量を増やそうと思ったらこの木桶を増やさなくちゃならないんです。そうすると手が回らなくなってしまうから作る量ではなく、伝える方法で工夫をしていこうとしています。
次は直営店を案内しますね!
わー、ありがとうございます!
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