ECサイト開設・運営のヒントが見つかるWebメディア

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ハードルの高い商材だからこそ温かい対応を。革の専門店・カワムラレザーが徹底する「顧客目線」と独自の接客スタイル

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
100年以上の歴史をもつ皮革関連商社・川村通商が手がける革の専門店「KAWAMURA LEATHER」。上質なイタリアンレザーを数多く揃え、誰でも一枚から購入できるのが特長です。東京・蔵前に実店舗をオープン後、2019年からはECサイトを開設し、着実に売上成長を続ける同店。今回はディレクターの吉川 勝慈さんに、ECサイト運営や接客に対する想いを詳しく伺いました。

「個人では買いづらかった」上質な革を一枚から販売

所狭しと商品が陳列されている、東京・蔵前の実店舗にやってきました

まずは、toBで皮革関連製品を扱っていた商社さんが、toCの実店舗やECサイトを始めたきっかけについて教えてください。

当店の母体である川村通商は、皮革関係の裏方的存在として長年やってきましたが、皮革業界全体が徐々に衰退していく中で、世代交代の流れとともに「今までとは違うことをしていかねばならない」という危機感のもと、実店舗・ECを通じて小売に挑戦することになりました。

 
うちは商社としてイタリアの皮革メーカーとのネットワークを確立しています。世界的にもイタリアンレザーは高品質なことで知られていますし、日本でもニーズのある素材なので、これを一枚単位で販売するというスタイルのお店を立ち上げました。

従来、個人が一枚単位で革を購入するのは難しかったのでしょうか。

そうですね。量産がメインで成り立っている業界なので、問屋さんがある程度まとまった量を卸すのが一般的です。そのため個人の趣味であったり、作家としてレザークラフトをされる方が革を仕入れること自体、特に昔は非常に難しかったと聞いています。

うちの取引先でとある国産バッグブランドがありますが、そこの会長さんが若い頃にブランドを立ち上げた際も、革の仕入れにはとにかく苦労されたそうです。何の実績もないまま問屋さんに行ってもなかなか相手にしてもらえなかったと。僕たちKAWAMURA LEATHERは、その会長さんの話がヒントとなって生まれた店なんですよ。

なるほど。その方のご経験からヒントを得て、小規模な作家さんや個人の趣味であっても上質な革を手に入れられるお店を作ったということですね。

はい。もちろん個人でも安価で手に取れる革材料のお店は存在しますが、メーカーや問屋さんがいらなくなった革を安く集めてきたようなお店だと質のいい革との出会いは望めませんし、もし気に入った革があっても一枚きりなので、次回また同じものが手に入りづらいという欠点があって。

趣味で作っている方ならまだしも、革製品を作って商売されている方からすれば、気に入った革が安定して手に入らなければ売り物にはできないですよね。ですから僕たちは上質な革を定番商品として扱い、一枚からでも販売し、在庫が少なくなったらきちんと仕入れていくというスタイルなんです。

お店で扱っているのは主に植物タンニンなめしの革とのことですが、その特徴について教えてください。

動物の「皮」を「革」にする“なめし”の手法は、「植物タンニンなめし」と、化学薬品を使う「クロムなめし」の大きく2つに分かれます。クロムなめしのほうが効率よく作れて量産に向いているので、いま市場に出回っている革製品の9割以上はクロムなめしだと思います。

 
一方で僕らが主に扱う植物タンニンなめしの革は、昔ながらの製法なので手間暇がかかるうえ、仕上がる革の個体差やロットごとのブレも大きいです。ですが実際に見比べてみたとき、多くの方の感覚として「こっちのほうが革らしいな」と直感的に思えてロマンを感じられるのが、植物タンニンなめしの革ならではの特長です。

材料販売ならではの難しさとメリット

お店を立ち上げるにあたり、ECサイトを開設することにしたのはなぜでしょうか。

実店舗を作るなら、はじめからECサイトもオープンするつもりでした。

いわゆるホームセンターや手芸用品店に近い「レザークラフトの材料店」はECでも数多く存在しますが、昔ながらの革問屋さんでECに力を入れているところはほとんどなかったので、小売を始めることが決まったときから「小売=実店舗+EC」を前提に準備を進めていきました。

カラーミーショップを選んだ決め手は?

まずコスト面で圧倒的な魅力を感じましたね。
それでいて必要な機能が揃っていますし、操作性に優れたUIや、アプリ機能を柔軟に取り入れられるところも、拡張性の面で重要なポイントでした。あと、ちょっと地味な利点ですが、商品ページでオプションごとに異なる価格を設定できるのもいいんですよね。これが意外と他にないんですよ。そんなこんなでカラーミーショップを選びました。

ありがとうございます。最近「プレミアムプラン」に切り替えられましたが、そのきっかけは何でしたか。

カラーミーショップ大賞の授賞式後、スタッフさんに声をかけていただいて(笑)。

 
もともと利益率の低い商材なので、できるだけ決済手数料などのコストを抑えたいとは思っていたのですが、実際のメリットはそこだけじゃないなと。売上が伸びたことで徐々に余裕も出てきたので、そろそろ第三者から意見やアドバイスをいただきながら運営したかったというのが大きな理由です。

専属のECアドバイザーとの面談はいかがでしたか。

この間初めて面談をしたのですが、なんだか話がわかってもらえそうな気がしましたね。
僕らのような材料販売って、他の業界の方にはなかなか事情をわかってもらえないんですよ。いろいろな会社さんから提案はしていただくんですが、普通の商材とはちょっと違ってて。そういうところが噛み合うか噛み合わないかはけっこう重視していて、大抵は噛み合わないんですけど(苦笑)、カラーミーショップのECアドバイザーさんとは話が合いそうだなと思ったので、今後に期待ですね。

ありがとうございます。材料販売の特殊性について詳しく教えてください。

スーパーマーケットをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。たとえばその日の献立を決めてからスーパーに行くとしたら、買うものは大体決まってますよね。なのに今日いらないものを次々提案されても困ってしまうはず。その感覚は僕らの商売とも似ていて、ほとんどのお客さまは目的を持って実店舗やECサイトに来てくださるので、広告を打ったりあれこれ提案したりして他のものを買ってもらおうとする必要がないんです。

なるほど。アパレルやインテリア雑貨などのように、漠然と商品探しを楽しむタイプの商材とは性質がかなり異なりますね。

そうですね。利益率の低さと提案の仕掛けづらさが難しいところですが、そのかわり商品を気に入ってもらえればリピーターになっていただきやすいのが材料販売の大きなメリットです。趣味の方でも作家さんでも、消費していくうちに材料がなくなったらまた利用していただけますからね。まずはお客さまが欲しいと思うものをしっかり揃えて、ちゃんと棚に並べて待つのが僕らの商売の基本です。

独自の「オンライン接客」で信頼を獲得

ECサイトの立ち上げ後、集客活動はどのように行いましたか。

当初からインスタには注力していて、開店当時は店長が自らコツコツ投稿しながら、広告でフォロワーと認知を獲得していました。僕がジョインしてからは、広告で獲得するのではなく自然と興味をもってフォローしてくださった方を大切にする方針に切り替え、今も少しずつ着実にフォロワーを増やしています。

やはりニッチな世界ですし、競争相手はそれほど多くないので、ある意味「見つけてもらいやすい」環境ではありますね。僕らも革のことを日頃からなるべく丁寧に発信しているので、革を探している方が自然とたどり着けるようになっていると思います。

吉川さんのジョイン後に行った施策は他にもありますか。

A4サイズの小さなカット革を販売するようになったことと、全般的に商品のバリエーションを増やしたことですかね。商品の種類・色・数を増やしました。

 
以前は1商品あたり5色程度しか展開していなかったので、「これじゃ買ってもらえないよ」と。もちろん、商売としては在庫リスクにもなるのですが、それでも色数はちゃんと揃えておくべきだと見直しを図ったことで売上が伸びました。たとえ多くは売れなくても、10色とか15色とか並んでいるからこそ、その中から選んでもらいやすくなるので。

小さなサイズのカット革を販売した効果は、やはり購入ハードルが下がったことでしょうか?

もちろんそれもありますが、本音を言うとそれだけではないんです。
天然の革は個体差が大きく、一枚の中でも質感にはムラがあります。「100点満点中100点」のものは存在しませんし、場合によっては50~60点の革も扱わなければなりません。

せっかく購入してくれた方にそういう革をお渡しして“当たり外れ”を感じさせてしまうのは忍びないので、50~60点の革はA4やA3サイズに形を変えることで活かせるところを活かし、なるべく上質な部分だけをお渡しすることも目的の一つです。結果として「敷居が下がって買いやすくなった」と皆さんに喜んでいただけているのは嬉しいですし、ありがたいなと思います。

なるほど、品質をコントロールする意味でも重要な取り組みだったんですね。ECサイトでは他にも「オンライン接客」が印象的な取り組みですが、これを始めたきっかけについても教えてください。

やはりコロナ禍が大きなきっかけではありますが、質感も品質もさまざまな革を販売する中で、僕らはコロナ禍以前から日常的に電話やメールで顧客コミュニケーションは密に行っていました。

ECサイトの最大の魅力って“効率”ですよね。
極端な話、接客ゼロでも注文していただいた商品を発送するだけで完結できますが、僕らは天然の素材を扱っている以上、お客さまとのコミュニケーションを丁寧に行わなければ信頼を失ってしまいます。電話でのやりとりや画像送付など、従来から行っていた業務の延長線上として「だったらオンライン接客をしたほうがスムーズだよね」と。

もともと行っていた接客を、オンラインでさらに効率化したということですね。

その通りです。リアルタイムでお客さまに現物を見ていただき、画面越しにでも直接僕らと会話しながら購入を決められれば、到着後のトラブルも未然に防げます。もともとトラブルが起こらないように接客していましたが、このやり方が一番よさそうだという判断で始めた施策です。

“来てよかった”と思ってもらえる接客を極めたい

ファンを増やしたり、レビューを集めたりといった面で何か特別に行っている施策はありますか。

うーん、“当たり前のことを当たり前にやる”以外のことはしていないと思います。日頃スタッフたちとは「お客さまの立場で考えたらこうしたほうがよくない?」といった議論はしても、具体的にああしろこうしろとか僕からうるさく言ったりはしませんし。商品レビューの投稿が増えていて非常にありがたい反面、「もっと多く獲得するために〇〇をしよう」っていう動きは特にしてないですね。

「昔は個人で革を買いづらかった」って話を先ほどもしましたが、お客さまからしたら今でも飛び込むのに勇気がいる世界なんですよ。革の専門知識が求められそうだし、価格帯もよくわからないし、お店によっては冷たくあしらわれたりもしますし。だからこそ僕らは、その高いハードルを乗り越えて来てくださったお客さまに「来てよかった」と思ってもらえるようにしなきゃいけない。とにかくそれだけですね。

吉川さんも購入のハードルを感じることはありますか。

僕自身もけっこう敏感なほうです。プライベートで買い物するときもいちいちお問い合わせの電話とかしたくないし。どうすればハードルを下げられるんだろう?って考えることはけっこう多いかな。

スタッフの皆さんとよくインスタライブをされるのにも、そういった目的が?

そうですね。これもお客さまの立場で捉えたとき、どんな人たちが革を選んで送ってくれるのか見えたほうがいいっていうのが僕の考えなんですよ。
どんな人たちが中で働いているのか、自分が注文した革をどうやって送ってくれるのか、それを知ってもらうためにインスタライブをやってます。「中で働いているのはこんな人たちですよ~」って。もちろん画像でも出せますけど、やっぱり会話の雰囲気って大事じゃないですか。

確かに。

スタッフ同士の仲が良くて、ちゃんと連携がとれてそうで、仕事への姿勢もポジティブなことが伝わるほうが絶対に印象がいいですし、僕らとしては普段からそういう雰囲気が作れている自負もあったので、インスタライブで顔を出すのはむしろプラスの影響しかないと思ってます。

来店・購入のハードルを下げたい というお話がありましたが、その理想形はどのようなものでしょうか。

難しいところですが、むやみにハードルを下げすぎたくもないんですよ。「商材自体にはハードルを感じるが、スタッフの対応は親切」、このバランスが大事だと思っていて。やっぱり上質な革を求めてこられて、価格にも納得してくださる方を大切にしたいですからね。

ハードルを乗り越えて一度来てくださったあとは「もうずっとここで買おう」と思ってもらえるような関係性が理想です。うちのスタッフたちも日々そのためにしっかり取り組んでくれているので、理想形は?と聞かれたらまさに「今」なのかもしれません。このまま地道に伸ばしていきたいです。

最後に、お店としての今後の目標について教えてください。

若い人の雇用を増やしたいですね。今こうして僕たちがうまく成長していければ、新しいスタッフとの出会いが必要になってきます。そこに若い人が入ってきてくれれば、高齢化の進むこの業界にも新しい風が入ってくることにもなるし、それ自体が業界への貢献につながるんじゃないかなと思っています。

あとは……そうですね、カラーミーショップ大賞でいつかは優秀賞とか獲れたらなって(笑)。

私たちも、授賞式でまたお会いできるのを楽しみにしています! 今日はありがとうございました。