「Canva(キャンバ)」は、オーストラリアのシドニーで生まれたビジュアル・コミュニケーション・プラットフォームです。
専門知識がなくてもオンライン上でかんたんに画像・動画編集や、Webサイト、ロゴ、SNS投稿用コンテンツなどを作成でき、1万点以上の素材やテンプレートも使えて、EC事業者さんにとってもメリットがいっぱいあります。
今回は、Canvaの植山さん、柚木さん、デザイナーのメガネさんに、Canvaでできることや、EC事業者さんにおすすめの活用術をたっぷりと伺いました。ぜひ参考にしてみてください。
Canvaについて
本日はよろしくおねがいします。早速ですがCanvaについて教えてください。
植山さん:
Canvaは、オンラインで使える無料のビジュアル・コミュニケーション・プラットフォームです。嬉しいことに世界190カ国で利用されていて、2023年10月現在、月間アクティブユーザー数が1億5000万人を突破しています。
日本版サービスを開始したのは2017年。2020年5月に柚木さんやメガネさんが所属する日本チームを立ち上げて、日本向けのテンプレートやコンテンツの充実を図ってきました。日本でもユーザー数が急速に伸びている状態です。
ちなみに、Canvaを展開するCanva Pty Ltdは、2013年にオーストラリアのシドニーで設立されました。今年の2023年8月25日に10歳の誕生日をお祝いしました。
植山さん、柚木さん、メガネさんはCanvaでどんなお仕事をされているのですか?
植山さん:
2019年にCanva Pty Ltdに入社するタイミングで東京からシドニーに移住して、現在までCanva の日本市場の成長に従事してきました。
柚木さん:
私も2019年にジョインして、リードデザイナーのポジションでテンプレート制作のディレクションを担当しています。当初は英語のテンプレートを日本語に訳したものが中心でしたが、今は日本人のデザイナーさんやコピーライターさんと一緒に、日本市場のニーズをリサーチして日本オリジナルのテンプレートを増やしています。
メガネさん:
柚木さんたちと一緒にCanva Japanのチームでデザイナーをしています。最初のころは「Canva?なに?」という反応が多く、Webに詳しい人以外にはあまり知られていませんでしたが、ユーザーが増えてきて、徐々に「Canva使ってるよ!」「魔法のようにできる!」「Canva大好き!」と反響も返ってくるようになり、とても感動しています。
Canvaを使う3つのメリット
Canvaを使うメリットにはどんなことがありますか?
柚木さん:
メリットとしては以下の3つがあげられます。順番に説明していきますね。
メリット1:豊富なテンプレートで時短できる
テンプレートが豊富なので、デザインをゼロから作る必要がなく時短になるのがメリットです。
InstagramやX(旧Twitter)、お子さんのアルバム、年賀状などプライベートで使えるものから、Webサイトやプレゼン資料のようなビジネスシーンで役立つテンプレート、学生さんの需要が高い履歴書やクラスTシャツのテンプレートなど多種多様に揃っています。
メリット2:Canvaだけで作業が完結
Canva内にイラスト、写真、動画、グラフ、音楽など、デザインに必要なコンテンツがぜんぶ揃っていて、お手持ちの写真などもアップロードできます。
複数のソフトやアプリを立ち上げずにCanvaの中だけでデザインが完結し、SNS投稿も、Webサイト投稿もできてとても便利です。
Canvaプリントで印刷もオーダーできます。印刷用の入稿データは印刷会社のルールに従って体裁を整える必要がありますが、Canvaでは「裁ち切りまで絵が足りない」など不足している部分を指摘してくれるので安心です。専門知識のない人や慣れていない人にもやさしい仕様になっています。
メリット3:クラウド上で共有&編集可能!チーム作業にもおすすめ
編集画面右上の「共有」⇒「リンクコピー」ボタンを押してURLをシェアするだけで、チームメンバーと一緒に作業できます。
通常は、編集するたびにバージョン1、2とファイル名を更新して、作業者が別にいる場合はメールやオンライン上で共有して、相手が更新したものをもらって作業して・・・というようなやりとりを何度も繰り返さなければなりませんが、Canvaでは同じ画面で同じデザインを同時に触れるので、言葉で伝えるのが難しい引き継ぎもかんたんです。
Canva内の素材は商用利用できますか?
植山さん:
Canvaのテンプレートや素材は、加工すれば商用利用も可能です。ただ、逆にいえば無加工での利用はルール違反になりますので、詳しくは利用規約をご確認くださいね。
▼参考はこちら▼
Canvaは商用利用可能!Canvaで許可されている商用利用と禁止事項について分かりやすく解説します。
CanvaがEC運営で役立つシーンはどんな時?
EC運営をする中でどんな時にCanvaが役立つか教えてください。
メガネさん:
ネットショップを始めるにあたって、ご自身でサイトデザインを手がける方も多いと思いますが、Canvaには素敵な写真やイラストなどのフリー素材がたくさん(100万点以上)あるのでとてもお得です。有料版では1億点以上の素材を使えます。
植山さん:
Webサイトを作るのもかんたんです。Canvaでスライドを作ったら、そのままWebサイトとして公開することもできますよ。
メガネさん:
SNSのアカウントを持っているEC事業者さんにおすすめなのが、SNSとCanvaの連携です。日本のSNSでは文章のみの投稿をよくみかけますが、文章だけでは物足りなさを感じることもありますよね。
Canvaなら、可愛いデザインフレームに文章を流し込み、イラストを添えて画像として投稿することもできるので、差別化を図るのに役立ちます。前述したとおり共同作業ができるため、チームで相談しながらフレキシブルにスムーズに作成できるのもメリットです。
植山さん:
プロフィールページのテンプレートも豊富で、EC事業者さんにも役立つと思います。私個人のInstagramやXにプロフィールページのリンクを張っているのですが、それもCanvaで作りましたよ。
メガネさん:
Instagramでは、プロフィール欄にLink Tree(リンクツリー)を張るショップさんが多いですよね。
Canvaの有料版ではLink Treeのカスタマイズもかんたんです。ショップのイメージカラーに合わせればワンランク上のLink Treeに仕上がりますし、リンクツリー上に投稿した商品やおすすめ商品のリンクを張れば、お客様が迷わずダイレクトに商品を購入できて販促にも効果的です。
また、Canvaはメールニュースの作成にも役立ちます。SNSの投稿内容をそのままメールニュースに落とし込むこともできますし、かわいくておしゃれな無料素材が豊富なのでイベントやポップアップショップのお知らせなども魅力的に作成できます。お客様にたのしいニュースを提供できると思います。
さらに、Mailchimp(メールチンプ)と提携しているので、その機能も必要に応じて活用できます。
それから、チラシなどの印刷物がほしいときにデザインデータをかんたんに作れるだけでなく、編集画面から印刷を発注できるのも便利で役立つサービスだと思います。印刷のクオリティーも高いので、ぜひ使っていただきたいです。カラーがすごくキレイに出ますよ。
ECサイト運営におすすめな機能を紹介
もう少し掘り下げて、EC運営を効率化できるようなCanvaの使い方などがあれば教えてください。
植山さん:
Canvaは場所と時間を選ばないツールで、時短に最適です。
PCで使えるのはもちろん、アプリをスマホやタブレットにダウンロードしておけば、通勤中など出先でも手軽にサクサク作成・編集できます。
素材が豊富に揃っているので、ストックフォトやイラスト素材のサイトでわざわざ探す手間も省けますし、隙間時間を有効活用できるので、その分、売上を上げるための時間に充てられるのではないかなと思います。
メガネさん:
マジックスイッチ(旧マジックリサイズ)機能を使えば、SNS用に作った画像をワンクリックでバナーサイズに変更できるのも便利ですね。商品告知バナーを作るときにかなり役立つと思います。
植山さん:
マジックスイッチもたまらない機能ですね。
プライベートでポッドキャスト、YouTube、noteでも情報発信していますが、それぞれのプロフィール画像を作るときにマジックスイッチでまとめて一瞬でリサイズできて、ユーザーとしてすごく感動しました。時間を節約できるので、EC事業者さんにも大いに活用してほしいです。
Canvaにはほかにも便利な機能がたくさん搭載されています。EC事業者さんは新商品をサイトに追加する際に、文字入りの商品画像を作ることがよくあると思いますが、Canvaならテキストや矢印などを載せるのもかんたん。背景除去も1クリックでできて便利です。
柚木さん:
有料にはなりますが、背景除去は便利な機能ですね。商品を撮影したときに背景に余計なものが写り込んでも、背景リムーバを使えば細かい部分もキレイに消せます。商品写真の背景をすべて消して、商品の後ろに同じ色の背景を敷くことでECサイトに統一感を出すという使い方もできますよ。
皆さんがとくにEC事業者におすすめしたいCanvaの機能はありますか?
植山さん:
やっぱり先ほどもお話したマジックスイッチ機能は、EC事業者さんにもイチオシの機能ですね。デザイナーさんの労力が減ると思います。
それと、複数人で制作する際のクリエイティブデザインを揃えるのに、ブランドキットが便利でおすすめです。ロゴやブランドカラー、フォント、写真、グラフィックなどをあらかじめ登録できるので、複数人で制作してもブランドイメージを維持・管理できます。
柚木さん:
アップロード素材のタグ付けもおすすめしたい機能です。
Canvaにはお手持ちの写真などをアップロードできますが、数が多いとなにがアップロードされているのかわからなくなりますよね。あらかじめお好きなKWでタグ付けしておけば、いつでもラクに検索できるようになります。
いちいちスクロールして探さなくても写真を一発表示できるので、作業時間の短縮にもつながります。写真にタグ付けする際は、アップロードした写真右上の「・・・」をクリックして、「タグを追加する」を選んでください。
植山さん:
Canvaトップページの検索窓(「プロジェクト」を選択)では、自分で作成したデザインの保存名で検索することも可能です。進行中のデザインもすぐに探せますよ。CanvaではスーパーのチラシやYouTubeのサムネイルでおなじみの袋文字加工もできますね。
柚木さん:
日本独特の文化なのか袋文字は大人気です。「年末大セール」のような文字も、メニューのエフェクトから袋文字を選ぶだけでかんたんに作れます。
季節商品やセールのお知らせ、クーポン、チラシ、バナーを作るときも、有料版を含めると1億点以上の素材が使い放題なので、季節やクリスマスなどのイベントに合わせて最適な写真やテンプレートを選べるのも嬉しいポイントです。
最近は「おせち」のような日本向けのイラストも増えてきて使いやすくなったと思います。
メガネさん:
画像編集の機能も充実しています。画像の明るさを調整したり、画像にSALEなどのテキストを加えたり、イラストを追加するのもかんたんです。
背景透過機能を活用して、撮影した商品画像の背景に写真やイラスト素材を敷いたり、写真のコラージュもできます。いろいろなアレンジ方法があるので、以下を参考に試してみてくださいね。
▼参考はこちら▼
植山さん:
画像だけでなく、動画編集もかんたんですね。プライベートでポッドキャストのオープニング動画をCanvaで作ったのですが、テキストをアニメーションにして、音楽を乗せて、自分の声のタイトルコールを入れて、と凝った動画が作れます。背景のデザインは、ポッドキャストのカバー動画用のテンプレートを使用しました。
柚木さん:
テキストのアニメーションにも種類があり、文字をネオンのように点滅させたり、ふわっと浮き上がらせたり、動画の知識がなくてもこだわろうと思えばどこまでもこだわれますね。
植山さん:
1コマずつ長さを変えたり、全コマを0.3秒で統一したり、動画の速さを2倍速にできたり、ループ再生できたりと、動画編集も自由自在です。短尺だけでなく長尺動画も作れますし、素材をいっぱい貼り付けて動画にすることもできます。
メガネさん:
文章作成が得意でない方は、有料のMagic Writeを使えばラクに文章を作成できるのも魅力ですね。
ほかにも、Smart Mockup機能を使えば、Photoshopが使えない人でも写真をドロップするだけで、たとえばスマホ画面にサービスページを当て込んだ画像などを作れますし、オリジナルのTシャツやトートバッグ、ステッカーなどのグッズを作ることもできます。
無料のTシャツモックアップジェネレーターも用意していますよ。日本独自のモックアップにも力を入れているので、今後にご期待ください。
Canvaを使った事例を紹介
Canvaを使ったEC事業の活用事例を教えていただけますか?
メガネさん:
私が知っている事例を紹介しますね。
カラーミーショップさんでショップを開設されている、ニジノ絵本屋さんのInstagram動画の事例です。
電車の中で視聴するケースなど、音を聞けないシチュエーションも想定して、動画上に丁寧でわかりやすいテキストが入れてあって、すごくよく考えられているなと感じます。
文字を読みやすいように、テキストの背景にさりげなく素材が敷いてあるのも気が利いていますし、動画編集の参考になると思います。
このほか、Canva公式YouTube(英語)にも、EC事業者さんの動画作りの参考になりそうなコンテンツがたくさんあります。
ケーキ屋さんや水着のデザイナーさんなどが、ご自身のビジネスに対する想いやコンセプトを語っている動画もあり、素敵なストーリーに触れられます。いずれもCanvaでデザインした動画なので、チェックしてみてください。
植山さん:
Canvaは静止画と動画を同時に作れるツールです。Photoshopやillustrator、動画編集ソフトなどを使えなくてもCanvaひとつで制作できるので、EC事業者さんもどんどん活用してくださいね。
私も普段Canvaで資料作成やブログのアイキャッチ画像を作っていたのですが、本日はまだ使いこなせていたなった機能などお伺いできました。植山さん、柚木さん、メガネさん本日はありがとうございました!