ネットショップの売上をアップさせる中で効果的な施策として知られるLP。
しかし実際にLPがどんなもので、どれほどの効果があるのかわからない方もいらっしゃるかと思います。
今回はLP作成について、よむよむカラーミー編集部が「そもそもLPとは?」という基本的なお話から、LPの効果や作り方の流れ、極意(コツ)について、株式会社nanocolor(ナノカラー)の川端さんにお話を伺いました。
代表取締役 川端康介さん
目次
そもそもLPとは何?作るメリットって何があるの?
早速基本的な質問で恐縮ですが、そもそもLPって何ですか?
LPは「ランディングページ」と言いまして、ランディングを直訳すると「着陸する」という意味なのですが、その意味の通りさまざまな経路から訪れた人が最初に着地するページがランディングページです。
例えばネットショップでしたら、ショップ名で検索して入ってきた”トップページ”、広告から入ってきた”商品ページ”、シェアされた”ショップのブログ”などが広義なランディングページです。
特定のページを指していると思っていたのですが沢山あるんですね。
そうです。ちなみに僕が専門としてるのはもう少し狭義のLPで、広告経由で訪れた、何かしらの目的がある人をターゲットに説得をするページを指します。僕がほとんど仕事で作っているのはそちらになります。
すごく分かりやすいです。ではそのLPって何のために作るんですか?
一番の目的は営業ツールです。会員獲得やお問い合わせや申し込み、ECだと購入というゴールに向けて作ります。簡単にいうと「売る」ためですね。WEBサイトやホームページには、自社や商品の魅力を伝えることで好意的な認知を広げる目的も兼ねていますよね。しかしLPは「売る」というゴールに向けた最短ルートだと思っていただけると分かりやすいかと思います。
なるほど。売ることを目的にLPを作ると仰っていましたが、その部分をもう少し深くお聞きしたいです。
実は「売る」には色んな意味があります。
例えば高額商品や検討期間の長い商品は、お問合せや、来店予約や、対面営業など小さな「売る」を繰り返した先に代金をいただく「売る」ゴールがありますよね。他にもサブスクサービスだったら継続していただく為に30日間お試しキャンペーンなどで、先に無料を「売る」ことで、継続契約を「売る」ビジネスモデルです。この様にビジネスモデルによってキャッシュポイントやフローが違う様々な「売る」が存在しています。
ECサイトではたくさんの商品が販売されており、それぞれひとつひとつの「売る」が積み重なることでサイト全体の売上が成り立っています。中には利益率が高い商品や低い商品、売れやすい商品や売れにくい商品があると思いますが、ECサイト全体の売上を上げるには、売上の柱となる売りやすい商品をどんどん伸ばしていく事がとても大切です。
しかし売上の柱となる商品を作ることは簡単ではありません。有名メーカーさんなら知名度も高いですが、オリジナルブランドだと商品価値を認知されていない状況がほとんどです。だから他社商品との優位性や、商品を使う事で得られる便益性やメリットをたくさん伝えなくてはいけません。そういう時にLPを用いて購買率や購買数を上げ、ダイレクトに売上に貢献します。
ふむふむ。それってネットショップの商品ページとは違うんでしょうか。
一般的にネットショップの商品ページはサムネイル画像・商品スペック・価格くらいの情報でとどまってしまうケースが多いんですけど、価値理解がすでに得られていない限り、少ない情報だけでユーザーは購入を決定することって難しいんですよね。
実は消費者は何かを買う、つまり決断するのはストレスの多い作業です。このサイズで自分に合うかな、期待している味かな、ちゃんと届くのかな、失敗しないかな、そんな不安を抱きながら購入はできません。
だからこそ訪問者の期待に応え不安を解消するために、情報というインフォメーションをコミュニケーションに変換して伝え、興味を喚起し、時には説得し、迷わせずに購入を促すのがLPの役割であり、その結果ネットショップ全体の売上やコンバージョンレートが上がると考えています。
ネットショップにLPって必要なの?知っておきたいLPの重要性
LPのメリットをお聞きして、売上をアップさせる施策としてLPは重要だなと感じたのですが、そうすると、やっぱりすべてのネットショップでLPを作ったほうがよいのでしょうか。
基本的にはLPはあったほうがいいという考えなんですけど、課題領域によっては「そもそもLPは必要なのか」を検討していただいたほうがよいと思っています。
課題領域によってLPが必要かどうか変わるんですか?
はい。”ECサイトの売上を上げる”を分解していくと、下記の様にいろんな施策が考えられます。
・LPを作りCVRを上げる
・広告を出稿し集客数を増やす
・クロスセルなどで客単価を上げる
・既存客にアップセルを促す
では”売上”とはなんなんでしょうか。売上とは[アクセス数]×[購入率]×[顧客単価]です。そしてLPとは商品の[購入率]に影響する施策の1つです。では果たして皆様のECサイトの課題は購入率なのでしょうか?アクセス数や顧客単価に課題はありませんか?売上を上げるための施策にはLP制作以外にもできる施策はたくさんある事も理解していただければと思います。
確かに状況によって必ずしもLPが最適なのかどうかを考えるのは大切ですね。ちなみにネットショップを作り始めたばかりだよという方にとってもLPは効果的なんでしょうか。
うーん、ネットショップを立ち上げたばかりの方がいきなりLPを作るのはあまりオススメしないかもしれないですね。
えっ、それはなぜでしょうか?
例外の商材やカテゴリーもありますが、立ち上げたばかりはどの商品がユーザーに対して反応が起こるのかというデータがあまりにも少なすぎる状況です。どの商品にニーズがあり、どれくらい集客できるかというデータもなく、さらに予算やリソースも限られている…となれば勘だけでLPを作るようなものです。
予算とリソースが無限であれば全商品をLP化っていうのが理想なんですけどね、本当は(笑)
確かにお店を始めたばかりだとまだまだ情報が少ないですし、いきなり選ぶのは難しそうですね。では、ネットショップを開設して何年くらいの方はLPを作ったほうがいいよといったものはありますか?
期間というよりは、課題領域が明確になってきたり、訪問者のニーズに目星がつく様なデータが揃えばOKです。「他商品よりもCVRが伸びている商品が見つかる」とか、「他商品よりアクセスが集中している商品がある」や「お客様の声から新たなニーズを見つけた」や「相性の良いターゲットが明確になった」といったデータや情報をお持ちであればLPを作った方がいいと思います。それが無い場合はさきほども言ったようにまだ早いかなと。
いわゆる看板商品があるけれども、ちょっと伸び悩んでいるとかさらにもう一歩成長したいという人はぜひLPにチャレンジしてみたら、ということでしょうか。
そうですね。
あと気になっていたのですが、一つの商品に対してLPって1ページだけ作るものなんでしょうか、それとも複数ページあっていいものなんでしょうか?
僕は複数ページあっていいと思っています。LPの構成を作る流れの中で、よく自社商品のUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)いわゆる、独自のセールスポイントを探しましょうみたいな話があるんですけど、その時に出てくる強みって実は売り手目線のUSPが多いんです。でもリサーチしてみたら、ユーザーによって使い方や期待されていた事が違ったりします。商品の価値って売り手が決める事ではなく買い手が決める事なんですよ。だからお客様の数だけ商品の価値は存在します。
今すぐ欲しいAさんもいれば、いつかは欲しいと思うBさんもいるし、全く興味のないCさんもいます。それぞれの相手に合わせて提案方法を変えるのは、コミュニケーションとして当然ですよね。そういう理由からLPを複数用意することは何も不自然な事ではありません。
どんなLPを作れば商品は売れるの?大切なのは「目標数値」と「リサーチ」
もしかしたら川端さんが怒ってしまうかもしれない質問をさせていただきたいと思うんですけど、ずばり、どんなLPを作れば商品が売れるようになるんでしょう。
怒らないですよ(笑)。
どんなLPを作ると商品が売れるか、そうですね。まずは目標数値ですね。これは「売れる」とはどういう状況なのかの定義を決めるために必要です。
例えば図のようなECサイトがあります。目標の月商が300万円で各商品の売上額がこのような額だとします。目標まで65万円が足りません。
では次に販売個数とCVRを見てみましょう。売上全体に最も貢献する人気商品は【A】です。よって【A】のLPを作りCVRを上げる事が目標達成に最も近道だと考えます。具体的にはCVR5%から8.25%に上げることができれば売上高は165万円になり目標月商の300万円に到達できます。
つまり商品AのCVRが8.25%になる事が「売れるLP」の定義となります。この様な流れで目標数値から逆算していくことで、漠然と考えていた「売れる」という定義が明確になり、その結果、誰にどれくらい売るのか明確にしやすくなりますよね。さらにその乖離を埋めるプロセスがこの後お話しするリサーチと紐づいていきます。
確かに、あんまりLPと売上目標をくっつけて考えていなかったのですが、誰に対してどのくらい売りたいのかなど目標を設定することで、どんなLPを作ったらいいのかを具体的に考えやすそうですね。
そうですね。
でも、定義を決めただけではまだどんなLPを作るべきかが明確に分からない状況です。先程の目標CVR8.25%までの差分を埋めるために必要な要素を分解してみましょう。
5%の購入者はなぜ商品Aを購入したのでしょう?他の商品よりも人気の理由が分かるかもしれません。逆になぜ95%は買わずに帰ってしまっているのでしょうか?競合商品の方が魅力的に感じたのかもしれません。そもそもAのページに訪問している方はどこから来て、何を期待し、どんな情報を求めていたのでしょうか?
先程の売上=アクセス数×購入率×顧客単価という話は定量的な視点ですが、定性的な視点での[誰に]×[何を]×[どの様に]も非常に重要です。その為には訪問者の流入キーワードやクリックしたバナー、そして競合調査などから理解を深めなければなりません。
なるほど、LPだけでなく広告運用とのバランスもセットで考えないと売れるLPには近づけない…ということなんですね。
そうですね。だから弊社ではリサーチにすごく時間をかけます。想定するターゲットの求めているものや、心理状況を細分化するためにすごく時間を使うんですよね。デザインを作る時間よりも、もしかしたら長いかもしれない。リサーチの中には競合商品を買った人の口コミとかも調べます。そうすると、思いもしない情報も得られたりすることも多々あります。
競合商品の口コミまで見に行くんですか…!すごい。
はい。口コミには購入者の保有課題や購入要因、使用した体感、そして評価などの本音が含まれています。妄想で作った売り手都合のターゲット像よりも圧倒的に事実に近い情報です。こういった調査からLPを作る商品の価値が最も伝わりやすい人物像や、競合との優位性の見せ所などが浮かび上がってきます。
こういったリサーチを重ねる事で、「狙うべきターゲット」と「狙わない方がいいターゲット」も明確になっていきます。
売れるLPを作るのに、前段階の調査・戦略作りも重要なんですね。
そうですね。他社との優位性ってお客様がそう感じてはじめて優位になるんです。誰もそう思っていない店主のこだわり情報を押し付けられても、多くの場合は見向きもされないですよね。しかし他社商品を使った人の不満コメントが見つかればそこをピンポイントで伝えると優位性として感じていただきやすいですよね。小さな事ですが、そういう積み重ねが大事です。
LPの作り方ってどうやるの?実際の流れ・手順を川端先生に聞いてみる
今までのお話を聞いて実際にLPを作ってみようかなと興味を持たれる方もいるかと思うんですが、実際に作ろうと思っても難しいと思うんですよね。そこで初心者でも取り組みやすいLPの作り方というか流れや手順などがあればぜひ川端先生に教えていただきたいです。
初心者の方でも取り組みやすい作り方ですか。うーん…そうですね。まずは型を知ることかなと思います。
型を知るにはまず売りたい商品と近い商品のLPをたくさん集めることが近道だと思います。そしてLPを構成しているコンテンツを抽出してみましょう。「受賞歴」や「お客様の声」「原材料」「用途方法」「お得感」などLPを形成する要素をピックアップします。
なるほど。ちなみにLPを調べて集める際の手段というのは普通に検索エンジンやSNSなどで調べたりする、という認識であってますか。
そうですね、その方法が中心になるのかな。その後は、競合の定義を広げてまたLPを集めましょう。
また集めるんですか?
さきほど集めていただいたのは、売り手目線の競合商品のLPですが、次は買い手目線のLPをイメージして集めてください。
例えば「睡眠不足」という悩みを抱えた人が想起するものって、サプリメントや快眠枕とかアロマテラピーとかマットレスとか、さらには就寝前のストレッチやホットミルクもあるじゃないですか。想起するものは人によって違いますが、同じターゲットを狙う商品は競合と設定してみます。
同じカテゴリー、同じ便益性、同じ訴求、同じスペック、同じ売り場の商品LPを集めていくと、さまざまな表現方法や切り口の発見にもなります。
なるほど!LPを集めて、コンテンツや要素の抽出が終わったら次は何をしたらいいでしょうか。
集め終わって、各LPを構成するコンテンツを見比べてみると、共通しているものが見つかってきます。そこをマストで押さえておいた方がいいですよね。それが型です。
型がわかってくると、型だけでは表現できない自社商品の魅力があるかもしれません。それが独自性や優位性の発見につながります。しかし型がないのに型破りなものを作ってしまうから失敗の可能性が高まってしまいます。
確かに自社商品のターゲットが刺さりそうな要素はないか、などの目線で見ると、自社のLPになにが必要なのかがわかってくる気がします。LPを集めると聞いた時はてっきり先にデザインなど参考にしていくのだと思っていました。構成しているコンテンツなどを集めていくんですね。
そうですね。ターゲットの求めているコンテンツや要素を考えるのが何より重要で、デザインは最後に決めるものと思っています。もちろん自社のブランドを表現するためにクリエイティブにこだわることも必要です。しかしそれはクリエイティブのこだわりが購買意欲を掻き立てる商品に限ってのことです。個人的にはターゲットが直感的に好むデザインであれば正解だと考えています。
この手順で作れば、まだLPの作成に慣れていない方でも、自社商品の魅力や他社との優位性を伝えるLPとして作りやすいんじゃないかな。まずはそういったところから始めてみるのはいかがでしょうか。
LP作成で初心者が押さえておきたい極意(コツ)・考え方とは
最後に初心者の方がLPを作る上で押さえておいてほしい極意というかコツのようなものがあればぜひ教えていただきたいです。
初心者さんが押さえておきたいコツですね…。そうだな、いきなり高いお金を払ってLPを制作会社やデザイナーさんに頼むのがいいのかというとそうではないので、少ない予算で小さく始めてみることが大事です。それと、そのLPを評価するための計測と検証までセットで行うことがすごく大事だと思います。意外と、作って効果検証をしない方も多いのでぜひ行っていただきたいです。
漠然とした売れた/売れない、デザインの好き/嫌いという判断だけでLPを評価するのはあまりおすすめしません。せっかく作ったものだからこそ、効果検証し良い点と悪い点を把握する事が次につながる投資だと思います。
LPの作り手も大事ですが、それをきちんと検証できる人のほうが僕は重要だと思います。
ありがとうございます。今回はLPの基本的なことから川端さんの考える”売れるLP”について、LPの作りかたの手順などをたっぷり教えていただきました。今回のお話がネットショップの売上アップの施策としてLP作成を検討している方の参考になれば幸いです。