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クラウドキッチンが活況。飲食業の新たなビジネスモデル

コロナ禍では時短営業や酒類提供制限などにより、飲食店の運営は変化を強いられました。デリバリー需要の高まりとともに注目されているのが、クラウドキッチンです。クラウドキッチンの仕組みやメリット・デメリットについて、今後の動向をふまえて解説していきます。

※本コンテンツはクックパッド株式会社が運営する、食ビジネスの動向やトレンドを届ける専門メディア「FoodClip」の転載記事です。

クラウドキッチンとは

クラウドキッチンとは、主にデリバリー専用のキッチンのみを持つビジネスモデルのことです。一般的な飲食店のイメージとは異なり、飲食スペースを持たず、店頭でのテイクアウト販売もしないのが特徴。注文はデリバリー用のアプリなどを通して受け取り、配送は個人や専門のサービス会社に依頼して運営しています。

クラウドキッチン内は、調理専用スペースと保管スペースに分けられおり、業務用の厨房設備が備わっています。デリバリーに適した配置になっているので、大量のデリバリー注文を効率よく処理できるのが特徴です。

ゴーストレストランとの違い

クラウドキッチンと同じく、コロナ禍以降着目されるようになったビジネスモデルに「ゴーストレストラン」があります。

ゴーストレストランは、店舗を持たずデリバリー販売のみをおこなう店舗のこと。ほぼ同義ですが、クラウドキッチンはシェア・クラウドキッチンやシェアキッチンなど、キッチンを複数人(複数店舗)でシェア利用するケースもあります。そのため、ひとつのキッチンので、まったく別業態の店舗を複数運営したり、複数の料理人が店舗を運営することもあります。

強いて定義をわけるとすれば、ゴーストキッチンは「無店舗型飲食店の総称」、シェアキッチンは「シェアリング型の店舗業態」となります。

▶︎デリバリー専門ゴーストレストランが注目されている理由
https://foodclip.cookpad.com/5385/

クラウドキッチンのメリット・デメリット

既存の飲食店と比べて、クラウドキッチンにはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。主に次のようなことがあげられます。

クラウドキッチン参入のメリット

メリット1:低コスト・低リスクで始められる

既存の店舗運営では、初期投資として賃貸料、内装費、内装や厨房設備などが必要でした。小さな店舗でも最低数百万円にのぼると言われます。大きな資金を調達することは、簡単ではなく、開業準備にも時間を要します。クラウドキッチンは、飲食業に必要な設備が整っており、使用契約と営業許可申請を出すだけで開業可能。低コスト、低リスクでスタートできます。

メリット2:接客スタッフ不要で人件費削減&家賃軽減

飲食店では、店舗スタッフの人件費と家賃に大きなコストがかかります。クラウドキッチンには、店舗スタッフがいません。必要なのはクラウドキッチンのレンタル料のみ。そのため、人件費は削減、家賃も大きくコストカットできます。

メリット3:ひとつのキッチンで複数のコンセプトが提供可能

既存の飲食店舗では、一つの屋号(店舗)に対して一業態が定番でした。クラウドキッチンの場合は、一人または一店舗でも複数のコンセプトで店舗展開ができます。時期によって提供商品や店舗をガラッと変えたり、まったく異なるジャンルの店を並行してはじめるなど、これまで難しかった展開も可能になります。

メリット4:デリバリーアプリで分析し、マーケティングやメニュー開発に活かすことが可能

クラウドキッチンでは、注文や販売はデリバリーアプリでおこなうのが基本です。アプリ経由で、ユーザーの分析に必要なデータが手に入りやすくなります。人気メニューや注文時間帯などの動向はもちろん、ユーザーの年代や注文場所(家、オフィス)など、店舗では集めることが難しかったデータも収集可能になります。これらをマーケティング戦略、新メニューの開発に活かすことができます。

クラウドキッチン参入のデメリット

デメリット1:手数料が高い

クラウドキッチンでは、デリバリーアプリとの連携が不可欠ですが、平均約35%の手数料がかかります。運営している以上は必ずかかるコストとなり、削減できません。その分、商品価格に反映せざるを得ず、ユーザー側から見た価格の妥当性との折り合いも考えなければなりません。ただ、集客コスト、マーケティング活用、決済管理、店舗運営の固定費リスクなど、多角的に見れば単に価格だけでは判断できない部分もあります。

デメリット2:ユーザーとの直接的な接点が少ない

ユーザーが実際に食べている姿を見たり、感想を受け取って反応を知るのは、料理人にとってニーズや改善点を知るための貴重な接点です。しかし、クラウドキッチンではユーザーの反応を直接見ることが出来ません。直接的な接点が持てない分、SNSなどを使った双方向のコミュニケーションは必須だといえるでしょう。

続々オープン!日本のクラウドキッチン

クラウドキッチンは、2019年頃から日本にも登場していたビジネスモデルですが、コロナ禍でのデリバリー需要の高まりによって注目を集めました。続々とオープンしている新たなクラウドキッチンをご紹介します。

大手不動産会社が参入!東急リバブルの「CITY KITCHEN」
不動産大手の東急リバブルが、不動産活用の一手としてクラウドキッチン事業をスタート。オフィスや高級マンションが多く、デリバリー需要があると見込んだ六本木に「CITY KITCHEN」をオープンしました。
▶︎https://www.livable.co.jp/citykitchen/

同業者のコミュニケーションを生む「KitchenBASE」
業態に合わせて選べるプランを提供しているシェアキッチン。中目黒や浅草など都内に数店舗、大阪にも進出しています。同業者同士のがコミュニケーションを取りやすい設計にするなど、独自の工夫を凝らしているのが特徴。
▶︎https://kitchenbase.jp/

独立型クラウドキッチン 「 DELICIOUS FACTORY」
ゴーストレストラン向けの日本初独立型シェアキッチン。デリバリーの手数料という課題を解決すべく、テイクアウトカウンターを併設しているのが特徴です。最低50万円~出店可能で退去コストもほぼゼロと、低リスク低コストで出店できます。
▶︎https://delicious-factory.com/

売上&利益の最大化を目指す「Add Kitchen」
広告やWeb制作、ECコンサル、飲食事業など多方面に事業展開する株式会社アッドバディがスタートしたクラウドキッチン。広告やマーケティングなどの他業種ノウハウと飲食店経営を行っているからこそのサポートが特徴です。
▶︎https://addkitchen.jp/

拡大するデリバリー市場クラウドキッチンのこれから

デリバリー市場はコロナ禍を背景に急拡大し、2023年には6,821億円規模まで拡大し続ける見込みです。※ 市場の拡大にともなって「Lilly Cloud Restaurant」のようなクラウドキッチン用フランチャイズブランドや、「Million Plate」のように実レストランをまとめてクラウドキッチン化するバーチャルフランチャイズなど、さまざまな派生事業が産まれています。生活者が食に求める価値やライフスタイルの変化、働き方の多様化にともなって、クラウドキッチンは今後ますます成長が期待されるでしょう。

開業までの準備やランニングコスト、集客など、これまで多くの飲食店が抱えていた課題。解決の一手となるクラウドキッチンは、今後利用者の拡大が予測されます。副業や新事業のトライアル、土日のみや複数人でのシェアなど、利用の形態や利用者層の多様化も予測されます。開業のハードルが下がり、多くの飲食店の出店が叶えば、飲食店全体の質の底上げやコロナ禍で沈みがちだった飲食業界全体を盛り上げる起爆剤にも。今後のクラウドキッチンの新たな展開、動向に注目です。

※参考:ICT総研2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査

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