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地元消費が9割の地酒を全国に届けるために。お客さまとのコミュニケーションを大切にネットショップを運営する釜石の酒蔵「浜千鳥」

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
岩手県釜石市にある大正12年創業の酒蔵「浜千鳥」。「自然とひとつになった酒造り」をコンセプトに、陸中海岸の海の幸・北上山地の山の幸に合う地酒を醸しています。オンラインでは蔵見学を開催したり、頒布会のクレジット決済を導入するなど、お客さまとのコミュニケーションからさまざまなニーズに応えています。今回は杜氏の奥村 康太郎さんにお話を伺いました。

釜石の酒蔵「浜千鳥」

まずは、浜千鳥さまについて教えてください。

創業が1923年の酒蔵としては非常に若い会社です。もともと釜石は小さな漁村でしたが、鉄鉱石が採れるということで幕末に日本で初めて反射炉が建てられました。官営製鉄所が建って人口が増えると地元に酒蔵が欲しいという声が出まして、地域の有力者たちが出資してできたのが旧社名の釜石酒造商会です。

日本酒と米を使った焼酎、地元の梅の実を使った梅酒を造っており、昨年からはコロナ禍ということで焼酎の技術を応用してアルコール度数の高い消毒液も製造・販売しています。

「地元に酒蔵が欲しい」というのは、地酒が飲みたいという要望があったということですか?

確かな文献はないのですが、昔は内陸から沿岸にお酒を運んでいたんですね。今みたいに高速道路もないですし、峠を越えて籠で運んでいてかなり大変だったと聞いています。そのため、地元に酒蔵を建てて地域で消費することを目的とした商売だったようです。

なるほど。途中で釜石酒造商会から浜千鳥に社名を変更されたんですね。

そうですね。企業のブランドイメージの向上や認知度を上げる狙いで、平成15年に日本酒の銘柄であった浜千鳥へと変更しました。

杜氏の奥村 康太郎さん

奥村さんは埼玉県のご出身だそうですが、なぜ岩手県で酒造りを志されたのですか?

学生時代はまったくお酒の勉強をしていなかったのですが日本酒を造りたくて、「酒造り=南部杜氏」というイメージがあったので岩手県に来ました。埼玉県には海がないので、海が近い釜石を選びました。

確かに酒造りと言えば南部杜氏を思い浮かべる方も多いですよね。南部杜氏について教えていただけますか?

酒造りの現場の責任者を杜氏と呼びます。本来、杜氏さんという方々は、夏は農業をして冬の農業ができない時期に集落の仲間である蔵人を引き連れて、酒造り集団として全国の酒蔵に出稼ぎに行ったんです。
現在は農業をされる方が少なくなり、私のように会社に所属したり、蔵元自らが杜氏を務めたりしています。
杜氏は地域ごとに組合があり、岩手県を中心とした南部杜氏の他に、大きいところだと新潟県の越後杜氏や兵庫県の丹波杜氏、広島杜氏などがあります。一番大きいのが、私が所属している南部杜氏協会です。

南部杜氏として、お酒造りへのこだわりはありますか?

蔵がある釜石は三陸沿岸の港町で、新鮮な魚介類が獲れます。また、山も多く山の幸にもおいしいものがたくさんありますので、それら地のものに合わせた酒質設計を心がけています。

コロナ禍でも売上を伸ばしたネットショップ

現在の主な販路はどこになりますか?

80%は卸会社に出しています。直接酒販店さんに売る小売が7〜8%、あとはネットショプも含めた一般消費者が8%ぐらいです。清酒が90%で焼酎とリキュールがそれぞれ3%、その他が2%を占めています。
地域の内訳でいうと岩手県内が90%で、そのうちの半分は地元の釜石大槌になります。

かなり地域に根ざしたお酒なんですね。ネットショップの購入者は他県の方もいらっしゃいますか?

そうですね。県内外からご注文をいただいています。

昨年はコロナウイルスが猛威をふるいましたが、売上に影響はありましたか?

はい。岩手県は感染者数0人が続いていたものの、首都圏で自粛ムードが広がると地方も同時に客足が鈍ります。先ほどお話した通り地元消費が多いお酒ですので、地元の宴会や結婚式、法事や会合、懇親会というのが一切なくなってしまい、売上にかなり影響が出ました。

ネットショップへの影響はいかがでしたか?

卸、小売、消費者、総じて減っていましたが、そのなかでネットショップだけは伸びて前年比138%でした。家飲み需要が伸びているのではないでしょうか。

他のショップオーナーさまからも「コロナ禍にネットショップがあって助かった」という声をよく聞きます。ネットショップはどういった経緯で、いつ開設されたんですか?

私が担当して、平成18年の7月に立ち上げました。
私たちは地酒メーカーですので、主な販売先は卸会社と酒販店さんです。当時は「私たちの商品を対面で熱心に販売してくださる酒販店さんとお付き合いさせていただく」というスタンスでした。
ただ、地元での消費が90%で県外には販売先がありませんでしたので、県外の方から購入希望の問い合わせがあると、電話で注文をとって発送していたんです。そういった対面販売できない部分を補足する目的で始めました。

カラーミーショップをお選びいただいた理由は何だったのでしょうか?

インターネットやパソコンについて素人同然の私たちでも扱いやすく、初期費用もそれほどかからないということで制作会社さんにおすすめしていただいたのがきっかけです。

実際に使われてみていかがでしたか?

非常に簡単でわかりやすかったですね。
ネットショップを使えばお客さまが注文情報をすべて入力してくれますから、こちらの手間も省けます。とても便利でおすすめできるツールだなと思います。

ありがとうございます。
制作会社さんにお願いされたとのことですが、ネットショップのコンセプトはありますか?

現在のネットショップは3年前に地元の制作会社「アールヨンジュウゴデザイン」さんにリニューアルしていただきました。代表の佐藤さんは当社のお酒を非常に愛してくださっていて、浜千鳥のイメージをしっかりもたれている方なんです。当社のキャッチコピー「自然とひとつになった酒造り」から広がる三陸の風光明媚な自然のイメージをそのままにデザインに落とし込んでくれました。

たくさんの愛がこもったネットショップなんですね。

そうなんです。ネットショップはカラーミーショップだけでなく、昨年からはカラーミーリピートを利用した頒布会も始めておりまして、そちらも非常に好評です。

ありがとうございます。カラーミーリピートも何か導入のきっかけがあったのでしょうか?

もともと毎月お酒が届く頒布会はあったのですが、クレジットカード決済ができなかったんですね。請求書を書いて郵便振替用紙を同封して送っていたところを、カラーミーリピートの導入でクレジットカード決済もできるようになりました。おかげで、SNSなどでも頒布会を積極的にPRできるようになりました。今では40%の方がクレジットカード決済を利用されています。

そんなに! 今やクレジットカード決済はネットショップに欠かせない決済方法ですね。

お客さまとのコミュニケーションを大切に

浜千鳥さまではイベントをたくさん開催されていますよね。

お客さまとコミュニケーションを図って、会社の運営や商品の内容に関するご意見を直に聞いたり、商品のPR、発信をする大切な場だと考えて開催しています。
一番長く続いているのが平成元年から地元釜石で行っている「浜千鳥のすべてを楽しむパーティー」です。その他、盛岡や東京都内、横浜などのレストランでもそういった会を行っています。

それだけ全国にファンが多いお酒ですが、イベントにもコロナの影響はありましたか?

昨年は一切、開くことができませんでした。

オフラインでできない分、オンラインでもイベントを開催されていますよね。スタートしたのはいつですか?

今回が初めてです。これは復興庁がパソナさんと一緒に行っている実践型インターンシップの一環なんです。毎年、東日本大震災で被災した三陸沿岸の地域企業がインターン生を募集して、抱えている課題を一緒に解決していく取り組みをしています。今年はお客さまと対面できない1年でしたので、オンラインでお客さまとどうコミュニケーションをとるかというのを課題にしました。
インターン生たちもコロナの影響で、前回からはオンラインでの参加になっています。

なるほど、リモートワークのような形なんですね。インターンシップがきっかけですが、今後もオンラインイベントは実施されていく予定ですか?

そうですね。今回でいろいろと課題も見つかりましたし、オンライン蔵見学は続けると思います。
他にも「浜千鳥を楽しむ会」の会場としてお付き合いがあるレストランさんとコラボレーションして、オンラインでお客さまと交流しながらお料理とお酒を楽しめるイベントを考えています。

オンラインイベントの様子

先ほど東日本大震災のお話が出ましたが、当時の状況を伺ってもよろしいでしょうか。

震度は6か7だったと思いますが、地盤が固いので工場や蔵は被害がほとんどありませんでした。海から直線で7kmほど内陸に入ったところにあるので、津波も届きませんでした。しかし、地域の飲食店さんが流されてしまったので一時期は納品先がほぼありませんでしたね。
震災から1〜2週間は停電していてネットショップの確認もできなかったんです。復旧後にメールをチェックすると、3月11日の夜ごろから応援メッセージと一緒に注文がわーっと入っていて、あれは本当にありがたかったですね。被災地を応援しようということで、ネットショップにはたくさんのご注文をいただきました。
あとは、釜石に来たボランティアの方々が飲まれたり、お土産として買って帰られる需要が多かったです。

応援のメッセージをくれる方がいたというのは温かいお話ですね。

それがきっかけで浜千鳥を知っていただいて、現在も繋がっている方もいます。嬉しいことですね。

これからのネットショップと浜千鳥の展望

これからのネットショップの展開を教えてください。

お酒とセットにしたオンライン蔵見学やお酒とお料理のセットのような、お酒プラスαの付加価値をつけた商品はどうかなと考えています。
同時に、先ほどもお話した家飲み需要のための商品やシステムであったり、対面で買えない地域のお客さまがネットショップから購入するという流れをもっと作っていきたいです。

お酒を楽しみながら参加できるイベント、楽しそうです!
最後に、浜千鳥さまの今後の展望についていただけますか?

なかなかコロナ禍がおさまらないですが、お客さまが戻ってこられたときにがっかりさせないように、品質を落とさずに浜千鳥の味を守っていこうと思います。

おまけ:おすすめの銘柄

今、一番おすすめのお酒を教えてください!

少し値が張るのですが「浜千鳥 純米大吟醸 結の香」です。岩手県で作った結の香というお米で仕込んだお酒で、雑味もなくてきれいなお酒です。いい意味で日本酒らしくないお酒で…詳しくはネットショップをご覧ください(笑)。

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