一斗缶から始まったジャム作り
セゾンファクトリーさまについて教えてください。
私どもセゾンファクトリーは、ジャム、ドレッシング、飲料、調味料を製造しているメーカーです。創業は1989年で、初代社長と2代目社長が兄弟で創業しました。ここ最近の年商は30億前後を推移しています。従業員はパートさん、アルバイトさんを含め220名ほどになります。全国に直営店と一部委託の店舗が20店舗少々ありまして、直営店は主に駅ビルや都市部の大型百貨店に出店しております。
主な得意先は全国の百貨店と、卸売の部門では関東、関西のスーパーマーケット、あとはホテル関係のプライベートブランドも手がけています。
ご兄弟で始められた会社ということですが、創業のきっかけは何だったんでしょうか。
創業者である相談役(前社長)のご実家は醤油屋を営んでいたんです。昔の醤油屋さんというのは小さな町単位でぽつぽつとあって、今で言う掛売りみたいに後払いで醤油を販売していました。例えば、農家さんが「お正月になったら支払いに来るから」と言って醤油を分けてもらうような感じです。お正月は収穫が終わって農家さんに実入りがある時期ですよね。
そういう昔ながらの小さな醤油屋さんだったので、大手の醤油メーカーの商品がスーパーに並び始めて、経営が成り立たなくなってしまったんです。当時、相談役は東京農大の学生でしたが、家業を継ぐために山形に戻りました。しかし、このまま醤油屋を続けても再建は難しいという状況だったようです。
ある日、お金がなくてどうしようもないときに、昔買ったぶどうジャムがあるのを思い出したそうです。それは、大学時代に合宿で訪れた長野で、たまたまトイレを借りたお店のものでした。お礼がわりに買ったそのジャムがすごくおいしくて、世の中にこんなにおいしい食べ物があるんだと感動したそうです。
そのことがきっかけで、ジャムの製造を志すことになりました。長野と同じく山形もぶどうが有名な土地柄だったので、お隣の農家さんからぶどうをわけてもらって、一斗缶を切ったものとガス台でジャムを煮て試行錯誤したのが始まりです。
そんな誕生秘話があったんですね。現在、商品作りでこだわっているところはありますか?
弊社が創業時から大切にしているミッション「おいしいものにこだわりたい」に集約されておりまして、食品である以上、値段や見た目を差し置いて優先すべきは「おいしくて安心・安全であること」です。食べ物というのは素材以上の味が出ないものですから、おいしい素材との出会いがあって、それを作っている生産者の方のお話に自分たちが共感できて、そこでようやく商品作りが始まります。
弊社の工場は「工場」と呼んでいますが、一般的にイメージされる、オートメーションで流れていく工場ではありません。小さな設備で職人が、ひと鍋ひと鍋手作業で煮込んで瓶に詰めています。私たちはそれを「手作り」と呼んでいます。
よい素材から職人がひとつひとつ手作りした旬のおいしさを伝える、それが私どものこだわりになります。
セゾンファクトリー(旬の工場)という社名にもその思いは込められています。
素材をそのまま手作りで加工する、だからこそおいしくて安全な商品になるということなんですね。
今年の山形は夏に豪雨災害がありましたが、素材となる作物への影響は大丈夫でしたか?
夏は日照量が足りなくて、自社農園で作っているバジルの葉付きがよくなかったり、作物の病気が出てしまったりということがありました。農家さんによると、ぶどうにも影響があったらしいです。黒系のぶどうというのは、日照量と寒暖差によって一気に色づき始めるんですが、日照量が少なく秋口は暖かかったので、今年は色づきが悪いというお話でした。
そういった場合、出荷量や販売価格も変わるんですか?
素材の状況は年ごとに変わるので、弊社の商品はその年の素材に合わせて、毎年レシピの微調整や原価の見直しを行っています。いつも買ってくださるお客さまのために、なるべく売価には影響を出さない商品設計を開発部は心がけているようです。
作物量に関してはどうにもならないので、今年のバジルを使った商品は例年より早めに終了しました。作物の出来がよくなかった年は、無理に出さずに販売を断念する場合もあります。
まさに「おいしいものにこだわりたい」からこその判断ですね。
コロナ禍でも伸びたネットショップ
先ほど、さまざまな販路をご紹介いただきましたが、直営店と卸とネットショップで売上の割合はどのような感じですか?
直営店4.5、卸が4.5、Eコマースを含めた通信販売が1という割合でしたが、コロナ禍で変わりました。緊急事態宣言中の4月、5月は全店舗休業という形をとらせていただいた兼ね合いや、いまだ百貨店にお客さまが戻りきっていない現状もあり、現在は直営店が3、卸が:5.5、通信販売が1.5となっています。
ネットショップはコロナウイルスの影響で注文数が増えたんですね。
そうですね。緊急事態宣言中の5月は、1.6倍強ぐらい伸びました。その後も順調に客数、売上ともに伸びています。もともと弊社のネットショップはギフト需要が非常に多かったのですが、5月は外出できなかったお客さまがご自宅用に購入していただく機会が増えたようです。
オンラインモールにも出店されていますが、自社のネットショップと比べて違いはありますか?
一番の違いは集客面です。自社のネットショップは「セゾンファクトリー」で検索して来られる指名買いのお客さまが最も多いです。オンラインモールは、お中元やお歳暮などを探しに来たお客さまがモール内の広告を経由して来られます。
オンラインモールは顧客IDを自社で保持することができないという側面がありますので、ライフタイムバリューを考えると伸びて欲しいのは自社のネットショップの方になります。
ネットショップでこだわっているポイントはありますか?
ネットショップならではのサービスや付加価値を生んでいきたいと思っています。
弊社が創業時から商品作りにおいて大切にしているミッションに「おいしいものにこだわりたい」というものがありますので、ネットショップでもそれを表現するようにしています。
2009年からカラーミーショップを利用いただいていますが、当時、お選びいただいた理由はご存知ですか?
検討したなかで、カラーミーショップさんの月額料金の安さが一番の魅力だったようです。
11年間、途中でプラン変更もされながら使っていただいてますが、長くご利用いただけたのはなぜでしょうか?
弊社の商品は素材にこだわる分、利幅が大きい商材ではないので、従量課金であったり利用料金の高いサービスではコストを吸収しきれないというのが現状です。カラーミーショップさんは安いだけでなく、時代に合わせて常に仕様をアップデートされているので使い勝手もいいです。
ショッピングカートの部分で言うと、弊社のネットショップはギフト需要が多いので、熨斗やギフト包装に関する細かい設定を完璧にできるASPサービスはないんです。かと言って、オープンソース型のサービスを使って1から作るようなコストはかけられないので、その兼ね合いを考えるとカラーミーショップさんがベストだと感じています。
ありがとうございます。ネットショップの注文は、多いときでどのぐらい入りますか?
お歳暮シーズンなどの繁忙期は、休み明けに数百件入っているということがあります。繁忙期は1日平均、5〜600件、多いときで7〜800件を週のなかの5日間で出荷しています。
繁忙期はかなり大変なんですね。ギフト需要が多いにも関わらずコロナ禍で自宅用の購入が増えたのも、贈られた方が食べてみておいしかったというのもあるんでしょうね。
そうですね。贈り物がきっかけでリピートしていただけるというのが何よりも嬉しいですね。
ギャップを狙ったSNS運用
InstagramやFacebookなど、SNSはどのように使い分けて運用されていますか?
FacebookのフォロワーはInstagramに比べて年齢層が高く、40代や50代、そして男性も多い印象です。読み物系のコンテンツが好まれる傾向にあるので、素材に対する考え方や会社のあり方など、企業から発するメッセージを重点的に投稿しています。オウンドメディアのダイジェスト版の記事を投稿して、動線になるような運用もしています。
Instagramはハッシュタグ経由よりも、人から人に伝わらないと見てもらえない直感的な媒体ですので、シェアや保存がしたくなる目を引くコンテンツ作りに努めています。企業の宣伝をするというより、「セゾンファクトリーのある暮らし」をお届けしていますね。
Instagramでは商品を使ったレシピ動画も公開されていますが、これはどのように作られているんですか?
2年前に料理動画のコンテンツを作っている県内の企業さんと知り合いまして、その辺からInstagramの運用がガラッと変わりました。こちらが伝えた商品の使い方を元に何パターンかレシピを提案してもらって、動画に落とし込んでいただく流れが多いです。
なるほど、戦略的にSNSを使い分けているんですね。
先ほど、お話に出てきたオウンドメディアもお写真がきれいで読み応えがありました。こちらは社員の方が運営されているんですか?
私のチームにSNSとオウンドメディアを担当している社員がおります。毎月企画を立てて、どういう形で書いていくかを提案してもらって私の方で確認しています。こちらも企業色を出すより、社員の個性を出した親しみやすい記事作りにしています。
社員のみなさんが登場する芋煮会の記事がとても楽しかったです。仲の良さが伝わってきました。
イベントをしたり町の野球大会に出たりと、仲の良い本当に田舎の会社です。
お客さまは直営店で黄色と黒のカチッとした看板を見ていらっしゃるので、ちょっと洗練された会社のように思われるんですが、実は田舎で和気あいあいと実直にものづくりをしています。それをいい意味でギャップとしてお客さまに知っていただきたいんです。オウンドメディアはそういったところをコンセプトとして運営しています。
なるほど、狙い通りの印象を受けました! 本当に工場は自然豊かな場所にあるんですね。
はい。工場の周りは山で松茸がすごく採れるんです。目の前を走っている道路には「ぶどうまつたけライン」という名前がついています。
おいしそうな名前の道路です(笑)。会社の逆側は全部山に囲まれているんですね。
そうなんです。お客さまがいらっしゃると、このロケーションにみなさん感動されます。目の前が松茸山で、秋ごろは勝手に持って行かれないように警察が見回っています。
最近は毎日イノシシが出てて、出勤時に車を壊された社員がいたり、駐車場にカモシカが遊びに来ていることもあります。
なんだか、平和というか、逆に平和じゃないというか(笑)。
空気もお水もいい工場で作られているんだなというのがこのロケーションからわかります。
みなさまランチはどこに行かれているんですか?
近くに何もないので、福利厚生の社員食堂があります。
なるほど、それはいいですね。
創業社長がよく言っていたんですけど、5、6人で会社を始めたときはお金がなくてご飯をお腹いっぱい食べることができなかったらしいです。プレハブの工場を建てたときもご飯を食べるスペースがなくて、みんなで階段に座って食べたそうで「いつか会社がうまくいくようになったら、とにかく腹いっぱい食おう!」を合言葉にやってきたとのことでした。そういったことがあって、新しい社屋を作ったときに社員食堂は絶対になくちゃだめだということで、会社の中に広く確保されています。
ちなみに、社員食堂で御社の商品は食べられるんですか?
ドレッシングなどの調味料は基本的に冷蔵庫に入っていて食べ放題です。
なんとも羨ましい環境です。
今後の展望について
今後のネットショップの展開や展望を教えてください。
コロナ禍という特殊な状況下で、Eコマースにみなさん力を入れていらっしゃるので、より競争は激しくなっていくと思っています。今年は後半にカラーミーショップのスマートフォンページを全面リニューアルしました。今まではパソコンからのアクセスを主軸に考えがちでしたが、7割、8割はスマホからのログインになってきていますので、アプリのような操作感のサイトにガラッと変えました。結果、アクセス数も好調で転換率もよくなったので、お客さまの使い勝手が上がったのかなと思います。
また、弊社はお中元・お歳暮といった贈り物にお使いいただくことが非常に多かったのですが、マーケットとしてどんどん小さくなっているのかなと感じています。そういった中で、今年から力を入れているのは母の日などの贈り物に商品をアジャストしていくことです。今後は、よりパーソナルなお客さまの贈り物のお役に立てればと思っています。
商品で言うと「内食」に向けたものを展開していく予定です。弊社の商品はパンがあってのジャムであったり、サラダがあってのドレッシングであったり、副材なんですよね。今年は試験的にパスタの生麺とソースのセットを販売しました。また、本社工場は米沢市に隣接していますので、冬のギフトとして米沢牛とすき焼きの割り下のセットを特別に販売しています。そういった内食に使っていただけるギフトをより強化していきたいと考えています。
さらに、定期購入もアップグレードしました。毎月1日に2種類のジャムとドレッシングを12か月間発売していくという商品計画に合わせて、12か月間の定期購入パッケージを用意しました。定期購入を通してお客さまと2回、3回と繋がれるような仕組み作りをしていきたいです。
そして、一番の展望は店舗のお客さまのIDと通信販売のお客さまのIDを紐付けて、お客さまのライフタイムバリューを可視化できるシステムを作りたいですね。
定期購入やパーソナライズ化された商品の提案で、さらなるネットショップの成長が期待できますね!