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コピーとデザインは企画段階から表裏一体。アイデア文具を生みだす『ハイモジモジ』の商いのヒント

いつも画面越しに見ているオンラインショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
東京・吉祥寺を拠点に活動している、夫婦ふたりによるデザインユニット『株式会社ハイモジモジ』。今回は、代表取締役でありライターの松岡厚志さん(@513MHz)と奥さまであるグラフィックデザイナーの松田綾子さんに、開業の経緯や経営・商品開発にまつわるお話を伺いました。

何をするか決める前に生まれた会社

変わったユニット名の由来は、一体……?

松岡さん
何年も前に、彼女と冗談で「この先、仕事の電話口で何千回も『もしもし』って挨拶するなら、それと会社名が一緒になっていたら効率的だよね」と話をしていたんです。そんな冗談から生まれた会社名が『ハイモジモジ』なので「はい↓もしもし↓」と同じイントネーションで呼んでください。(笑)

では『ハイ↓モジモジ↓』として活動を始めたきっかけを教えてください。

もともと僕はフリーのライターをしていたんですが、2009年ごろリーマンショックの影響で仕事がガクンと減って、気持ち的にかなり参ってしまったんです。そんなとき彼女が「今こそ起業してハイモジモジをやってみたら?」と提案してくれたので、何をするかまったく決めていない状態だったんですけど、会社をつくってみたのがきっかけです。

ライターで商品のプロデュースを担当されている松岡厚志さん

最初に何をするかは、決めてなかったんですか。

松岡さん
はい。ライターだったので文字に関するアイデアは生まれたものの、なかなかカタチにならなくて。そんなとき、たまたま彼女が趣味でつくった腕に巻く付箋をデザインフェスタで販売したら、すごく好評だったんです。「これもギリギリ文字を書く雑貨だし、ハイモジモジの第一弾商品として売ってみよう!」と『LIST-IT(リストイット)』という名前で販売したのが、小さな文具メーカーとしてやっていくきっかけでした。

結果『LIST-IT』は、累計100万本突破する大人気商品に。

松岡さん
会社をつくった当初、彼女は企業で販促ツールのデザイナーをしていたんですけど、半年後には「こっちのほうがおもしろそうだから」とあっさり辞めて、ふたりでハイモジモジとしてやっていくことになったんです。

オンラインショップはプレゼンの場

文具の通販はいつ始めたんですか?

松岡さん
通販は、創業時の8年前からやっています。素人のような状態で、いきなり文具の卸しと通販を始めたんですけど、運良く最初に置いてもらったのがLOFTさんだったんです。いきなり雑貨界の頂点とご縁があったものですから、しばらくは卸売に注力していました。

思い切って通販をやめてしまってもよかったのでは?

松岡さん
やっぱり僕たちとお客さんの間に販売店が入ると、伝言ゲームになってしまって、伝えたいことの熱がどんどん薄れていくのを感じたんです。そもそも僕たちはものづくりするうえで「Kneepon」という言葉を大切にしていたので、この状況は非常にむずがゆくて。

ニーポンですか?

松岡さん
僕たちがつくった造語なんですけど、「ニーポン」つまり、膝を打つようなオチのあるものづくりを心がけることです。たとえばキーボードに立てる伝言メモの『Deng On(デングオン)』は、目立つだけじゃなくてメモを外さないと仕事を再開できないから伝言が確実に伝わる効果があったり、キーのすき間に差し込む部分にも隠しメッセージを忍ばせることができたり。そういう膝を打つようなアイデアが潜んでいるんです。

『Deng On』は2012年のグッドデザイン賞を受賞

なるほど、たしかに「ニーポン」なアイテムです。

松岡さん
そうそう。こうやってプレゼンしたら伝わるんですけど、店頭に置かれているだけだと、どんなものかよくわからないんですよ。もちろん今でもLOFTさんに商品を置いてもらっていますし、軽視するつもりは、まったくありません。でもそれとは別に、自分たちの言葉できちんと説明して売る場所の必要性を感じて、それで通販にも注力することにしたんです。

飼い猫の「ニーポン」(愛称はポンちゃん)

Twitterを使った販促コミュニケーション

通販は上手くいっていますか?

松岡さん
なかなか大変ですけど、最近ですと『WORKERS’BOX(ワーカーズボックス)』は上手くいきましたね。

整理整頓が苦手な人でも、仕事の案件ごとにざっくり書類整理できる魔法の箱『WORKERS’BOX』

この商品は、どんなふうにして売れたんですか?

松岡さん
Twitterのタイムラインで、ゆるい4コママンガがバズっているのを見て「このやりかたで商品を説明したらたくさんの人が興味をもってくれるかもしれない」と思ったんです。そこで『WORKERS’BOX』を発売するタイミングで、試しにマンガを投稿してみたら思わぬ数の反響をいただいて。

松岡さん
彼女にマンガを描いてもらって、ツイートして……ね?

 

松田さん
……。
松岡さん
……。
松田さん
ごめん、全然聞いてなかった。(笑)
松岡さん
……話、聞いてて。(笑)
松田さん
いや〜、今日はなんか絶好調だなぁって。よく喋るんだもん、入る隙がないよ。

いいコンビですね。

松田さん
いつもこんなかんじです。(笑)

グラフィックデザイナーで商品のデザインを担当されている松田綾子さん

松岡さん
えーっと、話を戻して。せっかくマンガを描いてもらったのに、実は初日は0リツイートだったんですよ。親近感を覚えてもらいたいから、あえて手を抜いてマンガを描いてもらったんですけど、反響が全然なかったので「ほらみろ〜」と言われてたんです。(笑)

2日目以降、Twitterで一気に人気が広まり『WORKERS’BOX』は、生産が追いつかないほど売れる結果に。

松田さん
いや〜、戦略的にTwitterを活用しているみたいな言い方してますけど、彼、創業当時に近くの文具店3軒くらいまわって断られちゃって、心折れて帰ってきて。それで「Twitter営業じゃ〜!」って言い出したのが、今の販促活動の始まりなんです。(笑)

Twitter営業ですか。

松田さん
そうそう。Twitterで商品の情報をひたすら発信していたら、たまたま問屋さんがTwitterで声をかけてくれて。そんなかんじで、インターネットだけで上手くいっちゃったもんだから、もうずっとこのやりかた。最近はふつうの営業活動はしてないよね。
松岡さん
まあ、そういうバリバリの営業的な使い方ばかりではなくて、Twitterはお客さんの声を見たり『WORKERS’BOX』の組み立てが難しいというツイートを見かけたら直接つくりかたを教えたり、カジュアルなコミュニケーションツールとしても活用しています。

企画段階で「売り文句」を考える

商品をつくるとき気をつけていることはありますか。

松田さん
そうですねー、商品がどんなにいいものかテキストで説明しても、それだけで振り向いてもらうのはむずかしいと思うんです。私もネットで何かを買うとき、まずは画像検索して気になったものを覗きにいく。だから、まずはたくさんあるものの中で埋もれないようにするために、見た目のしかけをつくることが大切だと思うんです。

見た目のしかけ、ですか。

松田さん
そう。たとえばこの名刺ケースみたいに、胸ポケットに入れやすいT型にしてみたり。デザインをかっこよく見せるためというよりも、手に取りたくなるきっかけをつくるようなかんじ。

松田さん
だからといって見た目のユニークさだけを追求してもダメで、商品を企画するときは、最初に彼がコピーを考えるんですよね。商品を売るとき、どんなキャッチコピーをつけてTwitterで告知するか、商品をつくる時点で逆算するからお客さんが手に取って、使うところまで想像がつく。だからコピーをつけてみて、商品が広がっていくイメージができないなーというものは、デザインから見直すようにしています。

お客さんが手に取って実際に使うところまでイメージして、商品をデザインしているんですね。

松岡さん
あー。たしかに、商品の強みをキャッチコピーにまとめてみて、上手くまとまりきらなかったら商品として弱いというか。そういうやりかたで売れる・売れないを判断しているところはあります。

松岡さん
そもそも新しいものをつくるとき、僕たちの場合は「自分たちの生活の延長で欲しいものをつくるぞ!」という気持ちしかなくて、それが既に世の中にあるのなら仕方ないけど、ないならつくろうって考え方なんです。だから言葉で魅力が伝えきれないときは、そもそも動機が弱いんですよね。

使い方を具体的に想像できるコピーは、写真がなくても商品への興味をそそる。

松岡さん
たとえば、世の中には収納が得意な人のグッズはいっぱいあるんですけど、僕も彼女も、片づけが得意じゃない。そんな僕たちみたいに苦手な人たちだからこそ使えるものって、意外と世の中に必要とされるんじゃないかな?と思ってつくったのが『WORKERS’BOX』だったんです。こんなかんじで自分たちの解決したい課題をもとに、自分たちでデザインして、自分たちの言葉で説明して販売するからこそ、結果的に売れるのかなって思います。

1回で終わらない「関係性」をつくる

体験に基づくデザインやコピーライティングの大切さはよくわかりました。価格設定は、どのように考えていますか?

松田さん
世の中に質のいいものはたくさんあると思うんですけど、価格に満足してもらわないと1回購入するだけで終わっちゃうかなと思います。
松岡さん
うんうん。昔『ほぼ日』の塾に通っていたとき、糸井重里さんから「お客さんとの信頼関係をつくらなくちゃいけない」と言われて。1回の購入で売買は成り立つけど、同じ人から同じものを買いたいと思ってもらえるような「1回で終わらない関係性」をつくらなくちゃ商いは成り立たない。本当にそのとおりだなと思っています。売り買いは始まりにしかすぎなくて、そこから「関係性」をつくるためには、機能に見合った価格設定が大切かなと。

松岡さん
でもただ単純に「安ければいい」というわけではなくて、1点を高くして売る方法もあると思うんです。その点『WORKERS’BOX』は冊数をたくさん使うことで便利さに気づいてもらえる特性があったので、あえて大量に購入しやすいよう1冊399円に設定しました。

たくさん、ですか。

松田さん
そうそう。仕事の案件ごとに書類をまとめられるのが便利なアイテムなので、冊数をたくさん使うことで初めて機能を実感できると思ったんです。だから「この箱を使うのがもったいない!」みたいな価格になると本末転倒というか、価格がネックになって機能が活きないじゃないですか。

商品の機能が狙いどおりはたらくように、まとめて買いやすい低価格に設定したんですね。

松岡さん
そうですね。実際にたくさん使ってもらって便利さを感じてもらえたら、また買ってもらえると確信していたので。

リピーターをつくるためには、価格も含めた機能設計が大切ですね。

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これからやってみたいことありますか?

松岡さん
なんだろう。僕はアウトドアグッズの企画かな。最近、キャンプが気になってるんですよね。うーん、そのほかだと……唐揚げかな。

えっ。

松岡さん
家の前の通り、けっこう中高生が通るんですよ。こないだうまくつくれたもんだから、お腹を空かせた中高生に売れるんじゃないかって話してたんです。
松田さん
そうそう。キャンプで使う鉄鍋を使ってみたら、めちゃくちゃカリカリになったんですよ。揚げかたとか衣は同じなのに、その鉄鍋を使うだけで、おいしいんです。「これはすごい!売れるんじゃない?!」とか話して。(笑)

真に受けちゃって、いいですか?(笑)

松岡さん
ハイモジモジも冗談みたいに始まったからなんとも言えないですけど、たぶんこれは確度の低い夢です。(笑)
松田さん
確度の高いところだと、わたしは収納家具をつくってみたいな。
松岡さん
また全然違うもの出してきたな。
松田さん
紙は好きなんですけど、収納という切り口なら半永久的に使えるようなもので作ってもいいんじゃないかなと思っていて。『WORKERS’BOX』を収納する家具とか子どもの成長に合わせて変化する収納家具とか。その領域に自分たちの欲しいものがないから、その分野もつくっていければと思っています。

会社として大きくしていきたい気持ちはありますか?

松岡さん
彼女の動き的にプレイヤーかなと思うので、会社を大きくして彼女のポジションが上にいくような組織は違うかなと思ってます。
松田さん
たしかに大きくしたい気持ちはないんですけど、商品の企画とか、今は強気な方が勝つみたいになってるので、彼とわたしの意見を聞いて、冷静に判断できる人がもう1人いたらいいなとは思います。(笑)
松岡さん
かわいそうじゃん、その人。新しく入っていきなり板挟み。(笑)
松田さん
まあ自分たちのできないことをできる人が、入ってくれたらうれしいよね。
松岡さん
新入社員ていうよりも、新入師匠みたいな人ね。(笑)

今日は、おもしろい話をありがとうございました。

今回ご紹介したショップ
ハイモジモジ
紙もの雑貨をはじめ、アイデア文具を生み出すデザインユニット。
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