精米から自分たちの手でやってます

蔵の見学にあたって、日本酒のつくりかたをざっくり説明しますと…まずお米を磨いて、蒸します。

日本酒の製造工程
蒸したお米から酒のもとになる原料をつくって、それに水を加えて発酵させます。そうしてできたもろみを絞ってお酒と酒粕に分けて、火を入れて貯蔵して、瓶詰めしたら日本酒の完成です。

ふむふむ。お米を磨いて、蒸して、発酵させて、絞る。

で、まずここがお米を磨く精米所になります。ここで酒米をふだん食べているお米の4倍くらいの白さに磨きあげます。
自分の目で確かめたいという杜氏の想いもあってうちでは自家精米をしています。日本酒蔵で自家精米しているのは千葉県内でも2蔵しかないんですよ。

へ〜〜〜!

こちらが旧酒蔵です。

昭和32年につくられた蔵

か、かっこいい…!

もともとはこの蔵で酒造りをしていたんですけど、現在はコンピューターや機械設備のある、こちらの蔵で製造しています。

平成5年につくられた3階建ての建物

ではご案内します。

いざ潜入!
巨大な木樽や蔵人さんたちが待ち構えていると思いきや…

おお〜博物館みたい…!

立派な入り口ですね。

近年は観光蔵にシフトしようという動きがあって、手厚くおもてなしすることを強化しています。

ふだんの見学は有料とお伺いしました。

お金を払ってでも蔵を見たいという方のために、蔵人がきちんと説明しているんです。では2階からご案内します。

まず水に浸けて水分を吸わせたお米をこの機械で蒸していきます。

お米を蒸すのは機械作業なんですね。

昔はそれこそ朝4時とか5時に手作業でやっていたんですけど、今は機械でやっています。

で、ここで蒸したお米は3つの用途に使います。ひとつは「酒母」と呼ばれるお酒のもと。
ふたつめが「麹」、みっつめが「掛米」。この3つと仕込み水を発酵させてお酒をつくっていきます。

たくさん蔵人さんがいらっしゃるのかと思いきやほとんど見当たらない。

蔵人さんは今どれくらいいるんですか?

6人です。

こんなに広いのに6人だけ…!

もちろん手作業でやる工程もあります。

こちらが麹をつくる麹室(こうじむろ)です。蒸したお米に手作業で麹菌を植えつけて増殖させます。
全ての作業を機械でやっているわけではなくて、吟醸酒のような品評会にだすような酒も小さなタンクで手をかけて仕込みます。
巨大タンクと管制室のような温度管理機

小仕込みしているタンクをお見せしますね。

これが小仕込みをしているタンク

仕込みってどんな作業なんですか?

蔵人の御子神一葉さん

タンクで蒸した米と麹と仕込水を少しずつ増やしながら3回に分けて糖化と発酵をすすめていきます。

分けてやるのはなぜでしょう?

1度にいれると殺しあって発酵がすすまなくなるんです。

へ〜。

これは1回目の小仕込みが終わった状態です。このあとに蒸米と麹をいれます。これでだいたい600kgあるかな。

「小仕込み」といってもかなりの量なんですね。

で、こちらが通常の仕込みをするための大型タンクです。

これがタンクのフタ

ここから覗いてみてください。

めちゃくちゃ深いんですね…。

2、3mあります。

タンクを下から見るとこんなかんじ

このタンクでどれくらい日本酒をつくれるんですか?

一升瓶1万7000本分、一生飲みきれない量ができます。(笑)

このタンクは業界でも大きいほうなんですか?

いや、これはふつうです。もっと大きなタンクを持っている酒蔵さんもたくさんあります。ちなみにこっちが今年の仕込み第1号です。10月に絞って、製品になるのは11月。

ふつふつ動いていますね。

無理にかきまぜず、微生物の動きにまかせることで香りがよくなるんです。

ほーー。

で、今見ていただいたタンクの温度管理はこちらでやっています。

決まった時間ごとに温度をチェックして制御しています。

管制室みたいだ。

シンゴジラみたい。

ここまでの工程を全て人力でやるとなると4倍以上の時間がかかるんです。それを少ない人数で安定した品質でつくれるのは、こういった機械のおかげでもあります。

では1階へ戻ります。
絞って火入れして貯蔵したら、あとは瓶詰め

仕込みが終わったら、圧搾機(あっさくき)でもろみを絞って、お酒と酒粕に分けます。

あっさくき…初めて耳にしました。

絞りかたにもいろいろあって、うちでは薮田式と佐瀬式を使っています。佐瀬式の圧搾機は酒袋にいれたもろみをならべて、上からプレスしてお酒を絞るものです。

佐瀬式の圧搾機
対して薮田式は袋にもろみをいれてそれを両側から横にプレスして絞るものです。
で絞ったお酒を濾過したら、殺菌して酵母の働きをとめるために火入れをします。

火入れ。熱燗みたいにするのかな…?

火入れをするための機械

お湯につけるやりかたもあるんですけど、うちでは高温の板の間にお酒を流すことで火を入れています。

ちなみに瓶詰めするまでに2回火入れするのが通常の工程なんですけど、1回火入れして貯蔵したものをそのまま瓶詰めするのを「生詰め」、火入れせず瓶詰めするのを「生貯蔵酒」といいます。あとはタンクに貯蔵して、調合して瓶詰めしたら完成となります。
時代にあった日本酒づくりへの挑戦

大きな木樽を前に、大勢の蔵人さんたちが汗を流してつくってるイメージだったので今日見た風景にとにかく驚きです。

昔は出稼ぎで新潟あたりから蔵人さんがきたり、つくり手もたくさんいたんですけど、今は消費量も減ってつくり手も高齢化して、昔とは全く状況が異なるんですね。
いま飯沼本家が掲げているのは「ヒストリー以上に、フューチャーを語り、創造していく」こと。ご先祖さまが造ってきた酒を、現代も同じように造っているだけじゃ、だめだと思うんです。時代の先をいく酒を育てていくためにも、日本酒業界にまだない革新的なシステムやビジネスをどんどん取り入れていかないといけないなと感じています。

伝統をただ引き継ぐのではなく、現代にあったかたちに変えていく。新しいものを取り入れていく。そういった姿勢、とても勉強になります。

ネットショップで売られているお酒の後ろ側に、こんな製造現場があるなんて…驚きでした。今日はありがとうございました!
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