触れたことのない「気持ちよさ」を男性たちに、もっと届けたい
メンズならではのこだわりなど、ありますか?
たとえば国産のシャツ用に折られた生地を使ったシリーズなんかは、しっかり織ってあるので、長く使ってもへたれず使い込むうちに馴染んで愛着を持てます。
シャツ生地なのでお仕事着にも合わせやすいですし、アイロンをそこまで真剣にかけなくてもきちんとカタチになります。こういったところは、男性にとって嬉しいポイントだと思います。
飽きないハンカチを素材からこだわって作られているんですね。
はい。実はTOKYO TRUNKSも同じような発想で、素材のよさが原点にあります。
TOKYO TRUNKSはどのように生まれたのですか?
今って、男性の下着ってボクサーパンツみたいなのが主流で、こういう「布帛(ふはく)」っていうシャツ生地みたいな布を使った下着はマーケット自体縮小しているんです。
たしかに。男性のパンツスタイルもだんだんとスリムになってきていて、トランクスの需要は減っていそう…。
そうなんです。シルエットを気にして、若い人だと履いたことがないって人もいると聞いて、びっくりしたんです。
気持ちよさと、トランクスを履いたときの独特の開放感があって。それを改めて伝えたいなという想いでブランドを作りました。ネックになっているのはかたちかな、と思って体型に合わせたかたちを選べるように提案しています。
なるほど。SOC TOKYOも同じような背景があるんでしょうか。
はい。ハンカチだと「綿100%」って表記するんですけど、実は、靴下の組成表示って中に何がどれだけ使われているかってほとんど書かなくていいんですね。
それは知らなかったです!
極端な話、ポリエステル・綿とか書いてあっても、ポリエステルが90%で10%しか綿が入ってないとかあるんですよ。
見た目だけじゃ、それは分からないですね。
そうそう。工場の人の話を聞くと、仕入れるほうは値段を抑えることを要求するため、工場は化学繊維をたくさん使わざる得ない。でも、そうなるとどんどん履きここちは悪くなってしまうと嘆かれているんです。
でもね、僕も自分で履いてみてびっくりするんですけど、綿100%なんかだともう靴下じゃなくて違うものを身に付けたかのような感覚なんですよ。そしたら、みなさんに履いてもらいたくなるじゃないですか。これもまた、そういった気持ちよさを伝えたくて、はじめたブランドなんです。
履いてみたくなります…!
あとは、ハンカチもトランクスも靴下も、そんなに目につくものではないんですけど、自分なりの遊び心を持って楽しんでほしいっていう気持ちで提案しています。だからデザインもできるだけおしゃれで楽しいものにしています。
ガーゼハンカチの縫製を工場へお願いしたら断られてしまった。その理由は…
ブランド名から「TOKYO」へのこだわりも感じますが何か理由があるんでしょうか。
国産のもので、なおかつ東京でデザインまでこだわりぬいたファッションとして成り立つブランドは少ないなぁと思っていて。東京から世界へ日本のものづくりを提案していきたいという想いで付けてます。
作り手さんのもとへは実際足を運んだりされるんですか。
もちろん足を運びます。でもその度に、作り手と買い手は大きな意識の隔たりがあるなって感じるんです。
どういうとき感じるんですか。
この前もハンカチを作っている工場の方と話してて、たしかにそうだなと思ったんですが。ハンカチ1枚縫うにしても、工場の人っていうのは、どうきれいに縫うか?どうしたらもっと気持ちよくなるか?っていうのを、本当に真剣に考えてくださっているんです。
使い手からは、なかなか想像がつかないですね。
そうですよね。たとえばうちのハンカチはいくつかの工場で作っているんですけど、作り手さんたちは、ここにあるハンカチを手に取ったら、自分のところで縫ったか違うところで縫ったか一目でわかるんですね。
すごい。
糸の太さとか細かいところまで、彼らは一生懸命考えながら作っているんですよ。だから世の中に出回っている他のハンカチを見ると、もうちょっときれいに縫ってあげたほうがいいのにな…とかいろんなことを思ったりしちゃうんです。
作り手さんとの印象深いエピソード、何かありますか?
そうですね、このガーゼハンカチ。今やってもらってる工場の方たちは、なかなか縫ってくれなかったんですよ。
何がダメだったんですか?
生地が厚くて、どうやって縫ってもきれいに縫えなかったんですね。だから「もうこの生地もう送らないでください、きれいに縫えないから作れてもこのハンカチは気持ちよくないです」って言われて。
縫えないのがダメなのではなく、気持ちよいものができないから断られたんですね。
そう。でも、僕たちもすごく想いがあったから「じゃあきれいに、気持ちよく使ってもらえるように縫えるまで、がんばりましょう。僕たちもできることをやります」って何度も何度もやりとりして、今は縫っていただけるようになったんです。
作り手と売り手、お互いがしっかり理解しあって、やっと生まれたハンカチなんですね。
そう。作り手さんからすると当たり前のように一生懸命やってるんですけど、買い手にはそこまであまり伝わってないはずなんです。それを伝えるのが売り手の、僕たちの使命だと思ってます。
売り手として、伝えるために工夫されていることは何かありますか?
工場を見に行って、まずきちんとコミュニケーションをして、どういうふうに作っているのか生産背景とか、想いをきちんと知るようにしています。最近はそれをインタビューとしてブログで紹介させていただいて、買い手に伝える活動をしています。
なるほど。
あとは、お渡しする時にこんなかんじで…
店頭でお買い上げされた方には、1枚1枚アイロンをかけてお渡ししてるんです。ホカホカの温かみというか。作り手さんが想いを込めて作ったものだから、最後のお渡しするところまでていねいにやりたいなあと。
ホカホカでもらえたら、とってもうれしいです。このバッジもハンカチの生地ですか?
はい。やっぱり生地をつくっている背景を見ちゃうと、生地がもったいなくて、もったいなくて。
日本のハンカチが持つ「スタイル」を世界へ届けたい
作り手さんの想いが、お店のいろんなところにあふれているんですね…。
あと、うちわのブランドもあるんですが、これも他のブランドと同じように「既にあるものを見直す」という想いがあって。
といいますと?
百貨店に置いているのって、ほとんど扇子じゃないですか。でもうちわって、自分をあおぐだけじゃなくて人にもあおいであげられるし、ちょっとしたコミュニケーションツールかなと思うんです。
そういうふうに「使い方」をとらえなおして、再提案しているんですね。
はい。作っているのは千葉の房州うちわなんですけど、布の部分はハンカチの生地なんです。そこの作り手さんたちの技術とか想いを、新しいかたちで伝えたいなあと。
海外の方に向けて今後こうしていきたいというのはありますか?
ハンカチなんかは海外から入ってきたものなんですけど、逆に今は海外であまり使われなくなってしまっているんです。
知らなかったです!
世界で一番ハンカチマーケットが大きいのは日本なんです。日本は昔から手ぬぐいを使っていたり、着物なんかもそうですけど、一枚の布をいろいろな形に転用していくのが非常に上手な文化をもっていますよね。
たしかに。
手を洗ったあと、汗をかいたときだけじゃなくて、日本人ならではのコミュニケーションツールなんです。何か食べるときに下にひいたり、女性だったら膝にかけたり、誰かが泣いていたらそっと差し出すとか。そういういろんな日常の所作に寄り添う、すてきなアイテムなんです。
ものづくりをすごくていねいにやってきている日本だからこそ、今度は、ものづくりから生まれる「スタイル」みたいなものを、海外へ逆に発信できたらいいなと思っています。
それでは最後に、今年なにかチャレンジしたいことなどありますか。
swimmieのショップが、3月に銀座にオープンするので、そこでブランドの世界観をきちんと伝えていきたいなと思っています。あとは今年じゃないのですが、いつかパジャマのブランドも作ってみたいなぁなんて考えています。
H TOKYOさんの今後の展開が、とっても楽しみです。今日は本当にありがとうございました。
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