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商品の魅力やショップの想いを伝えたい!動画の作り方をYouTubeクリエイター ギュイーントクガワさんに聞いてみた。

近年「動画」に注目があつまっています。ネットショップの商品ページに掲載をしたり、インスタライブやTikTokを活用し商品紹介をする方も増えてきました。そこで、パナソニック・LUMIXアカデミー講師でもあり、ユーチューバーとしてもご活躍されているYouTubeクリエーター、ギュイーントクガワさんに動画の撮影方法やおすすめの機材についてお話をうかがいました。

YouTubeクリエイター ギュイーントクガワさん(徳川康隆さん)
音楽活動、デザイン事務所勤務を経て独立。2013年よりYouTubeに動画投稿を開始。現在はYouTubeクリエイター/ビデオグラファーとして幅広く活動中。LUMIXアカデミー講師。
2020年5月 YouTube動画作りのバイブル「もっとええのん追求りたい!ギュイーン流YouTubeの遊び方」(玄光社)発売。音楽機材やカメラのレビューのYouTubeチャンネル「gyueenの動チェク!」配信中。
Twitter : @gyueen
YouTube : ギュイーントクガワ – YouTube 
notenote.com/gyueen/

ギュイーントクガワさんについて教えてください

YouTubeクリエイターになるまでの経緯をおしえてください


YouTubeクリエイターになる前は、バンド活動をしていました。
バンド活動では音楽以外に、フライヤーやWebサイトを作ったりもするんです。音楽だけでは食べていけなくなったときに、デザイン事務所に就職して、紙媒体のデザイナーとして働き始めました。その経験を活かしてクリエイターとして独立しました。

紙媒体の仕事が徐々に減ってきたころにユーチューバーという存在が現れたことがきっかけでYouTubeでの動画配信をはじめました。視聴者の反応を見ていると、紙媒体よりも何倍も効果がありそうだと感じて、クライアントにも動画制作を提案しようと思い立ったんですね。

本格的な動画撮影は未経験でしたが、創始者ともいえるユーチューバーたちの動画やブログ記事を参考にカメラや必要な機材を買い集め、デザインの知識を取り入れながら独学で動画を撮りはじめました。音楽とデザインを掛け合わせたら動画の仕事に辿り着いたという感じです。

今のメインの仕事はYouTubeクリエイターでこれを軸に、ギュイーントクガワという人物をYouTube で知ってくださった視聴者さんから「お店のPR動画を撮ってください」といったオファーをいただいて、お仕事を引き受けることもあります。

羊毛フェルト作家Sachiさんの制作過程を撮影された「Wakuneco.」のディレクターとしても有名ですが、撮影でこだわったポイントなどを教えてください。

SachiさんはYahoo!オークションでモデル猫を募集して、落札した依頼主さんのために猫の肖像画を羊毛フェルトで作るんですね。入札者は、愛猫が天国に行ってしまい、もう一度会いたいという想いから依頼される方が多いようです。

そのような依頼主さんの想いとSachiさんご自身の制作欲を満たすために真摯に作品に向き合っている方で、YouTubeでバズらせようとか、流行らせようとか、お金儲けをしようとかなどの考えは一切ないんです。なので、動画も広告のような設計にはせず、基本的には作家さんの想いを汲んでそのままを伝えることを大切にしました。

何度も動画を観させていただいたのですが、羊毛をザクザクと刺す音や鉛筆が転がる音など、作業中の音がとても印象的でした。BGMも素敵ですが、動画に乗せる音楽はどのように決めているのですか?

こういう感じにしてほしいというご要望を受けて決めています。Sachiさんの動画は本人の希望もあってピアノ曲で、しっとりしたアンビエント(環境音楽)が多いですね。

動画がもたらす効果とは?ネットショップならどんな動画がおすすめ?

近年TikTokやInstagramのストーリーズをはじめ、 “動画”の需要が増えていると感じているのですが、YouTubeクリエイターとして、動画はどのような効果があるとおもいますか?

そうですね。動画を手軽に共有できるツールも増えましたよね。動画はほかのどのメディアよりも、記録して伝える能力や残していく能力が高いと思います。だからよく伝わる。

写真も伝わりやすいですが、動画は動きがあり音も加えられるので、真実以上のものを伝えられるという効果があると考えています。

ネットショップオーナーさんが動画にチャレンジするとしたら、どんな動画がおすすめですか?

トークが得意なのであれば、カメラの前で商品について思いの丈をそのままお話する動画がおすすめです。できれば顔出しして、人柄を出したほうがいいです。「顔出ししたくない」という人が多いですが信念を持って商売をされているのであれば、自分をさらけ出して勝負したほうがいいですね。

ストーリーを語るという点では、日本人はとくに、商品の背景を大事にする傾向があるので、商品が生まれた経緯などをきちんと伝えるべきです。絵画とかも完成品を見てイマイチいいものかどうかわからなくても、絵を描いた人がどこで生まれて、幼少期にどんな経験をして、どんな想いでその絵を描いたのかを知ると、親近感が沸いたりしますよね。それと同じで商品のストーリーを伝えることは大事です。

なるほど。顔出しをするとよいとのことですが、担当者が複数人いる場合はみんなで出たほうがいいですか?それとも一人がいいですか?

一人で出たほうがいいです。もちろんチームで出てもいいのですが、会社や団体、組合のような感じに捉えられて存在が少し遠い印象になります。なので登場するのは主役一人で、PR要素をあまり見せず、視聴者の友達のような感じで出演されたほうがいいです。

「うちが作っているお菓子なんですけどね、おいしいのできたんですよ」「ちょっと聞いてください!みてください!」くらいのノリで話して、友達のように親しみやすいのにじつは社長さんというオチもあったりして、動画を通じてお客様との距離を縮めることを意識してみるといいですね。

トークが苦手な方はどういう動画を制作したらよいのでしょうか?

トークが苦手だけど見せられる商品がある場合は、その「物」自体をいかによく映すかにこだわってみることをおすすめします。例えば食品であれば、お皿の上に置いたものを撮影するだけではなくて、開封したり、切ったり、食べたりして、そのときの動きや音、シズル感を伝える。そこに、作った人の想いを音声でも、テキストでも、伝わるように乗せるとより効果的です。

制作過程・製造工程を映した動画を作る場合、気をつけるべきことはありますか?

制作過程を見せる動画は、視聴者に響きますし、商品の魅力も伝えやすいんです。ただ、撮影するには膨大な時間がかかります。自然光で撮るのであれば撮影の時間帯や天候にも気を配らなければなりませんし、撮影途中に作家さんから「納得のいく仕上がりではないのでやり直したい」といわれれば撮り直しになることもあります。なのでまず、根気が要りますね。

さらに、飽きさせない動画に仕上げることも重要です。テンポのよい動画に仕上げるためには、同じアングルで撮りっぱなしにはせずに、一つひとつの作業の初めと終わりを寄りで撮ったり、引いてみたり、アングルをコロコロ変えて撮影しておくことも必要です。編集時に「あのシーンを撮っておけばよかった」と後悔しないようにたくさんの場面を取っておくことが重要です。

セレクトショップさんの場合は、許可が下りるようであればメーカーさんの工場などに撮りに行ったほうがよいでしょうか。

そこまでこだわらなくても、商品を使っているシーンや、身につけるシーン、オプション品を取り付けるシーンなど、動きが出る部分を撮影するだけでもいいと思います。ネットショップに商品写真を複数枚載せるよりも、1カット、2カット動きのある動画を載せるだけで印象が変わります。

SNS向けの動画撮影のポイントとは?

SNSのプラットフォームはたくさんありますが、やはり動画も作り分けるべきですか?

作り分けた方がいいです。YouTubeとTikTokではプラットフォームの特性が異なります。YouTubeは横長ですが、TikTokやInstagramは縦撮りです

たしかに!

TikTokやInstagramなどの動画を撮るときは「共感」がキーワードになるのかなと思っています。TikTokやInstagramは”見た人がやってみたい、真似したいと思える動画”が効果的です。

一眼レフカメラで、背景をぼかしてセッティングされた照明の下で撮ったキレイな動画は逆に遠い存在に見えてしまうんですよね。なので、SNSに載せるショート動画は、「手軽に撮った感」があるほうが親近感もわいて良いです。

TikTokなどには手軽に撮った動画を掲載して、ネットショップやサイトなどの遷移先にちゃんと想いが伝えられる動画があると、より効果的でしょうか?

そうですね。ただ、YouTube並みのハイクオリティーな動画がどこまで求められるかは不明です。すごくコストがかかるので。それよりも、ショート動画を本数多く公開したほうが、若い世代の方たちにはズバッと刺さることもあると思います。

ギュイーンさん流、YouTube動画撮影のコツ!

動画を撮影する時、特にYouTubeなどの尺が長い動画を撮る時は、事前に構成や台本は用意した方がよいですか?

人にもよりますが、私の場合、トークが苦手なのもあって詳細なシナリオを作っています。関西人なので、トークに長けた人たちをたくさん知っているんですよね。お笑い芸人さんやテレビのバラエティに出ているタレントさんはやっぱり話の達人です。なにかを伝えるときに、ものすごく上手なたとえ話をしたり笑いを織り交ぜたりしますし、アドリブも効きます。

私にはそういうことができないので、トーク動画を作るときは、視聴者の興味を引くネタを仕込むためにしっかりとシナリオを書きます。

台本をご用意されているのですね!台本なしでお話されているのかと思っていました。

カメラの機材などを紹介する動画を、それこそはかなり時間をかけ、しっかり台本を準備しています。視聴者さんのなかには「商品のことはだいたい知っているのでニッチな情報を知りたい」という人もいます。それに答えるべく、徹底的に下調べもしますし、自分で使い込んでみてどうだったかを漏れなくお伝えしたいので準備には時間をかけます。

それこそ「はいどうも、ギュイーントクガワです」という最初の挨拶から一言一句、しゃべり文句を書いて用意しています。

そうなんですね!びっくりしました。編集前の動画はどのくらいの長さなのですか?

回にもよりますが、1時間弱くらい撮っていますね。収録ではたくさんNGを重ねていますが、編集でキレイにつないで上手に話しているように作っているんです。たぶん、傍から見たらテンションやトーンを変えて同じことを何度も言ているので「この人おかしいのかな」と思われるレベルです(笑)。1時間くらいの動画が最終的には10~15分程度の動画になります。

ご自身の納得が行くまで何度も撮り直すということですね。

そうですね。トークが上手な方への憧れがあるんです。流ちょうに話している自分のイメージが浮かんでいてそこに持っていくために何度も撮ります。

ここでカットするよりも一気にまくし立てるように話した方が絶対に伝わるだろうなとか、ここはちょっとボケた方がいいな、下ネタを入れたほうがいいなとか、そういったアドリブや演出がとっさに出てこないんです(笑)。なので、完成動画をイメージして事前にすべてを台本に書き入れています。

スマホでの上手な動画撮影方法は?

スマホをお持ちの方も多いと思いますので、ぜひ、スマホで動画を撮るときのコツをおしえていただきたいです!

動画を撮影する前提に2つの大事なことがあります。

まず1つ目が、どこに公開するかを決めることです。先ほどもお話させて頂いた通り、TikTokなら縦型で、YouTubeなら横で撮るべきですよね。あとから、縦で撮ったものを横にしたり、横で撮ったものを縦にしたりするのは難しいので、最初に撮影時の向きを決めてください。

2つ目が、一番見せたいものが映えるか、背景に見せたくないものが映っていないか、画面に映る情報を整理することが大切です。スマホが普及したことによって手軽に動画撮影ができるようになったので、動画撮影自体はみなさん慣れていると思うんですよね。

ただその日常の動画撮影の延長で、意識をしないで撮影をしてしまう方がいらっしゃいます。背景がごちゃごちゃしていると、なにを見せたいのかがわからなくなるので、画面の中に映る情報をできるだけそぎ落としてシンプルにしてください。

たしかに手軽に撮影できるからこそ意識すべきポイントですね。スマホだと夜の撮影が非常に難しい印象があるのですが、撮影するのに最適な時間帯はありますか?

夜は難しいですよね。スマホの内蔵カメラは、自然光の処理に優れているので、自然光の中で撮るとキレイに撮れます。撮影対象に明るい光をあてるのもポイントです。これらを意識して撮るだけで、仕上がりに差が出ます。

おすすめの機能はありますか?

iPhoneの「シネマティックモード」は一眼レフのように背景をぼかしたりできます。それを使うと雰囲気の良い動画が撮れるのでおすすすめです。

自分が話す動画をiPhoneで撮る場合、自撮りをすると顔がどアップになってしまうんですよね。自分を映す場合はある程度距離を取るために、三脚と高性能のマイクを用意して、固定カメラの前で撮影するのがおすすめです。

手持ちより固定したほうがいいですか?

そうですね。最近のカメラは手ぶれ補正の性能がよくなってはいるものの、やはり固定したほうが見やすい動画を作れます。よく道案内動画でスマホを持ち歩きながら撮影したものを見かけますが、正直見づらいのでおすすめしません。

動きながら撮るのは非常にハードルが高く、ジンバルという揺れを抑える機材を使って撮らないとブレて見づらい動画になります。例えばショップへの道案内動画を作るなら、動画によりスライドショーなどを用いて地図上を点が動いてナビゲートするようなマップアニメーションを作ったほうが伝わりやすいです。

動画撮影をするために揃えておきたい機材とは?

大がかりな機材を持っていないけど、動画撮影を始めたい、という方が最初に揃えておいたほうがいい機材はありますか?

マイクですね。動画では音が大事です。主役が遠くにいても声をキレイに録音することや、周りの騒音をできるだけカットして聞かせるべき音だけを聞かせることを第一に考えてください。

動画の撮影経験がある人はわかると思いますが、外で撮ると風が吹いたらゴーッていう音が入りますよね。それを避けるために、スマホで撮る場合もウインドスクリーンやウインドシールドなどと呼ばれるふわふわのついた専用マイクを使うことをおすすめします。最近のiPhoneはマイクの性能がいいですが、専用の外付けマイクを使えば、より聞きやすく、結果見やすい動画になってクオリティーが上がります。

iPhoneで動画を撮りつつ音声だけ別のレコーダーで撮ることもできますし、iPhoneにライトニングケーブルでつなげられるインマイクも販売されていますので、ぜひマイクは入手いただきたいです。

なるほど。ギュイーンさんの動画も“音”が非常に印象的ですよね。ほかにもあると良い機材はありますか?

次に揃えておいたほうがいいのは照明ですね。とはいえ、大掛かりな機材を用意するというよりは、光を意識することのほうが大切です。光のあたり方を考えて撮影場所を選ぶとか時間帯を選ぶとか。ケースバイケースですが、たとえば順光で撮るよりも逆光のほうがエモい動画が撮れることもあります。

機材にこだわりたいという方はぜひギュイーンさんのYouTubeもチェックしてみてください。本日はありがとうございました。