(※)八戸製氷冷蔵株式会社が製造しているサイダーの総称
氷屋さんが作るサイダー
八戸製氷冷蔵株式会社は長い歴史があるそうですが、創業はいつになりますか?
1921年です。
来年で創業100年ですね! 社長は何代目の方になるんですか?
今は9代目の橋本八右衛門になります。正確には、6代目として別の事業を営んでいた橋本八右衛門が興した会社になるので、創業者からだと4代目ですね。
えっ、八右衛門さんって創業者の方と同じお名前なんですか?
代々、名前を襲名しているので9代目の八右衛門なんです。
ショップオーナーさまにインタビューをしていると、家業を継がれている方はけっこういらっしゃるんですけど、9代目は初めてです。さらにお名前も受け継がれているとは。
本名は別にあって、会社の代表者名は八右衛門を襲名しているんです。
9代という歴史を感じる制度ですね。6代目より前はサイダーの製造をされてなかったんですね。
そうです。もともと、三島商会という別の会社がサイダーを作っていたんですけど、うちが営業権を譲り受けてサイダーの製造を始めたんです。創業から1年後のことです。
現在は、製氷事業と冷凍した魚などを預かる冷蔵事業、それにサイダーの清涼飲料事業をしています。
ということは、三島シトロンは90年以上も前からあるサイダーなんですね。
はい。ラベルも大正時代から変わってないです。
それはすごいですね。かもめがシンボルマークとして使われていますが、港町なので昔からかもめがいたんでしょうか?
そうですね。かもめとうみねこはすごくいっぱいいます。人間を怖がらないので、近くまで寄っていってもあまり逃げない身近な存在です。奈良公園の鹿みたいな感じでしょうか(笑)。
昔ながらの流通形態
2005年からワンウェイ瓶に変わったことで県外でも販売できるようになったそうですが、それまでは地域外での販売ができなかったんですか?
ワンウェイ瓶の前はリサイクル瓶だったんです。リサイクル瓶は飲んだ後の瓶を返していただいて、洗ってまた使用するんですが、県外に出すと返ってこないことがほとんどなんですね。
あと、リサイクル瓶は頑丈にできていて重たいんです。なので、送料が多くかかってしまうというのもありました。県外に出すときは使い捨てのワンウェイ瓶に変えたことで回収が不要になり、瓶自体も薄くなって発送しやすくなったということです。
そういう仕組みだったんですね。
はい。すごいエコですよね。
そうですよね。今は使われてないんですか?
今も使っていますよ。市内のスーパーに卸すときはリサイクル瓶の方を使って、瓶ビールみたいにケースで納入しています。ビール瓶を酒屋さんに持っていくとお金が返ってくるのと同じように、うちも1本15円をお返ししています。スーパーで1本ずつ買った場合も瓶を返してもらえればお金を返すようにしているので、ちゃんと瓶は返ってきますね。
昔ながらの流通形態が残っているなんて素敵です。
そうですよね。酒屋さんなら残ってるかなという感じですけど、サイダーでそういうのってないと思います。
最近は王冠の栓も減ってきてますよね。
そうなんですよ。だから、若い世代には栓抜きの使い方がわからない方もいるそうで、瓶を割っちゃったという話も聞きます。うちもゆくゆくは回して開けるスクリューキャップに変えていく方向ではあるんです。
ただ、レトロ感も大事にしているので、王冠もなくさないでいこうとは思っています。
なくなってしまうと、悲しいしもったいないです。ぜひ、王冠は残していただきたいです!
青森でサイダーが親しまれている理由
雪深い青森でサイダーが親しまれているのはなぜなんでしょうか?
青森県は雪深いですが、八戸は太平洋側なので想像以上に雪が降らないところなんです。ただ、すごく寒くはあって、氷の都と書いて「氷都」と言われているくらいなんです。それで、外が寒いぶん、家の中を暖かくしてサイダーやアイスクリームを食べるという青森県民の習慣があるんです。
他にも、青森県はサイダーとインスタントラーメンの消費量が日本一という統計もあるらしいです。炭酸飲料が大好きな県民性なんでしょうね。
おもしろいです。ちなみに、カップラーメンはなぜですか?
持論ですが、青森県ってりんごだったり長芋だったりにんにくだったり、健康にいいものを作っているはずなのに、それを作るのに忙しくて自分のことが疎かになってるんじゃないかなって思うんですよ。農作業が忙しすぎて作ってらんねえ! みたいな(笑)。あと、しょっぱいものが好きだから、みんなカップラーメンを食べてるんじゃないかなって思います。
青森県は塩分摂取量が多いって聞いたことがあります。
そうなんですよ。しょっぱいものが好きなんですよね。
コロナ禍とネットショップ
コロナウィルスの影響はありましたか?
外出自粛要請がでたころは、やっぱりサイダーの製造数が少なくなりました。うちは自社製品以外にも受託製造をしているんですけど、そういった注文がいっさい入ってこなくなりました。
とはいえ、自粛が明けた5月くらいからは止まってたぶんの注文がドバッと入ってきました。なので、コロナの影響はあったものの、夏は例年通り忙しかったかなという感じです。
受託製造の注文が入ってこなくなったのは、観光客などの減少が影響したせいでしょうか?
そうですね。道の駅やお土産屋さん、ホテルなどに置いてもらっているので、観光客の方や帰省客の方が少なかった影響っていうのは少なからずあると思います。
そうですよね。お祭も中止になったり。
お祭が中止になった影響もありました。氷が売れないので。
寂しい夏でしたね。
ネットショップにも影響はありましたか?
ネットショップの方は注文が増えたっていう影響がありました。
購入者は県外の方が多いですか?
県外の方が多かったんですけど、苗字が青森っぽい感じの方もいて、帰省しない人なのかなと思いました。あとは、県内の方が県外に送るっていうのも多かったです。帰ってこない人にお土産的な感じで送ってあげているのかなと思います。
リピーターの方もいますか?
県内はリピーターの方が多いように思います。毎回、同じ送り先だったり、違う送り先だったり、利用目的はそれぞれ違うと思われますが、弊社の商品を繰り返し選んでいただいているという点では非常にありがたいお客さまです。
みなさん、小さいときから知っている味ですもんね。帰省できなくても懐かしい味を届けたい、飲みたいというのがあったのかもしれないですね。
そうですね。いわゆる地サイダーのひとつだと思うので。
ネットショップを始めたきっかけと今後の展望
ネットショップを始めたのは2014年ごろとのことですが、きっかけを教えてください。
ホームページをリニューアルするタイミングでネットショップも作ったと聞いています。
制作会社さんに勧められたという感じですか?
そうですね。リニューアルは制作会社にお願いしました。センスよく作りたかったので、ホームページを制作していただいた会社とディレクションは別にお願いしました。
カラーミーショップをご利用いただいたのも、制作会社さんからのご紹介ですか?
いくつかの候補と比較したときに初期費用が一番安かったのと、操作性もよかったということでカラーミーショップを選んだと聞きました。私自身、ネットショップの処理業務の担当になったのは最近ですが、ボタン操作で処理を進めていくので、操作に不慣れでも不安が少なく作業できているので、わかりやすいと思います。
ありがとうございます。
今後、ネットショップをどのように展開していきたいですか?
今年はネットショップに載せていない新商品もありますし、手ぬぐいにも力を入れていきたです。サイダーを手ぬぐいで包んだ商品があるんですけど、パッケージとしてもおもしろいと思っているので。
栓抜きも付いてて、このまま持ち運べばどこででも飲めますよね。
そうなんですよ。
素敵ですよね。ネットショップに載せていない新商品にはどのようなものがありますか?
「三島シトロン」「みしまバナナサイダー」のシャーベットと「ガラナスパークリング」です。
ガラナ飲料は以前にも2度発売していて、今回で3代目になります。年配の方から「ガラナが飲みたいな」というお話をけっこういただいて、17年ぶりにリニューアルした商品になります。
ガラナってどういったものなんですか?
ガラナは南米原産の赤い果実なんですけど、それから抽出したエキスを使った飲料です。コカ・コーラさんが日本で流通し始める前にけっこう飲まれてたそうです。ガラナと言えば北海道が有名ですけど、青森県にもかつては流通してたっていう歴史的な経緯があります。
そうなんですね。17年ぶりの復活ってすごいですね。パッケージは以前のままですか?
初代は「ガラナシャンパン」という名前だったんですけど、シャンパンっていうのがお酒なので名前に使えなくなったっていう経緯があって、2代目は「ガラナスペシャル」に変えて発売したんですね。で、今回が「ガラナスパークリング」なので、パッケージは全部違います。
何度も復活する根強い人気商品なんですね。新商品の掲載やサイト運用も滝川さんが担当されてるんですか?
そうですね。今は私が商品の発送までほぼ全部やっています。コロナ禍で売上が落ちたなか、ネットショップの注文は少し増えた傾向があって1人では賄い切れない作業量になってきました。社員全員に共有できるようにして、みんなでやっていく方向にしている最中です。
属人化の解消でネットショップ運営がよりスムーズになりますよね。
あとは、今までは注文がきたから処理するということしかやっていなかったので、今後はPRにも力を入れてこちらから働きかけをすることで見にきてもらえるショップ運営に変えていきたいと思っています。サイダーのパンフレットや新商品のラベルにQRコードをつけて、ホームページからネットショップを見ていただけるようにはしていますが間接的なので、もっと直接的なPRが必要だと考えています。
最近はSNSからの流入も多いと聞きます。レトロな商品パッケージや港町の景色、工場の風景など、みしまサイダーのPRはInstagramとの相性がよさそうですよね。新商品が並ぶのも楽しみにしています!