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静岡県にやってきました!
ドラマ『ごめんね青春!』にも登場した伊豆箱根鉄道に揺られること数分。この日のカラメル編集部が訪れたのは、三島市にあるお麩の製造工場です。
麺ひとすじ50年! 3代続く製麺工場が「お麩」を作った理由。
先ほど外の看板を見てきたのですが、この工場では麺類も作っているんですか?
いえ、実は今はお麩だけなんですよ。
私の祖父が昭和30年代にこの工場をたちあげて、50年にわたって麺を作ってきたんですが…とあるきっかけで、父の代からお麩作りがはじまりました。
そうだったんですね! 一体どんなきっかけが…?
県内のお麩工場さんが廃業されると聞いて、父が製造設備を譲り受けたんです。
その後、おととし私の主人が3代目社長に就任したのですが、製麺機は老朽化が進んでいたので社長交代のタイミングで製麺には区切りをつけて、今はお麩一本でやってます。
社長もそのうち戻ってくるので、あとで工場の中をご案内しますね。
ありがとうございます! 今日はお麩のことをたくさん教えてください。
どうしてピンク色になったの?
静岡だけのご当地おやつ「さくら棒」の話。
麩菓子というと茶色いイメージですが、おふやさんの麩菓子はとってもカラフルなんですね!
麩菓子って静岡県民にとってはピンク色がスタンダードなんですよ。
県外の人にはあんまり知られていませんが、静岡では「さくら棒」って呼ばれています。
さくら棒…! どうして静岡だけピンク色なんですか?
諸説あるんですけど、昔は他県と同じように黒糖で麩菓子を作ってたみたいです。
でも戦時中から戦後にかけては、物資不足の影響なのか黒糖が手に入らなくなって…しかたないから黒糖の代わりに白砂糖を塗って麩菓子を作ろうとしたんですって。
大変な時代だったんですね…!
黒糖の麩菓子をかじっていただくとわかりますが、本来お麩の生地って白いんですよね。
なので当時の職人さんは「もともと白い生地に白砂糖を合わせたっておもしろくない」と考えて、せめてもの彩りとして生地に食紅を加えたんだそうです。
そうしたらちょうどキレイなさくら色になったので、静岡ではそのまま「さくら棒」として定着した…といわれています。
うちでは、お客さまのご要望にお応えしているうちにどんどんフレーバーが増えてきて、王道のさくら棒以外にも常時 10 種類の麩菓子を「NEOふがし」として販売しています。
気負わず試してほしいから、載せるのは手軽なレシピだけ。
おふやさんでは、料理用のお麩も作っているんですか?
もちろん!
麩菓子のことを知っていただくのもうれしいですが、私たちは日常の料理を通じてお麩そのものの魅力をみなさんにもっと知ってもらいたいなって思っています。
実は、お味噌汁に入れる以外にお麩の使い方をあまり知らなくて…。伊丹さんおすすめの食べ方を教えてください!
うちのパートさんにもよく聞かれます(笑)
お麩って、和洋中どんな料理に入れても合うんですよ。たとえばこの「にんじん麸」はフレンチトーストにして食べてもいいし、これからの季節はコーンポタージュに浮かべるのもおすすめです!
パンみたいな感覚で使えるんですね! クルトンみたいでおいしそうです。
お麩を使うとクルトンよりも食べごたえが出るので、満足感がグッと高まるんですよね。
それに、うちのお麩は水戻しの必要がないのでとっても使いやすいんですよ!
水戻しですか。
市販の車麩のような硬いお麩って、通常30分ほどかけて水で戻して、よく絞ってからでないと使えないんです。
でも実際、夕飯をつくるときにそんな余裕ってあんまりないじゃないですか。
忙しい日だと、なかなか難しいですね。
私自身も子育てしながら働いているので、そんなのやってらんなくて。
その点うちのお麩ってすごく便利だなと思って、ネットショップでは私がよく作っている料理をレシピとして掲載しています。
別に私は料理研究家さんみたいに料理ができるわけじゃない…っていうか、むしろズボラなほうです(笑)だから世間のお母さんたちにも気軽に試してもらえるようなレシピだけを載せています。
毎日作るものなら、気負わずに作れるメニューのほうが親しみがわきます。
そうそう。主人のお弁当にもお麩のおかずをよく入れてるんですけど、私が作るのは絶対すぐできるものだけ。
この卵焼きなんかもね、お弁当にちょっと一品足りないからササッと作って「せっかくできたから写真撮っとくか~!」って感じで朝バタバタしながら撮りました(笑)
…こんなんですけど、でもこんなんでいいんですよってことを伝えたいんですよね。
……と、そこに社長さんが登場!
あっ、おはようございます!
(笑) そういえば、静岡県内には さくら棒屋さんって何軒ぐらいあるんですか?
県内の職人さんはみんなおじいちゃんで、今は跡取りもほとんどいないみたいです。
これまではお祭りとかがあるたびに彼らが何千本も作って販売していたんですが、年齢的にも作れる本数がだんだん減ってきてて。
ということは、さくら棒業界ではお二人がいちばん若い世代なんですね。
ネットで調べたら全国のお麸屋さんがやっている組合を見つけたんで、おととし加入したんですけど……「30年ぶりの新規加入だ」と言われちゃいました。(笑)
そんなに久しぶりだったんですか!
さっそく意気投合して「一緒に頑張っていこう!」って。数少ない仲間ができたのは嬉しかったなあ。
せめてちょっとでも知ってほしい、お麩のこと。
お麩業界、そしてこれからのお麩についてお二人が思うことはありますか。
実際スーパーなんかでも、お麩売り場ってどこ?って感じじゃないですか。
たしかに……。意識してお麩を探したことはなかったです。
そうなんですね……!
スーパーを歩きながら「今晩なにを作ろうかな?」って考えるとき、お麩をぜひ選択肢のひとつに入れてもらいたいなって思うんです。
お麩をどんどん日常に浸透させていくことが、今後の課題なんですね。
ミールキット
誰でも簡単に料理が作れるキットの通販・宅配サービス。料理に必要な分だけの食材とレシピが自宅に届く。欧米を中心に人気が高まっている。
たとえばお麸って唐揚げにするとすごくうまいんです。にんにくペーストや醤油などの調味料にレシピも添えたら、初めての人でも作りやすいはずなので。
それ、絶対試してみたいです! ミールキットの実現、楽しみにしてますね。
わあ、ありがとうございます!
次回はいよいよお麩工場の内部へ!
潜入レポート記事はこちらから。