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自社ECを成長させたい!売り上げアップのポイントをキャリーオン創業者 吉澤さんに聞いてみた。

自社ECを成長させるためには、「集客力の強化」、「CVR(購入率)の向上」、「客単価アップ」など、複数の要素を緻密に磨き上げていく必要があります。

今回はキャリーオン創業者の吉澤健仁さんにご自身の経験を踏まえた自社ECの売上をアップさせるポイントについて、お話を伺いました。

吉澤健仁さん
同志社大学法学部卒業後、資生堂に入社、化粧品の販売業務に従事。2005年10月、WEBサイトの企画・制作・プロモーションを展開するエスト株式会社を創業。2013年5月、株式会社キャリーオンを設立。子ども服のシェアリングサービス「キャリーオン」を、会員約10万人、買取点数約130万点を超えるサービスに拡大させる。2021年8月、同社をM&Aで売却。

吉澤さんについて教えてください

吉澤さんについて教えてください

新卒で資生堂に入社、2005年に退職しWeb制作会社を立ち上げました。多種多様なECのプロデュースやプロモーション、サイト制作などを手がけ、約8年後、培ったノウハウを活かし、子ども服をシェアリングするプラットフォーム「キャリーオン」を2013年にスタートしました。

子どもの成長は早く、毎年服がサイズアウトしていきます。その服を買い取って次に必要な方に再流通させる、いわゆる「お下がり」のようなことができるサービスが「キャリーオン」です。

2021年にM&Aで売却しましたが、現在会員数約10万人、買い取点数約130万点と、多くの子育て世代に支持されており、子ども服の中古買取事業では国内最大規模を誇るサービスに成長しています。

自社ECの集客はコツコツ続けていくことが大事。

子ども服の中古買取事業では国内最大規模を誇るECサービスの創立者である吉澤さんにぜひ自社ECを育てていくための様々なポイントについてお伺いしたいのですが、まずは集客についてお聞かせください。SNS等は集客において重要でしょうか?

SNSを始めることは集客の第一歩になります。広告を出すと費用がかかりますが、SNSはお金をかけずにできる集客方法なんですよね。今の時代、SNSをやらなければどんなにいい商品やサービスがあっても認知されにくいですし、誰にも知られなければ存在しないも同然なので、基本的にはSNSでお客さんを呼び込むことを推奨しています。

どのSNSがいいかについては商材やターゲットによって変わるので一概にはいえませんが、アパレルや食品ならInstagramは必須だと思います。ただ、Twitterが合う場合もありますし、YouTubeが適していることもあり、運用してみなければ判断できません。

どれにするかと悩み続けてやらないよりは、できることはなんでもやるくらいの気概を持って、すぐにでもSNSを始めたほうがいいですよ。

その次にできることはプレスリリースの発信です。無料でも配信でき、テレビで紹介されればCMを打つような波及効果を得ることができます。

「キャリーオン」ではどんな集客をされていたのですか

やはりSNSに力を入れていました。「キャリーオン」のメインターゲットは小さいお子さんのいる親御さんでInstagramを使っている方が多いので、早い段階からInstagramを中心とした情報発信に力を入れていました。ほかにTwitterやTikTokなどもやっていますが、やはり一番相性がいいのがInstagramで、新商品の案内や育児動画などを発信しながらフォロワー数を増やしています。

また「キャリーオン」では創業当初からプレスリリースも発信していて、サービス開始から5年目にTV番組に取り上げていただきました。もともと話題性のあるサービスということもあって、いろいろなメディアに取り上げられる機会が多かったのですが、TVの影響力は絶大です。

番組放映後たった12時間ほどで、放映前の半年間で獲得した会員登録数を超えまして、全国放送にのるインパクトの大きさに改めて驚かされました。

プレスリリースを出せば必ず取り上げてもらえるわけではないので、幸運だっただけなのですが、5年間プレスリリースを出し続けてやっとホームランが打てました。出さなければメディアの目に留まることもないので、発信し続けることが大事だと感じています。

SNSも同じで、なにがバズるかわからないですし投稿しないとバズることもないので、とにかく投稿を続けることが大事です。SNSは1か月や2か月でフォロワーを獲得できて売上が立つというものではなく、長く続ければ続けるほど結果が出やすくなるので、心折れずに続けてくださいね。

CVR(購入率)アップのポイントは、ユーザーに安心感を与えること

SNSやPRなどを使った集客も短期的ではなく継続することが大切なんですね。お客様にお店の存在を知っていただいた後に、実際に購入につなげるための工夫も大事だと思うのですが、吉澤さんが考える“自社ECの工夫”などはありますか?

自社ECでは、ユーザーに安心感を与えることが大切です。
集客によって自社ECにどれだけ人を呼び込めても、商品の魅力が伝わらなかったり操作性が悪かったり、商品の値付けがおかしかったりと、サイトが売れる状態になっていなければ売上にはつながりません。

消費者にとっては、有名モールと比べて単独のECサイトで買い物するのはハードルが高いので、「安心して買い物ができるお店ですよ」「安心できる商品ですよ」と積極的に伝える必要があります。

そのためには、自社サイトの商品ページに商品の開発秘話や製造工場の写真を載せたり、フリーページで店長さんの自己紹介や会社内を公開したりと、内側を見せれば見せるほど安心感を醸成できるので、コンテンツの充実に力を入れるとよいCVR(購入率)アップにつながると思います。

コンテンツを活用し自社の情報やメッセージを伝えることは非常に重要ですよね。他にもCVR(購入率)をあげるためにすべきことはありますか?

いろいろな施策がありますが、ここでは有効な手段として4つ紹介します。

①「賑わい」を見せる

ひとつは自社ECに「賑わい」を見せることです。

街なかの飲食店に行列ができていれば、「おいしそうだな」「食べてみたいな」と思いますよね。実店舗ではお店に行けば流行っているのか人気があるのかが一目でわかりますが、ECサイトではそれが見えにくいです。

「買ってみようかな」と購入意欲をかき立てるためには、お店に人が集まっている、流行っている、稼働していている、買っている人がいることを非言語のメッセージで伝えることが重要になります。

「キャリーオン」では、子ども服の買取数と販売数わかるようにTOPページにカウンターを設置して、数字がほぼリアルタイムで更新される仕様にしています。これは数字そのものを見せたいわけではなくて、実体のあるサービスであることを印象づけるために実装したんですね。

自社ECに「何分前に何が買われました」「24時間以内に何人が見ています」というような速報の仕組みがあるのとないのでは、ユーザーに与える印象がかなり変わると思います。とくにスタートしたばかりのECでは、安心できるサイトなのかがわからないので、ワイワイ賑わっている様子を見せるようにしたほうがいいですね。

②SNSの有効活用

2つめはSNSを有効活用することです。

先ほどお話したように、集客をする上でSNSはなくてはならないツールです。販売者側から商品のおすすめポイントやこだわりを発信することも重要ですが、購入者とのコミュニケーションツールとしての活用も重要です。

例えば、買ってくれた人の写真つきの投稿をTwitterならリツイート、Instagramならリポストするなど、コミュニケーションを図ってみると良いでしょう。

また、自社ECサイト上にInstagramの投稿を載せたりしてコンテンツを増やすことで、お客様の購入体験をリッチ化しCVR向上を狙うことも可能だと思います。

「キャリーオン」では、インスタ映えを狙って梱包に力を入れていて、Instagramにアップしてくれる人を増やすために、できるだけカワイイ箱でお届けしているんですね。写真が投稿されたらすかさずリポストすることで、潜在層にもお届けの様子やリアルな声を届けることができ、会員数増加に寄与します。

難易度は高めですが、商品をお届けするだけで誰かに宣伝してもらえるという状態が作れれば、最強で無敵の集客が実現すると思います。

さらに、サイト上にInstagramの投稿を掲載することで、実際に商品を着たお客様の着用イメージを載せてCVR向上を図っています。ちなみに梱包の話に付け加えると、同梱物として「お買い上げいただきありがとうございます」「こんな想いで作りました」という手書きのメッセージを入れるのもいいですね。

ECを運営している中の人の温かみを感じることができますし、意外と手書きのメッセージを入れているお店は少ないので差別化されてリピート率アップにつなげられますよ。

③クーポン発行

3つめに有効な策として紹介したいのは、クーポンを発行することです。よく「ECはクーポンだ」といわれるように、CV率アップにクーポンは欠かせません。

「キャリーオン」でもクーポンを発行していますが、やはりクーポンがあると売れますし、買おうかどうかと迷っている人の後押しにもなるので、戦略的に出していくことが大事です。

一例として、客単価が4,000円の場合、「5,000円以上買えば10%OFF」のようなクーポンを出せば、あと1,000円分買い足す動機になって客単価を上げることができます。

クーポンは値引き合戦になって悪だという見方をされることもありますが、じつはそうではなくて、クーポンを発行しても使われなければコストはかからないので特段の心配は不要です。とりわけ初めての人にクーポンを発行すると初回購入につながりやすくなるので、ぜひ検討してみてください。

④決済方法の選択肢を増やす

4つめは多様な決済方法に対応することです。決済方法の選択肢が多いほどコンバージョンにつながりやすくなります。

とくに支払い情報を入力せずに決済できると、購入者の負担が減ってカゴ落ちを防げるので、ID決済が可能なAmazon Payや楽天ペイなど幅広い決済方法に対応したほうがいいですね。カラーミーショップさんでも対応可能なので、設定しておくことをおすすめします。

客単価アップのカギは「送料」と「ついで買い」

客単価アップのためにすることを教えてください。

単純計算で、客単価が2倍になれば売上も2倍になるので、EC運営においては客単価アップのための施策も考えておく必要があります。

客単価を上げるための施策はおもに2つあり、ひとつは「送料」に関するものです。やはり「送料無料」はすごく引きになりますね。

ただし、送料無料ラインをどこにするかが極めて重要で、客単価5,000円のところ15,000円以上とするのは高すぎですし、逆に3,000円以上などと低く設定したのでは客単価は上がりません。平均客単価にプラス1,000円、2,000円くらいが目安で、客単価5,000円の場合は、6,000円、7,000円を送料無料ラインに設定するのが妥当だと思います。

送料無料ラインを設定したら、ECサイトの視認しやすい位置に表示してください。「キャリーオン」でも、あといくらで送料無料になるのかがわかるようにしています。常に意識させるようにすると、「送料無料まであといくらだから商品を追加しよう」という心理が働きやすくなるので、客単価アップが見込めます。

もうひとつは、1回の購入アイテム数を増やして客単価を上げる方法です。「洗顔のあとにはこれを使いましょう」と関連する商品をおすすめ表示したり、「これとこれを組み合わせればこんなスタイリングができますよ」と組み合わせを提案して、「ついで買い」を促す工夫をしてみてくださいね。

リピート率アップを狙うならメールでのアプローチ

集客、CVR(購入率)、客単価をアップさせるポイントを教えていただきましたが、他にも売上アップに重要な要素があれば教えてください。

ECにおいて、リピーターの獲得は必須です。リピーターを囲い込めていれば新たなお客様がこなくても売上が立ちますが、リピーターがいない状態では新規のお客さんが途切れたときに売上が止まるので、絶え間なく顧客獲得に向けた集客をしなければならず大きなコストがかかります。

お客様にリピートしてもらうには、当然ながらサイトをリピートされる状態にしておかなければなりません。自社の状況を振り返ってみて、1回きりの購入で終わるユーザーが多い場合は購入時の満足度が低いと判断できるので、2回目以降も買ってもらえるようにサイト内を整備するなどなにかしらの対策を取るべきでしょう。

一般に2回買ってくれたお客さんは次もリピートしてくれる確率が高いといわれており、いかに2回目に買ってもらえるかがカギになります。

リピート率を上げる施策として、一番かんたんで低コストの方法はメルマガ配信です。基本的には1回以上買ってもらった人へのアプローチ方法となります。

初回購入の何日後かにフォローメールを配信すれば、好感度が上がってリピーターの獲得につながるかもしれませんし、新商品を売りたいときに既存客にクーポンつきのお知らせメールを配信すれば、リピート購入が期待できます。

カラーミーショップさんにもメルマガの予約配信や一斉配信機能が実装されていると思うので、利用してみてはいかがでしょう。なお、メルマガ配信ではタイミングが大事です。洋服ならシーズンごと、日焼け止めなら夏前など商材によって違ってくるので、適切なタイミングを狙ってアプローチしてみてくださいね。

他にも自社ECだからこそできることはありますか?

自社ECの長所は、モールに比べてリピート率が上がりやすく、リピーターを育成しやすいことです。また大手モールにはたくさんのお店が出店しているので、どのお店で買ったのか記憶に残りにくいですが、自社ECでは店名を覚えてもらいやすいのもメリットです。

お客さんと長くお付き合いするための手立てとしては、ポイント機能と会員ランク機能を取り入れるのが有効です。カラーミーショップさんでも実装できますよね。「キャリーオン」でもポイント機能を活用してお客さんの囲い込みをおこなっています。

ポイントを付与するメリットは、「ポイントが失効しないうちに購入しよう」とか、「ポイント獲得のために商品を追加購入しよう」といった動機づけになって、リピート率だけでなく客単価アップにも期待できることです。会員ランクは、自社ECだからこそできる施策で、たくさん購入してくれる人をVIP待遇にすることでロイヤルティを醸成できます。

自社ECを立ち上げて間もない段階だと、リピーターの囲い込みは難しいと思いますが、売上が立ってくればポイントや会員ランクでお客様をよりファンにすることも可能です。集客で新規顧客を獲得できなくても、リピーターで売上が立つ好循環が生まれればECは伸びていくので、リピーターは大切にしてくださいね。

それから、安心感を醸成する話にもつながりますが、自社ECで商品製造の裏側を見せたり、作り手の熱い想いを語ったりといろいろなコンテンツを載せられるのも有効です。買ってくれたお客様をていねいにフォローすることができるのも自社ECだからこそ可能なことなので、手厚い体制を整えておくことが重要だと思います。

吉澤さんから自社ECを頑張っている方へのアドバイス

最後に、自社ECの集客や売り上げアップの施策を頑張っている方へアドバイスをおねがいします。

自社ECサイトの運営はどれか一つの要素だけを頑張ればいいというものではありません。

例えば集客だけに注力するのではなく、購入しやすいECサイトを作る、SNSを活用してフォロワーを増やす、買ってくれた人にフォローメールを送る、クーポンを発行して購入を促すなど、さまざまなアプローチを重ねてリピーターを増やし、ロイヤルティの高い顧客に育てる努力が必要です。

もちろん、自社のブランド力を強化することも忘れてはいけません。これらの要素はすべてつながっており、上手くいくと掛け算のように売上アップの幅が大きく広がります。

ECサイトの魅力を上げるコツとして、アイテム数を増やすこともひとつの手です。基本的に商品点数は多ければ多いほどよいとされていて、商品数が多いほど滞在時間が増えますし、売れやすくなりますし、SEO的にも商品数に比例してページ数が多くなるので流入が増える可能性が高まります。

とはいえ、1点勝負の会社さんが無理に商品数を増やす必要はなく、魅力を徹底的に深掘りするほうがいいですね。

それから、必ずやってほしいのは自社サイトで商品を買って、改善点を見つけることです。実際に商品を探してみると、検索のしやすさやカテゴリーのわかりやすさ、商品への辿り着きやすさなどがユーザー目線で実感でき、改善すべき部分に気づくと思います。

サイト内検索でキーワードを入れても該当する商品が出てこないことがわかったら、商品名を再検討したり、商品説明にキーワードを入れるなどの対策が必要ですし、写真が少なくて魅力が伝わらないと感じるのであれば、写真点数を増やしたほうがいいかもしれません。

ちなみに、カテゴリーやサイト内の導線については、最初に適当に作ってしまうと、改修しない限りわかりにくい構造のまま使い続けることになるので、ECサイトの立ち上げ段階でしっかり考えることをおすすめします。

自社ECでは改善を繰り返すことが大切です。小さな改善もムダではなく、あとから一つひとつが効いてきて必ず結果につながります。ECをオープンさせてからなにもせずに放置していてはサービスの成長は見込めないので、愚直に改善に取り組んで集客力の高い自社ECに育ててくださいね。

吉澤さん、ありがとうございました。