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オーナー・坂尾さん、実はコーヒーが苦手だった!?
せっかくなので、さっそくコーヒーをいただいちゃいます。おすすめはどれですか?
夏は水出しコーヒーがおすすめです。今日のコーヒー豆はルワンダ産ですね。
ではいただきます。…すごい! 口に全く渋みが残りません。
フルーティーで、飲みやすいでしょう。
実はコーヒーがあまり得意でないのですがこのラテはすごくおいしいです。
わかります。僕もコーヒー苦手だったので…。
えーっ!!
胃にもたれるかんじが得意じゃなかったんですけど。
本当においしいコーヒーを飲んだら、イメージががらりと変わりましたね。
挽いたコーヒー豆を買うのは、
栓のあいた炭酸飲料を買うのと同じくらい損してる。
僕は、もともとゼネコンで働いていてそのあと実家の建築業を父と一緒にやっていました。
でも20代中盤、もう少し広い世界を見てみたいと思ってバックパッカーとして世界を周ることにしたんです。
バックパッカー!そのときにコーヒーとの出会いがあったんですか?
はい。最初に訪れたオーストラリアでコーヒーのイメージが、がらりと変わりました。
淹れたてのコーヒーのおいしさも衝撃的でしたし、毎朝カフェへ行ってそこで挨拶して1日が始まるっていう文化が、すごくすてきだなと思って。
そんな体験もありいろいろ考えた末、帰国して2年ほどカフェで修行してからONIBUS COFFEEをオープンするに至りました。
なるほど。海外でたくさん刺激を受けたからこそ、今のお店があるんですね。
ところで、坂尾さんの考える「おいしいコーヒー」ってどんなコーヒーでしょうか。
素材から淹れるところまで、全てにおいてクオリティが命なんですが、
あえていうなら挽きたてであることが重要です。
家でコーヒーを飲むとき、お店で挽いてもらった豆を使っている人もいると思いますが…。
それ、めっちゃ損してますよ。
…そんなに違いますか?
栓のあいた炭酸飲料をわざわざ買わないじゃないですか?
買わないですね。
ランクの高い肉や獲れたての魚を「一番おいしい状態で食べてもらいたい!」と思うのと全く同じ感覚といいますか。
コーヒーは、焙煎や淹れ方も大事ですけど素材の鮮度が肝なんです。
なるほど。ONIBUS COFFEEのネットショップに挽いた豆がないのも納得です。
生産現場を理解するために、30時間かけて農園へ行くことも。
一流の料理人さんって、みんな市場へ行ったり生産者さんへ会いに行ったりしますよね?
僕たちも、自分たちの提供しているものの透明性をより明確にするために、コーヒー豆の農園へ足を運んでいます。
コーヒー豆の農園! どんなところなんですか。
場所によっていろいろなんですが、どこも市街地から遠くにあります。
こないだ行ったグアテマラは移動に30時間かかりました…。
さ、30時間…!
でも生産現場やその環境を理解するためには、それくらい時間をかけて行く価値があります。
たとえば、農家さんたちの多くはコーヒー豆を作っているのにコーヒーを飲んだことないんですよ。知ってましたか?
えっ…!どういうことでしょうか。
彼らは「お金になるもの」として栽培しているだけなので、コーヒー豆が食材という認識もないんです。
だから僕たちが日本で焙煎したコーヒー豆を持っていって「あなたたちが作ってくれたものは、こんな味なんですよ!」と伝える活動もしています。
坂尾さんの淹れたコーヒーが、彼らが初めて飲むコーヒーなんですか。衝撃です。
そうなんです。
そんな人たちが手作業でコーヒー豆を栽培しているのを、みなさん知らないですよね。
自分たちが何やってるのかを生産者さんに伝えたいですし、コーヒーを飲んでくれるお客さんたちには、もっと農家さんのことを知ってもらいたい。
今後は農園やお店の様子をムービーにまとめて、Webで発信していこうと考えています。
お菓子もカップも領収書も。人とのつながりに支えられているお店。
クッキーにブラウニー…あれ。コーヒー屋さんで、もなか。珍しいですね。
クッキーやブラウニーは、知り合いの方のものです。
もなかの餡は、実はここで炊いてるんですよ。
お店で作っているんですか!
はい。和菓子職人さんにレシピを教えてもらって、試行錯誤しながら作ってます。
使ってる小豆も、知り合いに八百屋さんがいるので、そこから仕入れていますね。
今日の餡は、すごくおいしくできてますよ!
餡だけじゃなくて物語までつまってるもなか…!
じゃあ、これもいただいちゃいます。さっきのコーヒーとあわせて領収書いただけますか。
はい、どうぞ!
これまた、かわいいデザインですね!
高知県に行ったとき、紹介してもらった「土佐和紙プロダクツ」さんから取り寄せたものです。
手ざわりがよくてデザインもすてきで、気に入ってます。
ここにも人とのつながりが。
人とのつながりでいうと、たとえばカップも陶芸家のイイホシユミコさんにお願いした別注品です。
イイホシさんのアトリエまで訪ねて、オリジナルのカラーとロゴをいれてもらったんですよ。
お店にあるものすべてに必ず「誰か」が登場しますね!
そうですね。友だちであったり、その紹介であったり。
顔を知らない人から物を仕入れることは、ほとんどありません。
そこには、何かこだわりがあるのでしょうか?
うーん、なんといったらいいんですかね。
最近「ライフスタイル」を売りにしているビジネスが多いと思うんです。
そういうのって、先にストーリーを作ってブランディングしていくじゃないですか。
でも僕たちが今やっていることって、ブランディングするつもりでとった行動じゃなくて、本当においしいコーヒーを伝えるためにとった行動が結果としてストーリーになってアウトプットされるというか。
農園へ足を運ぶのも、いろんな人の助けによってお店を構成するものができあがっていくのも、コーヒーのおいしさを伝えるための行動。
はい。こういうやりかたは、コーヒーに限らず「本当にいいもの」を伝えていくうえでとても重要なことじゃないかと思います。
中目黒店ならではの良さを生かした
人とのつながりを生む新たな場所づくり。
店舗デザインは、渋谷の「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」も手がけた鈴木一史さんが担当されたんですよね。
そうですね。僕の友だちで。
外観も内装も、おしゃれだけどどこか懐かしいかんじがしますね。
ここは古い長屋だったんです。
建物が持ってるもともとの良さを生かした作りにしてもらっています。
うちのコーヒー豆のパッケージも、この窓の格子をモチーフにデザインしてもらったんです。
古いものの良さを、店舗やパッケージのデザインに上手に取り入れているんですね。
中目黒店で、これからやっていきたいことなどありますか。
そうですね。この2階を使って、ワークショップをやっていきたいです。小さな焙煎機を使って豆を挽いてもらったり。
こんなすてきな場所でワークショップ。いいですね…!
あとはコーヒー以外にも、このお店が持ってる「つながり」を生かして、いろんな人たちが交流できるイベントをしていきたいですね。
たとえば、この壁のイラストを描いてくれたチョークボーイさんによるアートのワークショップや、グアテマラのブレスレットを作るワークショップとか。
ONIBUS COFFEEにいろんな人たちが集まって、そこから新しいつながりやアイデアが生まれていくのが、僕たちもすごく楽しみなんです。
わたしたちも、これからのONIBUS COFFEEさんの展開がとっても楽しみです。ぜひ今度はワークショップに参加させてください! 今日はおいしいコーヒーとすてきなお話をありがとうございました。