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愛知の繊維業を未来につなぎたい。アパレルブランド「UZUiRO」の型破りな服作りと正攻法のEC運営

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
愛知県西尾市、三河湾のほとりの古民家で営む草木染めのアパレルブランド「UZUiRO」。三河木綿や知多木綿などの地場素材を使用し、着心地のよいレディース・ユニセックスのカジュアルウェアを製造・販売しています。今回は、代表の青木 淳さんに、これまでの歩みやコロナ禍での売上成長、「カラーミーショップ大賞」受賞後の変化、今後の展望について、詳しくお話を伺いました。

育休中の趣味から始まったアパレルブランド

まずは、「UZUiRO」を立ち上げた経緯を教えてください。

妻が育休中の趣味として古着のリメイクを始めたことが始まりです。
それを僕がサイトにあげたり、Instagramに投稿したりしていたのですが、これが意外と好評で、友人・知人から制作を依頼されるようになりました。


僕もちょうど転職活動をしていたタイミングだったので、「ちょっとお小遣いでも稼げたらいいな」くらいの気持ちだったのですが、徐々に注文件数が増えて、夫婦で手応えを感じていました。

その後、正式に屋号を構えることにしたタイミングで妻も仕事をやめて、マルシェでの手売りをメインに活動するようになりました。

当初は副業のような立ち位置だったんですね。古着のリメイクから現在のコンセプトに転換したのには、どういったきっかけがあったのでしょうか。

友人知人に頼まれて作るうちに、材料となる古着のストックがなくなってしまったので、生地屋さんで材料を仕入れるようになりました。

そこで気付いたのですが、洋服と違い、生地そのものには「○○産」という表記がほとんど見当たらないんですよね。
どこで作られたのか分からないまま、ほとんど色や柄だけで選ばれていることに驚きました。

確かに、洋服にはタグがついていますが、生地そのものに産地は記載されていませんね。

当時は、マルシェで手売りをしながら実店舗も立ち上げて、使う生地の量がだんだん増えてきたので、より安く仕入れる方法を模索する必要も生じていました。

そこで、古くから繊維業が盛んな地元愛知の工場を訪ね、生地の仕入れ交渉を始めたんです。

いきなり飛び込んでいったんですか。

そうです。何の知識もないまま「ここで作ってる生地って分けてもらえるんですかね?」って。愛知県内のあらゆる繊維工場を、夫婦で100軒以上は訪ねたと思います。


当然、業界にはさまざまなしきたりやロットがありますから、「いやいや、そんなのできないよ」とお断りされるケースも多かったです。
「買うなら最低でも数百メートル単位からだよ」と言われることもありました。僕らとしては15メートルもあれば十分だったんですけど。

数百メートル単位となると、置き場もないですよね。どのように交渉されたんですか。

工場さんとのお付き合いは、余り物を買い取ったり譲ってもらったりするところからでした。
もちろん、今では正規のお取引をさせてもらっていますが、第一印象は「なんか変なやつらが来たぞ」って感じだったと思いますよ(笑)。

当時の僕らは何も知りませんでしたが、繊維工場で作られる生地には染色加工前のものが多いんです。なんとか生地を仕入れても、自分たちで加工設備を整えなければ服が作れない状況でした。

UZUiROさんが自社で草木染めを行うのは、加工前の生地を仕入れていたからなんですね。

はい。
一般的なアパレルブランドさんは、「こういう製品を作りたい」というゴールから逆算して生地を仕入れ、生産体制を整えますよね。
しかし僕らの場合はその逆で、仕入れの条件や環境に合わせて自分たちの生産体制を作り上げてきたので、他のブランドとは成り立ちや毛色がかなり異なると思います。


今思えば、地産生地を仕入れるようになったのも、環境に合わせた選択の一つでした。車で1時間以内に行ける地元の工場なら、子育てしながらでも通いやすいですからね。

コロナ禍で販売したマスク・部屋着が大ヒット

さまざまなご苦労の中、自社ECサイトを立ち上げた経緯を教えてください。

地方に住んでいる以上、マルシェや実店舗で売るだけではなかなか事業を広げていけませんよね。全国へ届けるためにもECは当初からやるつもりでいました。

創業当時は、Instagram投稿に英語のハッシュタグをつけるだけでも海外からのリアクションがけっこう付いたので、海外販売にも対応している無料カートサービスでECサイトを立ち上げました。

でも、やっぱり作っただけでは売れるはずもないんですよね。
SNSからの流入でどんどん売れるかと思いきやそんなに甘くはなく、鳴かず飛ばずの日々でした。

その後、無料カートからカラーミーショップに移行したのはなぜですか。

無料カートサービスはコストがかからないのが利点ですが、サイトデザインを思い通りにカスタマイズできないことが不便でした。

SNSとECサイトで一貫した世界観を表現したかったので、いくつかのサービスを比較した上で、カスタマイズ性に長けていてコストも手頃なカラーミーショップに切り替えました。

移行後のサイトも、青木さんが構築されたのでしょうか。

自分たちなりにおしゃれなデザインを考えて、コーディングだけ知人に依頼しました。
それでも全然うまくいかず、最初の1年くらいは月商10万円もいかない月ばかり。このままではダメだと思い、制作会社さんに改めて作り直してもらいました。

ブランドの世界観は、バナーやコンテンツなどを通じて自分たちで表現できるので、お客さまが使いやすく、探しやすく、買いやすい設計を最優先にしてほしいとオーダーしました。

売上が少しずつ増えてきたのはいつ頃からでしたか。

カラーミーショップへ移行後、少しずつ増えてはいましたが、決定的に伸びたのはコロナ禍です。

たまたまガーゼ生地を使った商品を展開していたうえ、ゴム屋さんとも付き合いがあったので、それを活かしてマスクを販売したことが売上成長につながりました。

マスクの他にも、ちょっと近所に行けるようなワンマイルウェアや部屋着などのアイテムも時代にちょうど合っていたのか、一気にお客さまが増えました。マスクなんて100個入荷してもすぐ完売してしまうほどでしたから。

すごい勢いですね。

今考えても驚くほど広告がうまく回っていて、ROASが5,000%に届くこともありました。広告出稿をスタートしたのがその頃からだったので、当時はちょっと感覚が狂っていたと思います(苦笑)。

マスクを買ってくださった方に向けて、後日「実は僕らはマスクだけでなく、こういう部屋着も展開しています」「今お使いのマスクと同じ材料で服も作っています」と訴求したところ、さらに売上が伸びました。

コンテスト受賞をきっかけに施策を見直し、大幅成長

コロナ禍前後で大きく売上成長を遂げた中、2022年にはECサイトのコンテスト「カラーミーショップ大賞」を初めて受賞されました。授賞式で印象に残ったことはありますか。

豪華な会場に興奮して、「すごい! ついに僕らもこんなところに呼んでもらっちゃったね!」と最初こそ盛り上がっていたんですけど(笑)、懇親会で他のショップさんたちとお話しするうちに、ECに対する取り組み方のレベルが僕らとは全然違うことを痛感させられました。


僕らの場合は、素人感覚でたまたまやってみたらたまたま売れただけ。他のショップさんはもっといろんなことを考えながらマーケティング施策を積み重ねていたんです。

新幹線で愛知へ戻る頃には、「やっぱり僕らはまだまだだね」と夫婦でヘコんで反省したのを覚えています。

受賞をきっかけに変化したことがあれば、教えてください。

感覚に頼って運営するのではなく、基本的な施策をもっと徹底しようと思いました。
ページを改善したりアプリを試したりして、お客さまはなぜここで離脱するのか? なぜリピート率が伸び悩むのか?といった課題を、一つ一つ確実に潰していく考え方に変わりましたね。

初受賞から数年が経った今でもそれは変わらず、僕らが注力しているのはあくまでECサイト運営の基本の「き」。特殊な施策ではありません。

もう一つ見直したのは、経営資源の配分です。
自社ECと並行する形で出店していたECモールに割くコストを減らし、自社ECの運営に注力しました。それと同時に、なるべく自社ECにお客さまが集まるよう、集客施策の軌道修正も図りました。

自社ECの運営に注力したのはなぜでしょうか。

ECモールにはECモールの世界観があり、そこに集まった方が推してくださるからこそ、僕らは何万件ものレビューを獲得しながら販売してこれました。
ですが、一度買ってくださったお客さまとのつながりを保ち続けるには、顧客リストを自社で所有する必要がありますよね。

ECモールでは、それが難しいんですよね。

そうなんです。「うちの商品を買いたい」と言ってくださるお客さまには、せっかくなら自社ECのほうに魅力を感じてもらいたい。
そのために、利便性向上やお得な情報の発信に少しずつ力を入れていきました。

かつての売上構成は、ハンドメイドECモールの比率が最も大きかったですが、自社ECの運営に注力してからは比率が逆転し、事業全体を大幅に成長させることができました。

売上アップに貢献した機能やアプリはありますか。

いろいろありますが、中でも「U-KOMI」はかなり効果を感じられています。


商品を購入したお客さまからクチコミを集めてわかりやすく表示できるほか、トップページではSNS投稿をカテゴリー別に掲載可能なので、日頃Instagramを力を入れている僕らとしては非常に助かっています。

他にはCRMツール「アクションリンク」や、リピーター施策に有効な「会員ランク」機能で得られる売上インパクトも大きいです。

愛知の繊維業を遠い未来へ伝えるために

今後のUZUiROの展望について教えてください。

UZUiROが掲げているミッションは「100年後もこの地域でおもしろい服を作りたい」。愛知県の繊維業が少しでも長く未来に続いていくような、価値あるブランド・商品を作っていくつもりです。


僕らの扱っている地産生地は、どこからでも仕入れられる材料ではないので、取引先の工場がなくなってしまうことこそが最大のリスクなんです。
できることは限られていますし、まだまだうまくいかないことも多いですが、生産者とお客さまの橋渡し役を担うつもりで、とにかく皆さんに喜んでもらえるモノを作っていきます。

ECサイト運営の目標はいかがですか。

UZUiROを好きでいてくださるお客さまと、ECサイトを通じてさらに深くつながりたいです。

最近、10周年記念のリアルイベントを開催したのですが、普段SNSを見てくださっている多くのお客さまから「この機会に直接お会いしてみたい」と言ってもらえたのがすごく嬉しくて。

言ってしまえば、ECサイトって購入・決済のためのツールですよね。
にもかかわらず、今ではたくさんの方と交流し、深くつながれる一つのきっかけとしても機能していることを実感しました。

今後は、もっとたくさんのお客さまとお会いして深い関係性を作っていきたいですし、そうした活動がさらなる事業成長につながり、遠い未来で僕らの大きなミッションを実現するための大きな一歩にもなると考えています。

100年後のUZUiROさんと愛知の繊維業を覗いてみたくなりました。今日は素敵なお話をありがとうございました!