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ローカルSEOって重要?ネットショップ運営におけるローカルSEO術を伊藤さんに聞いてみた。

ローカルSEOとは、地域や店舗情報に特化したSEO施策のこと。お店を探すユーザーに向き合い、自分たちの店舗情報が検索エンジンやマップの検索結果に表示されるように最適化を図り、来店につなげる手法として注目されています。

今回は、iSchool合同会社代表であり、株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)にて顧問を務める伊藤亜津佐さんに、今日からできるローカルSEO術について詳しくお話を伺いました。

iSchool合同会社代表、株式会社Faber Company顧問 伊藤 亜津佐さん
大学卒業後、株式会社キーエンス、逗子市役所を経て、2015年よりWebの世界へ。2015年5月、iSchool合同会社を創業。SEO・ローカル検索のコンサルタントとして、企業のWeb集客をサポート。2021年6月、株式会社Faber Companyの顧問に就任し、「ローカルミエルカ」を支援。

Google公式ヘルプコミュニティにて、以下のステータスを取得し活動中。
・Googleビジネスプロフィール  ダイヤモンド プロダクトエキスパート
・Google検索セントラル  プラチナ プロダクトエキスパート
・Google検索 ゴールド プロダクトエキスパート

著書:いちばんやさしいGoogleマイビジネス+ローカルSEOの教本 人気講師が教える「地図」で伝えるこれからの集客術
Twitter:@ischool_ito

伊藤さんについて教えてください

伊藤さんのプロフィールをお伺いできますか?

大学卒業後、株式会社キーエンスでセンサーのB2B営業を経験したあと、神奈川県にある逗子市役所に転職して、経済観光課で花火大会や海水浴客の誘致に従事しました。その後、Web業界に興味を持ち、2015年5月に企業のWeb集客をお手伝いするiSchool合同会社を立ち上げました。

現在コンサルタントとして自社のお客様をサポートするだけでなく、株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)の顧問を務めるなど、さまざまな業種のクライアントをサポートしています。

Webの世界を志すきっかけとなったのは、Faber Companyの鈴木謙一さんが開設している『海外SEO情報ブログ』に出会ったことでした。当時の記事に、「今は検索エンジンの精度が上がり、良いコンテンツを正しく評価できるようになってきている。ユーザーが求めている有益なコンテンツを提供すれば、検索エンジンから集客できる」といった主旨のことが書かれていて、Webビジネスの将来性に一気に惹かれました。

実は、Googleヘルプコミュニティでの活動を始めたのも鈴木さんがきっかけでした。今でも多いですが、起業から3年くらいは特にSEOについてわからないことも多く、ヘルプコミュニティで質問を投げかけたところ、たまたま鈴木さんから回答をもらえました。

SEOのエキスパートが一般ユーザーの質問に答えるという活動に共感して、次第に私自身も勉強しながらヘルプコミュニティで回答するようになっていきました。今後は、ヘルプコミュニティを超えた幅広い分野で貢献できたらいいなと思っています。

ローカルSEOとは?

SEOはネットショップオーナーさんにも認知されてきていますが「ローカルSEO」をまだ知らないよという方も多いので、ローカルSEOについて教えていただけますか?

Googleなどの検索エンジンで地域のお店を検索したときに、その地域の店舗情報が検索結果に表示される仕組みのことを「ローカル検索」といいます。「ローカル」は「地元」や「地域」を指しますよね。

一般的にローカルSEOは、ローカル検索結果で上位に表示されるように最適化することを指しますが、これはあくまで一般論で、人によって定義や対象範囲はまちまちです。ローカルSEOにはいくつかの解釈があります。

  1. ローカル検索(Googleの検索結果のローカル枠)で、Googleが持っている店舗情報のランキングを改善すること
  2. オーガニック検索でローカライズされた検索結果が表示されるように最適化すること
  3. Googleニュースのローカルニュース枠に表示されるように最適化すること

ローカルSEOの対象を広げると理解するのが難しくなるので、今回は1番目にフォーカスしてお話していきます。

少し話はそれますが、Googleの使命をご存じですか?Googleは、「世界中の情報を整理して、誰もが便利に使えるようにすること」をミッションとしています。

昔の検索結果には10本の青色リンクが並んでいるだけでしたが、近年はローカル検索をはじめ、画像や動画、ショッピングなどのタブが表示されたり、リッチリザルト、他の人はこちらも質問、関連キーワードなど、多様なフォーマットの中から最適な検索結果が表示されるように進化しています。

リンク先を見なくても検索結果だけでユーザーの悩みが解決でき、利便性が向上しているのが今のGoogleだということも覚えておいてください。

ローカル検索の結果はどこに表示されるのですか?

お店や施設、地域の情報を検索すると、検索結果の上部に「ナレッジパネル」や「ローカルパック」と呼ばれる枠(情報ボックス)が出現します。ローカル検索の結果はこの枠内に表示されます。

店舗名などで指名検索したときに上部右側に出てくる枠がナレッジパネルです(デスクトップでの検索)。ここでは、店舗の画像や店名、住所、営業時間、星やレビュー数が表示され、お店の基本情報を知ることができます。また、電話や経路案内のボタンも表示され、ユーザーは来店に繋がる行動を取ることもできます。

ローカルパックは、業種名、または「ラーメン 新宿」のように業種名と地域を掛け合わせて検索したときに出てくるもので、地図の下に3店舗の情報が表示されます。こちらも、お店の基本情報だけでなく、星やレビュー数、写真も表示されるので、お店選びに役立つ情報をユーザーに提供しているといえるでしょう。

ローカル検索には3つの特徴があります。ひとつは、検索結果のファーストビューに表示されること。基本的にオーガニック検索よりも目立つ位置に出てきます。

もうひとつは、ユーザーが検索する場所や業種によって表示されるお店や地図の大きさが変わること。歌舞伎町などお店が密集しているエリアで居酒屋を検索すると、徒歩で50メートルずれただけで違う店舗が表示されます。

一方で、自動車整備工場などを検索したときは地図がズームアウトして、車で行ける範囲の工場が表示されます。ユーザーがお店にどのような交通手段を使うのかによって地図の尺度が変わるところも、ローカル検索の面白いところです。

最後のひとつですが、ローカル検索の情報はGoogleが所有する店舗情報だということ。通常のSEOは対象が自社のWebサイトですが、ローカルSEOではGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)が対象になります。

GoogleでローカルSEOをおこなうメリットとしてはどんなことがありますか?

ローカルSEOは、ローカル検索の順位を上げるための施策といわれることが多いですが、それはメリットの一部でしかありません。私自身は、Googleにお店やブランドの価値が正しく評価され、検索結果の露出度が増えることで、検索から来店までのユーザー体験の質が上がるところに価値があると考えています。

結果としていい口コミをたくさん獲得できれば、口コミを見たユーザーが「お店に行こう」という気持ちになったり、SNSでシェアされて指名検索やサイテーション(citation=引用)が増えたりして、より選ばれる可能性が高まるのではないかと思います。

また、ユーザーと店舗とのタッチポイントとして役立つことも利点でしょう。雑な分類で恐縮ですが、タッチポイントには「発見」「検索」「来店」と3つのフェーズがありますよね。Googleはこれまで、検索(Google検索)と来店(Googleマップ)のフェーズは強くても発見については弱かったと思います。

でも今は発見のフェーズでも提供できるサービスが広がっています。具体的にはYouTubeや画像検索、Discover、ショッピング検索などです。発見についてはまだまだ他のサービスのほうが強いかもしれませんがGoogleのサービスも拡大して利便性が高まっていることは意識しておくべきでしょう。

Googleのローカル検索のトレンドを教えてください

Googleが最近、在庫検索に力を入れている点は見逃せません。Googleの公式情報によると、商品の購入を決めたユーザーは、Googleマップで最寄りの店舗を探す傾向にあるようです。

「近くで買い物(shopping near me)」検索は、2021年12月から2022年2月までの利用率が、前年同月比で2倍以上に増えているそうです。オンラインで最寄りの店舗の在庫がわかれば便利ですよね。

この「近くで買い物(shopping near me)」検索に対応させるには、Google Merchant Center(マーチャントセンター)を使います。ここで商品の在庫数を登録すれば、ローカル検索に在庫状況を表示できるようになります。

ただ、フィードを作成する手間があり、利用している企業のほとんどは大手です。個人のショップオーナーさんが利用するのは難しいかもしれませんが、現在、ShopifyなどGoogleのパートナーの e コマース プロバイダ経由で接続することもできるようです。

Googleでは「Pointy(ポインティ)」というサービスも提供しています。こちらはレジの情報などと紐づけて、在庫情報をローカル検索の結果に表示できるものですが、日本ではまだ提供されていないので残念ながら利用できません。

Googleビジネスプロフィールについてはローカルミエルカのコラム内でも解説していますので参考にしてください。

ローカルSEOの実施方法

ローカルSEOの意味やメリットはわかりましたが、実際に店舗情報を表示させるには、どうすればいいですか?

まずはGoogle検索やマップでご自身のお店を検索してみてください。

新規店舗の場合、Googleマップに店舗情報がないため、ショップオーナーさんご自身で登録する必要があります。その一方、開店から何年も経っているお店は、すでにGoogleかユーザーによって登録されている場合が多いです。

次にGoogleビジネスプロフィールの「オーナー確認」をおこないます。これにより、ショップオーナーさんが優先的にビジネス情報を更新できるようになります。第三者によってGoogleマップに登録されている場合、情報が正しいかどうかを確認して、間違いがあればすぐに修正したほうがいいですね。

ちなみに、Googleビジネスプロフィールの情報は、ショップオーナーさんが修正・更新できるだけでなく、ユーザーからのリクエストによって修正されることもあります。

たとえば、お店の営業時間が違うことに気づいたユーザーが、Googleに対して「正しい時間はこれですよ」とリクエストを出し、審査に通ればその情報が反映されます。またGoogleが修正することもあり、店舗のWebサイトやポータルサイトの情報をクロールして、違いがあれば自動修正されることもあります。

写真については悩ましい部分もあります。自分で載せた写真は自由に削除したり差し替えたりできますが、ユーザーがアップしたものはGoogleのポリシーに反していない限り削除できません。

口コミも同様で、ポリシーに反していない限り削除されることはありません。そのため、不本意な写真や口コミに対して、どう対応したらいいかわからないという相談を受けることもあります。

Googleに削除リクエストをしてみるのも一つの手だと思います。また、不本意な口コミについては、ネガティブな口コミとその返信が、第三者にどのように映るかまで意識することが重要です。口コミが事実ならば謝罪と共に改善策を伝えていきましょう。

Googleは、機械学習などを使って口コミの精査をおこなっています。詳細はブラックボックスですが、Googleは口コミの信頼性を維持するために、様々な取り組みをおこなっています。新規アカウントの口コミはなかなか反映されにくいと聞きますが、これも不正レビュー対策のひとつでしょう。

検索エンジンにはいくつか種類がありますが、やはりGoogleから始めるのがいいですか?

日本国内の検索エンジンのシェアを考えると、Googleから始めることを推奨します。2022年12月のstatcounterの調査によると、デスクトップにおけるGoogleのシェアは約72%、Bingで約16%、Yahoo!で約10%という結果でした。モバイルでは約80%がGoogleで、Yahoo!は約18%だったので、やはり7~8割のシェアを誇るGoogleから始めるのがベストといえます。

Yahoo!、Bingにもローカルパックやナレッジパネルと同様の仕組みがあり、Yahoo!プレイスやBing Placesに登録すれば、それぞれの検索エンジンに店舗情報を表示できるようになります。

また、地図のシェアの高さもGoogleを推奨する理由の一つです。少し古い情報ですが、2020年5月のニールセンのデータによると、Googleマップの月間利用者数は4,717万人で1位。2位がNAVITIMEの1,189万人、3位がApple Mapsの1,099万人で、Googleマップが圧倒的なシェアを獲得しています。

余力があればGoogle以外にも対応したほうがいいですが、優先順位をつけるとしたらGoogleからがいいですね。

海外の人向けにもローカルSEOはやったほうがいいですか?

そうですね。検索結果に表示される店舗情報は多言語化しておいたほうがいいです。Googleアカウントや端末の言語環境が英語なら、検索結果は英語で表示されます。

そこで、Googleマップ上で英語表記の店名を追加しておけば、インバウンドのお客さんも辿り着きやすくなると思います。英語以外にも中国語やフランス語などにも対応しているので、確認してみてください。

ネットショップオーナーさんの中には実店舗をお持ちでない方もいらっしゃいます。そういった方が取り組めるローカルSEOはなにかありますか?

Googleビジネスプロフィールについていうと、オンラインのみでビジネスをおこなっている組織やアーティスト、個人は対象外になります。ネットショップだけ展開しているオーナーさんがGoogleマップに店舗情報を載せることはできません。

仮に自分の家や倉庫の住所を載せたとしても、そこで商品を販売していたりサービスを提供していたりするわけではないので、意味がありませんよね。

では、なにもできないのかというとそんなことはなくて、ローカルSEOの対象範囲を広げればできることはあります。

ネットショップしかない場合、ナレッジパネルやローカルパックに表示されることを狙うのではなく、冒頭でローカルSEOの説明をした際に2番目に挙げた「オーガニック検索のローカライズされた検索結果」や、3番目の「ローカルニュース枠」に表示されるにはどうしたらいいかを考えて施策を実行してみてください。

ちなみに、お掃除サービスや配管工事・水道工事業者など、お客さんのいる場所に出向いてサービスを提供する業態で、事務所がなくてもビジネスの実態がある場合は、非店舗の扱いでGoogleビジネスプロフィールに登録することができます。とはいえ、そのエリアで営業の実態がなければポリシーに反するので登録できない、と認識しておいたほうがよいでしょう。

今日からできるローカルSEO術

この記事を読んだネットショップオーナーさんが今日から取り組めることを教えてください

まず、Googleビジネスプロフィールの内容をチェックして、店舗名、住所、カテゴリ、属性などの基本情報を整備することから始めてください。1時間もあれば整備できると思います。

それから、継続的におこなってほしいのが、Googleを通じてお客さんとのコミュニケーションを深めるために、お店の魅力が伝わるような店舗写真や最新情報を発信することです。また、口コミ対応も重要です。

大手チェーン店などでは口コミ数も多いため返信するリソースがなかったり、中にはブランドに対する苦情など店長判断で答えられないものもあるかもしれませんが、小規模な店舗ならば、きちんと返信したほうがいいです。顔の見える対応がユーザーからの評価につながると思います。

さらに、どこで検索しても正しい情報が出てくるように、インターネット全体で店舗情報を統一させることも大事です。とくに、Name(名前)・Address(住所)・Phone(電話番号)・Operating hours(営業時間)の頭文字を取って「NAPO」と呼ばれる箇所をしっかり統一させると、顧客満足度が高まります。

情報更新する際は、自社のWebサイトやポータルサイト、SNS、Yahoo!プレイス、Bing Places、Apple Mapsなど、登録されているものはすべて更新するようにしてください。

ユーザーの目に触れる媒体の情報を統一させておくと、来店時にユーザーが迷うこともなくなると思います。

この記事をお読みいただいた方はぜひお店の情報を検索していただきたいです!最後にこの記事をお読みいただいた方へ一言お願いします!

コロナ禍になって顕著に感じていることですが、ビジネスが順調な店舗さんや会社さんは、デジタル上における顧客との接点を増やすだけでなく、今まで以上にデジタルを活用して顧客と深く繋がっているところが多いと思います。

ローカルSEOをおこなう場合も、近年はオンラインとオフラインがシームレスになっているので、ネットショップと実店舗の両方を運営しているのであれば、どのようなショッピング体験を提供すれば、ユーザーに付加価値を感じてもらえるのか意識してください。

カスタマージャーニーを把握してさまざまなタッチポイントでお客さんと深く繋がれるような工夫を続けていけば差別化を図れるはずですよ。

伊藤さんありがとうございました。