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3年待ちのパン切り庖丁から見たこともない漁業用までタダフサさんの庖丁を見せてもらいました!

鍛冶の町として有名な新潟県三条市にある株式会社タダフサさん。“基本の3本、次の1本”をコンセプトにしたブランド「庖丁工房タダフサ」が大人気のメーカーです。今回はタダフサさんがつくる庖丁の中から人気の家庭用庖丁や職人さん向けの専門庖丁など自慢の品々を見せてもらいました。

番頭の大澤 真輝さんにファクトリーショップを案内してもらいました

人気の庖丁、いちばんの売れ筋は?

基本の3本(パン切り・三徳・ペティ)、次の1本(牛刀・出刃・小出刃・刺身)

家庭用庖丁ブランド「庖丁工房タダフサ」中では、どれが人気ですか。

あの放送がある前は、いちばんスタンダードな三徳庖丁が人気でしたね。

あの放送?

テレビ番組でマツコ・デラックスさんにパン切り庖丁を紹介してもらったんです。そしたら3年待ちぐらいの注文をもらっちゃって…

これが3年待ちのパン切り庖丁

3年待ち! パン切り庖丁が人気なんですね。

そうなんですよ。6年前に発表したモノなんですけど、フードスタイリストさんたちが私物として使ってくださっているようで、今でも雑誌などに取り上げてもらえることが多いんです。

人気の秘密はいったい…?

うちのパン切りが他と決定的に違うのは鋼が入ってる点です。

鋼ですか。

一般的なパン切りはオールステンレス製でのこぎり状のかたちをしているんですけど、このパン切りは構造的にはここらへんにある他の家庭用庖丁とほとんど同じ鋼が入っているので切れ味が鋭いんです。

先端だけギザギザ、あとはまっすぐ

先端だけギザギザしているのは、パンをつぶさずに切るためで…

ギザギザでパンの耳をカットしたら、あとはすーーっと下ろすだけ。

で、最後にまた耳の部分をギザギザでカットして引き上げる。

断面がボロボロになることなくカットされました

切り口がとてもなめらか…!

この庖丁、東京の人気のサンドイッチ専門店さんとかも使ってます。

サンドイッチ屋さんが愛用するのも納得です。ストレスないな〜。この庖丁、どうやって発明されたんですか?

家庭用庖丁の新しいブランドをつくるときに「うちの庖丁は1000種類もあるけどパン切り庖丁はないな」と気づいたんです。

パン人気が盛り上がってきているなか、いくら切れるからといってうちの古くからある庖丁は食卓には出しづらいですし、パンを切りやすい形状や目の数・深さ・見た目を考えて新たにつくったんです。

そもそも庖丁が1000種類もあったんですか。

そうなんですよ。これからその一部をお見せしますね。

漁業用庖丁を見せてもらいました!

今は70種類くらいの庖丁をカタログに載せているんですが、それよりもっと前は1000種類以上の庖丁を卸売していました。

タダフサさんがこれまでにつくってきた庖丁の一部

創業者…社長の祖父にあたる寅三郎さんという方がいるんですけど、彼がはじめにつくっていたのは「曲尺」という大工道具だったんですね。

そこから時代のニーズにあわせて職人さんが使う庖丁をつくりはじめ、種類がどんどん増えていったかんじです。その大半は北海道や東北のお客さんへ卸す漁業用の庖丁なんですけど。

漁業用庖丁というと、どんなものがありますか?

たとえば「まぐろ包丁」は見たことあるかもしれません。

目の前で見るのは初めてです! この変わったかたちの庖丁はなんですか?

これは「カニ定規」といって、右の刃がついているほうでカニの汚れや足をとって、左のカーブで甲羅の大きさを測るんです。乱獲防止用といいますか大きなカニだけを獲るための目安だったんです。

そんな機能がついているんだ…!

ちょっと珍しいのでいうと、この庖丁はなんで先端に玉がついてるかわかりますか?

なんだろう…怪我しないようについているのかな?

おしいです。これは「玉つき庖丁」といってイクラのような魚卵をとりだすとき卵を傷つけないよう庖丁の先端に玉がついているんです。

なるほど〜!

変わった形状のものだと「わかめ鎌」は、L字形になってるところにわかめを引っ掛けて引き揚げられるようにつくられているし…

あとは農耕用の庖丁もあります。「レタス切庖丁」は畑でレタスを刈り取るときに使うもので…「白菜切庖丁」「人参切庖丁」なんかもありますね。

庖丁の博物館みたいですね。

これでもまだまだ、ごく一部です。実は、漁業用の刃物は家庭用に比べて遥かに多くの注文をもらっていました。今では考えられないですが、漁業用庖丁は遠洋漁業のとき船にたくさん積み込んで使い捨てで消費されていたからで。

庖丁の使い捨てですか!

そうそう。昔の遠洋漁業では500kg魚が獲れたら同じ量の包丁を海に捨てて帰ることもあったそうです。近年はそんなふうには消費されないので、家庭用や料理用の庖丁を充実させるようになりました。

こうやっていろいろ見せてもらったあとだと家庭用は見慣れたかたちで安心します。

家庭用庖丁って素材やデザインは違いますけど、世界的に見てもほぼスタンダードな形が決まってるんですよね。国や文化に合わせてデザインを大きく変える必要がないので、海外市場にも入りやすいというメリットはあります。

タダフサさんの庖丁は品質の高さから海外でも人気

どんな庖丁もメンテナンスが大事

庖丁にもいろいろな用途のものがあるんですね。

そうなんです、どれが良い悪いじゃなくてそれぞれメリットがあるんですよね。たとえば一般的に「錆びにくい」と言われているステンレスもご覧のとおり錆びます。こういう特性を理解したうえで購入後はしっかりメンテナンスまでしてもらいたい気持ちがあります。

そういう気持ちの現れとして、うちの庖丁は「庖丁問診表」というものをつけていて、購入時にパッケージとしてついてきたダンボールの箱に庖丁をいれて送り返していただければ、有料で研ぎ直しも承っています。

タダフサの庖丁はもちろん、他社製・海外製も大歓迎です。

製造だけではなくメンテナンスまでサポートしているんですね。

とはいえ恐る恐る使われるよりも、気軽な感じで長く付き合ってもらいたいので、もっと研ぎ方を教える動画コンテンツとかワークショップなんかを充実できたらなと考えています。

教科書にタダフサさんが掲載されている

ちなみにうちの工場では社会科見学も受け付けているんですけど、イベントのときには小学生に庖丁の研ぎかたを教えたりもしています。このあたりの小学生たちは日本でいちばん庖丁を研げるかもしれません。(笑)

贅沢な社会科見学だ〜…!

よかったら工場もご案内しますよ!

ぜひおねがいします!

工場を案内してもらいました!

近日公開の記事で工場見学の様子をレポートします。どうぞおたのしみに。

こちらの記事もあわせてお読みください!

こちらのインタビューでは、タダフサさんの直営ショップやイベントの運営など近年の新しい取り組みについて詳しく伺っています。ぜひお読みください!

インタビューを読む

今回ご紹介したショップ
庖丁工房タダフサ
新潟県三条市の庖丁メーカー。“基本の3本、次の1本”をコンセプトにしたシリーズが大人気。ネットショップでは庖丁とその周辺にまつわる雑貨を販売しています。
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