和服を現代に甦らせ、世界へと発信する「SOU・SOU」を生み出した「好きな人どーぞ」のブランディング

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ショップオーナーインタビュー SOU・SOU 若林剛之さん

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地下足袋、和服、和雑貨を独自のテキスタイルを使った個性的なデザインで現代に再提案し続けている「SOU・SOU」さん。ユニクロをはじめとする大手企業とのコラボでも多くの話題を呼んでいます。2007年にオープンしたネットショップも順調に規模を拡大し、昨年のカラーミーショップ大賞では見事大賞を受賞されました。大賞受賞を記念して、SOU・SOUを作り上げたプロデューサーの若林剛之さんにお話をお聞きしました。


「雑誌に発信してもらいたい」ではなく「自分たちから発信しよう!」

カラメル大賞4年連続受賞に続き、昨年はカラーミーショップ大賞2015の大賞と、私たちスタッフもすっかりファンの「SOU・SOU」さんですが、もともとネットショップはどうして始めようと思ったんですか?

若林
たまたまパソコンが得意なスタッフがおりまして「パソコンでできる仕事やろか?あ、ネットショップええやん。」くらいの軽いノリで始めました。

軽いですね…! カラーミーショップを選んでいただいたのはなぜでしょうか。

矢寺
とにかく安かったからですね。同じことができるサービスよりもかなり安かったから。最初は儲かるのかもわかりませんでしたし。

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((左)ネットショップ担当:矢寺和成さん (右)プロデューサー:若林剛之さん)

いきなり儲かると思われていたわけじゃないんですね。

若林
どちらかというと、僕は否定的だったんです。こちらは、色も生地感もとてもこだわって作っているのに、それを触ることなく、買うわけじゃないですか。「そんなアホな!」と思いました。実際、一番最初に売れたのは座布団でしたしね(笑) ああ、こういう物ならありだなと思いました。
それが今では、すばらしいクオリティのネットショップになっていますね。

若林
時間が経つにつれて、ネットショップの重要さを感じるようになってきたんです。

というのも、SOU・SOUは、既存のファッションジャンルに当てはめることができないスタイルなので「ここに載りたい!」といった雑誌やメディアがないんです。そうなると、自分たちで発信するしかないじゃないですか。

たしかに…。SOU・SOUさんと同じジャンルのファッション雑誌ってないですね。

若林
インターネットでは、共通の趣味や悩みを持っている人達が、離れていてもコミュニケーションできるので、地元では少数派だった人たちがかんたんに繋がることができますよね。

そう考えると、大きな売上をすぐに出さなくても「こだわったものを作ってインターネットで発信すれば、ひとつのネットワークのようなものを作れるな」と思いました。

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2007年にそこまで気づかれていたショップさんは少なかったように思います。SOU・SOUさんのような、ネットショップが個性的なブランドには、もってこいだったんですね。

若林
そうですね。

僕たちは、他人のメディアにのって、売れる売れないを左右されるんじゃなくて、自力で集客して、自立した会社になりたいと思いましたし、それは今も変わらぬ目標です。
そういったことがインターネットならできると考えてからは「ネットショップできちんとおもしろいページさえ作れば、あとは見に来てくれる人を増やすだけだ」という考えで運営するようになりました。

ブログは接客の場!ありのままの姿に触れて、スタッフのファンになってもらう。

SOU・SOUさんのブログは毎日更新されているんですね。

矢寺
そうですね。僕たちはブログも接客の一つだと思っているんです。ブログでは、スタッフがモデルをつとめていて、それを見たお客様が実際にお店に来て下さった時、もうすでに知っている人のような気になるので、リラックスしていただけると思いますし、”知ってる人だ”ということで喜んでいただけたりもしますね。

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たしかに、今日スタッフのみなさんにお会いした時に、初めての感じがなく、とても嬉しかったです。SOU・SOUさんのブログは、やっぱりおしゃれな話題も多いのですが、みなさんの日常が見られる感じがいいですね。みなさんとても、自然な姿をだされてますよね。

 

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若林
今は、リアリティの時代です。かっこつけてもすぐばれてしまう気がします。

80年代、90年代のファッションはもっとブランドが強くて気取っていましたけど、21世紀はもっとリアリティが求められているし、その方が新しいと思います。又、共感もされると思います。

だから商品はとことんこだわるけど、ブログは日常にあったことを自然に書いています。ただ、スタッフには「あんまり飲みに行った写真ばっかりアップしんといてや、SOU・SOUの人は酒ばっかり飲んでると思われるから」と言ってます(笑)

地下足袋にターゲットなんてない!「好きなひと、どーぞ。」のブランディング

ブランドのイメージを考えると、裏方の人や工場を出すのに勇気がいりませんか?

若林
そもそもブランドイメージはあんまり気にしてないんですよ。例えば、”30代の働く女性がターゲット”とかではなくて「好きな人、どーぞ。」のほうがいいと思ってます。

SOU・SOUさんが最初に大きく話題になったのは「地下足袋」でしたよね。その時も同じ気持ちだったんですか。

若林
まさに、地下足袋をつくった瞬間に、ターゲットという発想が不要だと思ったんです。自分たちが今までのビジネスで見てたのは5%くらいで、地下足袋を作った瞬間、残りの95%がターゲットとしているんや!となって視野がばーって広がったんです。

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(SOU・SOUの人気商品であるカラフルな地下足袋)

たしかに!おしゃれな地下足袋なんて、そもそもなかった分野ですもんね。

若林
そうですね。もちろん和装が好きな子もいれば、ただかわいいファッションが好きな子だったり、家で野菜作ってますよ、みたいなおばちゃんに気に入ってもらえたり。さらには、香港や台湾等のデザイナーズブランドにも、先が割れた履物って相性がよかったりしますし。観光に来てる外国人は、もう全員ターゲットですし。

自分たちが今まで見てなかったターゲットが山盛りあったっていうことを地下足袋で気付かされたんですよ。

“何か足りない”スキマにSOU・SOUが新しい価値を提案して生まれるコラボグッズ

ターゲットを設定しないというのは斬新ですね。

SOU・SOUさんは、ユニクロやle coq sportif(ルコック スポーティフ)などのファッションブランドに止まらず、グリコや宇治田原製茶場といった食品まで幅広くコラボレーションをされていますよね。それもターゲットがないことに関係しますか。

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若林
そうですね。そもそも、コラボは先方から来たオファーに、全部乗っかっているだけですよ。

あんなにたくさんあるのに、全部乗っかっただけなんですね!

若林
そうです。正確には、話をいただいたらこちらから提案をしてより良い企画になる様にしています。

SOU・SOUさんから提案をし直すんですね。

そうです。僕らにコラボを持ってくるところは、何か「足りない」と感じているんですよね。うちのデザインを乗っけることで、何かが完成するっていうイメージの人がくるから、今回はこういうアイテムなので、このデザインを載せましょうとか、こんなアイテムにしたほうがより良くなるのではと提案します。

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何かを買ったらSOU・SOUさんのグッズが付いてくる「ノベルティ」という形も多いと思いますが、それも提案するんですか。

若林
そうですね。ノベルティといえばトートバック、みたいな企画が多いんですが、何でもかんでもそうするよりは、カレー屋さんだったらカレーにまつわるものとか、お茶屋さんだったらコースターとか茶缶とかにしたほうがしっくり来ますよね。先方のブランド力も上がると思うんです。

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SOU・SOUさんにとってもコラボレーションはターゲットが広がったりといった利点はありますか。

若林
まあそうですね。お金をもらって宣伝もしてくださるので(笑)

でももっと大事なのは、先方はかなりのお金をかけられると思うんですよ。だからまず先方を儲けさせないといけませんね。損をさせてはコラボは成功したことにはならないと思いますから。そして、次にもつながりません。

ユニクロさんのステテコやUTはもう何年もコラボされていますもんね。弊社スタッフもたくさん買っていました。

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若林
一発目のアイテムがイマイチだったら次もう一回というチャンスはもらえないと思ってるんですよ。いろんなブランドがある中で、わざわざお声をかけてくださるわけなので、SOU・SOUと組んでよかったなって思っていただきたいので、結果を出す。つまり、売上が上がらないといけないと思ってやってます。

伝統文化を新しいビジネスにすれば、日本はもっと元気になる。

SOU・SOUさんはもう長く和服を手がけてらっしゃいますが、オリンピックや国の方針なのか、昨今は日本の中でも日本ブームが起こっていますよね。

若林
大震災も、きっときっかけの1つですね。「がんばろう!日本」が徐々に「メイド・イン・ジャパン」みたいな言葉に変わって「クールジャパン」やとか「物作りの国」みたいな言葉もどんどん言われる様になって。

そういった中で、伝統工芸に興味を持ったり、SOU・SOUさんのように新しいビジネスにしたいと考えている方も多いと思うんですが、どのように思われますか。

若林
いいことだと思いますね。特に、後継者がいなくて無くなってしまうところも多いので、若者にはどんどん入っていってほしいですね。

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そういった若者も増えてきている気がします。でも大変なことも多いですよね。

若林
そりゃきついですね。でも、時代の波から大きく外れて廃れていっているものを仕事にするのなら、それなりの覚悟を持てよって思いますね。

まず続けること。しんどいときもあるかもしれませんけど、口ベタな師匠や親方かもしれませんけど、頼まれたことをまずはやってみるのが大切やと思います。

とにかくやってみないとわからないということですね。

若林
そうですね。やってみないと好きかどうかもわかりません。それにどんな仕事でも、一生懸命にやったら、大概は楽しくなってくるものです。僕は、好きなことを仕事にするのはすばらしい事ですが、頼まれた仕事をやるのも同じじくらい素晴らしい事だって思うんです。

それが日本の伝統文化を継承するとかだと、日本全体がよくなりますね。

日本の伝統文化を生き返らせることで、日本が元気になりますね。

若林
日本はまだまだ自分たちの文化を売るのが下手なんですよ。フランスなんかはすごく文化を売るのがうまいんです。マカロンは世界で有名だけど、日本のどら焼きはあんなにおいしくて手間もかかっているのに、マカロンよりも世界的な地位が低い。

日本はいいものがいっぱいあるけど、文化的な発信力が弱いんです。だから、若い人がこれからビジネスやっていくときに、文化的な背景があるものをどんどん商売にすることで日本全体がぐっと盛り上がると思うんですよね。

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カラーミーショップ大賞で、そういうネットショップさんを表彰してはどうですか?地域や日本の文化を継承したり、新しいビジネスにされているショップさん。僕らがやるならそういうことやりたいと思ってしまいます。

なるほど!確かに思い当たる素敵なお店がたくさんあります。やりましょう!これからも、SOU・SOUさんのご活躍を期待しております!今日は本当にありがとうございました。


若林株式会社 代表取締役社長/SOU・SOUプロデューサー 若林剛之さんプロフィール

1967年 京都生まれ。高校卒業後、日本メンズアパレルアカデミーでオーダーメイドの紳士服を学んだ後、1988年(株)ファイブフォックス入社。1993年まで企画パターンを担当する。退社後、渡米。
1994年に自身で買い付けした商品を扱うセレクトショップをオープン。1996年オリジナルブランドRFPを立ち上げる。現在は、SOU・SOUのプロデューサーとして活動の場を広げている。2008年4月京都造形大学 准教授として就任。

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