急成長!実店舗やネットショップにとどまらない活動で大注目の八百屋「旬八青果店」の事業戦略

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旬八青果店 運営会社・株式会社アグリゲート
代表取締役 左今 克憲さん インタビュー

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東京都内に10店舗の実店舗を展開する八百屋「旬八青果店(しゅんぱちせいかてん)」。お店に並ぶ野菜を見てみると、ふつうの八百屋さんとは違ったユニークな品揃えに気づきます。実店舗・ネットショップはもちろんイベントや教育事業にも力を入れている旬八青果店。その取り組みについて、運営会社・株式会社アグリゲート代表取締役の左今克憲さんにお話を伺いました。

 

地方の抱える課題を根本から解決するために

左今さんは、なぜ農業でビジネスを始めたんですか?

学生時代にバイクで全国を巡る旅をしていたのですが、そのとき地方で若い人を見ることがなく「このままだと地方はまずいのでは?」と危機感を抱いたんですね。

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地方産業への危機感が、すべてのきっかけだったんですね。

そうなんです。その後、地方産業について調べてみると、外に売っていけるモノといえば農産物・農産加工品しかなかったんです。

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それで農業をビジネスにしていこうと考えたのですね。しかし左今さんはその後、まったくちがった業界に就職していますね。

最初は人材業界に営業として就職しました。地方の根深い課題としてどこも人手不足を抱えていたので、それを解決するために一度人材業界に入り、人気職種のなりたちや働きやすい環境のつくりかたを学ぼうと考えたからです。

その後2年ほどで退職されて、独立されたようですが。

はい。その後、株式会社アグリゲートをたちあげました。最初に始めた事業は、地方の生産者さんの営業代行業とネットショップでした。

一番始めに着手したのが、営業代行業とネットショップ。

そのときからカラーミーショップを使わせてもらってます。ローコストで始められるのでありがたかったです。そこでは取引先の農業生産者さんの野菜なんかを売っていました。

「商品」だけでなくそのまわりにある
モノ・コトを最大限活用

現在は自社ブランドの八百屋「旬八青果店」のほか、通販事業、イベント、教育事業など多岐に事業を展開されていますが、なぜこんなに事業領域を広く展開されているか教えていただけますか。

お客さんと農業との接点を考えたときに、もちろん販売が一番大きい接点ではあると思ったのですが、市場的にそこはもう飽和してると思うんです。
そう考えたときに、全く異なる接点をつくってアプローチをしていかないと可能性は広がらないなと思ったんです。

株式会社アグリゲートの現在の事業展開図

(上図:株式会社アグリゲートの現在の事業展開図)

なるほど。農業や地方へ興味を持ってもらうためには、販売だけでは興味が広がらないし、マーケティング戦略としても可能性が広がらない。

ですので、たとえば地方に行ったときは生産地で野菜などを仕入れるだけじゃなくて、情報も仕入れてそれをWEBコンテンツに生かしますし、八百屋の売り場で整えた教育体制を講義イベントとして活用してます。

教育事業のほかバスツアーなどのイベントも展開している

(上:教育事業のほかバスツアーなどのイベントも展開している)

 

選ぶ野菜の基準は生活者目線で買いたくなる
「背景」があるかどうか

旬八青果店に並ぶ野菜や果物の基準は?

まずは農家さんが、これはこんなふうに作っていますとしっかり説明できるかどうかを見ています。
僕たちが農家さんに代わってそれを伝えていくことが、大切になってくるので。

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その野菜の背景をしっかり伝えられるかをどうか、が基準なんですね。

そうです。まず、ふつうのスーパーには「有機栽培」を売りにしている野菜が多く並んでいますが、そこはこだわらないです。
有機栽培=高い=おいしい…そんなことないぞ!」っていうケースをいくつも見てきたので、それだけでは良し悪しを判断できないと考えています。

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最近、左今さんが産地に行って体験したことで、印象深いエピソードなどありますか。

北海道のJAびえいさんでしょうか。
象徴的だなと思ったのが、市場流通で出しているアスパラガスの品種と僕たちに売ってくださっている品種が違うんですよ。

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市場では曲がっているアスパラガスは売れないので、曲がらない固いやつを作っているんです。
でも僕らだったら、理由をきちんと説明しながら売れるので、市場に出回らない風で曲がるくらいやわらかいアスパラガスを売ってくださるんですね。
で、彼らにどっちがおすすめですか?って聞くと「曲がってるほうがおいしいから、僕らはこれしか食べない」っていうんです。

旬八青果店では、そういったふつうのスーパーじゃ手に入らない野菜に出会える可能性が高いってことですか。

そうですね。産地直送が4割、市場からが5割、自社農場からが1割といった割合で基準を満たした野菜をそろえています。

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川上から川下へ ニーズに応える業態をつくっていく

ネットショップはどんなお客さまがいらっしゃいますか。

実店舗に来てくださったお客さんはもちろん、実店舗に来れない方もけっこう買われています。地方からの注文も多いです。今はなぜか岐阜県からの注文が多いですね(笑)

お客さんが旬八青果店のネットショップを知るきっかけはどんなところなんでしょう。

イベント催事にもけっこうでているので、そういった活動をきっかけに知ってくださる方も多いです。

今ネットショップにおいて抱えている悩みなどありますか?

そうですね。ほかの事業者さんと違って粗利を自分たちで開発しないと、なかなか伸びないところが悩みです。
粗利が70くらいある商品を作れたらいいんですけど。なので自社ブランドのピクルスとか加工品を売り出していけたら、通販の売上を加速させられるかなと思ってます。

なるほど。今後ネットショップで挑戦したいことはありますか?

通販でありながらローカルにこだわっていきたいと考えてます。

「ローカル」といいますと?

お客さんが注文してから数時間後にすぐ届けられるような…そんな身近な存在になれるよう、体制をつくっていきたいなと。旬八青果店はお客さんにとっての「三河屋さん」的な存在になりたいんです。

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あとは他の八百屋にない個性的な野菜や果物のラインナップこそ強みだと思うので、都内にかぎらず購入する理由になると思うんです。
その部分をネットショップで、しっかりと全国に届けていきたいです。

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では最後に今後の目標をお聞かせください。

ビジネスにおいて「川上から川下」ってよく言われるのですが、「生産物」をもっと売るには「業態」そのものを作っていかなきゃいけない。
時代や環境にフィットした提案こそが、お客さんの心をがっちり掴むと思っています。なので売上だけにこだわらず「業態」をしっかりつくっていって、その結果、何千何億の売上につなげていきたいと考えています。