小学生から始めたビジネス。辿り着いた「買いたいのは商品じゃない」の意味とは?

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ショップオーナーインタビュー ロッカーズ 野村祐一郎さん

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アメリカプロバスケットボールリーグ「NBA」のグッズを販売する「ロッカーズ」さん。カラーミーショップ大賞2015では、一般投票で1300票を集め、見事スポーツ・アウトドア部門で受賞された人気店です。店長の野村さんは、小学生からビジネスをスタートしたという異色の経歴の持ち主。しかし、そのビジネスの酸いも甘いも知った野村さんが作り上げたのは、意外なほどお客様を大切にした温かかさにあふれるお店でした。

お年玉で始めたビジネス。中学生で月収40万円!

野村さんは、どういった経緯でネットショップを始めたんですか。

その話をするには、かなり昔の話をしなくてはならなくて。僕が子供の頃、親父が銀行員をやめて、インターネット関連の仕事を初めてたんですけど、あまり上手くいかずご飯食べるのがやっとの生活だったんです。

お、かなり遡りますね。

はい。すごく貧しくて。友だちから「お前の家ボロいな」とからかわれて、悔しくて母親に泣きつくと、「悔しかったら自分で稼げるようになりなさい」と言われて。それがきっかけで、自分で稼げるようになるには、どうしたら良いか考えたんです。

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それがビジネスの原点につながったんですね。

そうですね。初めてお金を稼いだのは、おじいちゃんから貰った千円を握りしめて近所の洋品店に行って、半額のパーカーを仕入れて、ネットオークションサイトに出品したときですね。

それは、小学生のときのお話ですよね。

そうですね。中学生になってからは、インターネットで卸業者から古着を購入して、ネットオークションサイトで販売しました。

中学生の時に、インターネットで買い物ができたんですか?

親父の名義で購入しました。その当時流行ってたシャツなんですけど、3,4倍くらいの金額で売れましたよ。
他にも、ガラケーで閲覧できるサイトを作り、そこに貼ったアフィリエイト広告でも、月に30〜40万円の利益が出たりしました。

中学生でそんな大金が!

でも、友だちにそのことを紹介したら、そのアフィリエイトのリンクを、ある掲示板に貼ってしまいアカウントがバン(利用停止)されてしまいました。

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中学生にして、ビジネスの酸いも甘いも知ってしまったんですね。その後も、現在までいろんなビジネスをされたんですか?

高校からは、一転して、スポーツ推薦で入った学校でバスケ三昧でした。この頃からNBAの番組を見ていました。

ついにバスケが出てきましたね。

大学もスポーツ推薦で入学して、4年間バスケを頑張ろうと思っていましたが、そんなに甘くはなく…このままバスケだけやっていて大丈夫なのかと、将来に不安を持つようになり、バスケ部をやめてビジネスに熱中するようになり、月に200万円くらい売上を出していました。

規模が拡大している…。またビジネスに戻ってきたんですね。大学を卒業されてからロッカーズは立ち上げられたんですか。

いえ、在学中です。起業することを決めて、部活も辞めた頃から準備資金を貯めていました。そして卒業を待つことなく起業することができました。

競合の「品切れ」は売れる!
好きな商材だから耐えられた試行錯誤の日々

どうしてネットショップを始めようと思われたんですか。

ガラケーのアフィリエイトが一時期すごく儲かったように、ビジネスには、流行り廃りがあって。ネットショップなら、これからの時代でなくなることはないなと思い選びました。そして、商品点数に制限がなくて、モールと違って顧客リストを自分で管理することができるカラーミーショップを選びました。

なぜ商材にNBAグッズを選んだんですか。

自分でもNBAグッズを集めていましたし、選手としては諦めてしまいましたが、バスケに関する仕事がやりたいと思っていました。

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NBAグッズといってもたくさんありそうですが、最初はどんな商品を販売しようと思ったんですか。

まず最初に、NBAグッズ関連のキーワードで検索してみて、どんなものが需要があるのかを調べました。その後に、競合サイトが品切れになっている商品をひたすら購入しました。「品切れ」になってるということは、「売れる」ということだと考えたんです。

それは効率が良さそうですね。具体的にどんな商品が品切れになっていたんですか。

当時は、iPhoneケースですね。まずは、小さく自分の中に成功体験を作ることが大切だと思うので、アメリカのAmazonで購入して、1個売って、2個売ってと少しずつ重ねて、最終的にはかなり売れました。

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その後も順調に成長されたんですか。

いえ、途中で壁にぶつかりました。資金も足りなくて、必死で勉強していく中で、「コンセプト」「ターゲット」「ポジショニング」を決めなくてはと気付きました。

なぜその3つが必要があったのでしょうか。

はじめて訪れた方が、何のショップなのかわかる工夫が大切だと考えたんです。誰のためのサイトなのか。

そのために、まずは、ターゲットとして、加藤さんというペルソナ(顧客を代表するプロフィールを持った仮想の人)を作って、その人に刺さるコンセプトとして、「NBA FAN LIFE」を掲げました。そして、ポジショニングマップで、競合と強みを比較してみると、商品点数が多いところがないということに気づきました。
それで今の商品点数になるんですね。どのくらいあるんですか。

15万点です。

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想像以上でした!コンセプト、ペルソナ、ポジショニングマップときちんと作ることにより、売上はすぐに上がりましたか。

いえ、あがりませんでした。実際やってみて思いますが、ネットショップを初めて、1年そこらで月に100万円以上の売上を上げるのはものすごく難しいんです。それでも、バスケで鍛えられた精神力と、ビジネスへの情熱で我慢して今があると思っています。

「バスケットボール」という好きなモノを商材にして、バスケに関連した仕事がしたいという思いでここまでがんばれたと思います。

買いたいのは「体験」。
お金だけを追っていてはビジネスは成長しない。

では、どのようにして、今の安定した売上を上げるサイトに成長させられたんですか。

どうしても、段々と競合との価格競争になってしまって、価格を下げないと売れないということが続いて。ここに疑問を持って、価格競争をやめて、「体験を売る」ことにしたんです。

といいますと?

また子供の頃の話に戻ってしまうんですが、駄菓子屋に80歳くらいのおばあちゃんがいて。お菓子を食べながら、いつもおばあちゃんと話をするのが楽しくて、3年間通い続けてたんです。でも、ある日突然おばあちゃんはいなくなってしまって。息子さんから、亡くなったことを聞いたんです。

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なんと。

泣きながら帰って、その日以降、駄菓子屋に行かなくなったんです。つまり、自分は、お菓子を買いに行っていたのではなくて、おばあちゃんとの時間を買いに行っていたんだなということを思い出したんです。
おばあちゃんとの「体験」にお金を払っていたということですね。

そうです。そして、人と人とのつながりというか、人間関係、コネクションということが大切だと思いました。そこで、発送をするときに、手書きのメッセージを加えたり、クリスマスが近くなったらポップコーンを同封したりしたんです。
ポップコーンは、NBAっぽくて素敵ですね(笑)

そういうことを積み重ねていくうちに、商品ではなくて、「ロッカーズの野村さんが好きです」というお客様が出てきて。単に商品を買うのではなく、「ロッカーズさんから」「野村さんから」買いたいといってくださる方が増えてきました。

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すごく根気のいる作業ですね。

そうですね。だからやっぱり情熱がないとできないと思います。目的がお金だとこれは続かないと思います。すぐに結果が出るものではないし。そして、結果的に、売上が徐々に伸びて今があります。

最初の方のお話で、野村さんは、「お金」が好きなのかなと思っていましたが…

実は、悪い経営者にお金を騙し取られてしまったことがあって…。それはもう、お金を目的に動いていたからかなという反省で…。

なるほど。本当に、いろいろ経験されているんですね。

夢はロッカーズのファンの方と一緒にNBA観戦すること

カラーミーショップ大賞2015 を受賞されましたが、その後の反響はありますか?

地元の友だちに、お前は何をやっているかわからない、と思われていたんですけど、賞をもらえるくらいきちんとネットショップを運営しているということがアピールできました。ネットショップって、いろんな事が見えないので、信用されていなかったみたいで。

「ー般投票」もとてもたくさんの票が集まっていましたね。

ロッカーズのLINEグループがあるんです。そこで、特別割引などをフックに声をかけました。

受賞されたあとも、そのグループの中で盛り上がりましたか?

はい。とても喜ばれました。いつかそのお客様に実際にお会いして、お礼を言いたいなと思っています。

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それでは、最後に、これからのロッカーズの展望をお聞かせください。

直近では、世界を舞台に活躍しているスポーツトレーナー神谷卓宏さんと提携して、バスケット界を向上させるための無料の講演会を行う予定になっていまして。そういったことを通じて、これからは、社会貢献的な役割もロッカーズが果たせたらと思っています。そのためにも、バスケ界に影響を与えるくらい、もっとロッカーズのブランド価値を高めたいです。

あとは、ロッカーズのファンの方たちと、一緒にツアーを組んでNBA観戦ができたら楽しいですね。

たしかにそれはとても楽しそうですね。これからも野村さん、ロッカーズさんのご活躍を期待しております。今日は情熱的なお話を本当にありがとうございました!