新しい絵本が生まれる場所を作りたい「ニジノ絵本屋」石井彩さん

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ショップオーナーインタビュー 「二ジノ絵本屋」石井彩さん

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都立大学前にある「ニジノ絵本屋」は、大型書店では取り扱っていないインディーズなどの貴重な絵本と、”はらぺこめがね”などの人気作家も生み出した自主レーベル作品を販売しています。絵本と作家さんへの愛情たっぷりなお話をたくさん聞くことができました。

自己紹介をおねがいします。

ニジノ絵本屋の石井彩です。うちのお店は、作家さんが自主制作した絵本や、うちのレーベルで出版した絵本など、普通の書店には流通していない絵本を中心に取り扱っています。
都立大学前にある実店舗では、100冊くらいを常時用意しております。

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見たことのない絵本ばかりですよね。

そういっていただけると嬉しいです。普通の書店さんでは流通していない本が多いので、
絵本好きなお客さんも、当店にお越しくださると「この絵本、知らなかった」とおっしゃっていただけます。

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一般の書店さんは、売れる絵本を取り揃えている事が多いので、あまり有名ではない作家さんの作品にはなかなか巡り会えません。でも良い絵本って、もっともっとたくさんあるんですよ。

絵本をつくりたいクリエイターはたくさんいるのに発表できない

お店を始めるきっかけはなんだったんですか?

私の周囲には、将来的に絵本を作りたいなぁという人がいたり、作ったけど書店には置いてもらない人がいて、そういうお話を聞くうちに、何かできないかな、と思ったんです。

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でも、絵本は、無名だと発表する場がなかなかありません。でも絵本を作りたい方ってすごく多いんです。

手芸作家さんや造形作家さんなどクリエイターの方々とお話をすると、「ゆくゆくは絵本が出したいんですよね」とおっしゃる方が、とてもたくさんいらっしゃいます。ご自身に子どもができたことをきっかけに絵本を作りたいと思う方も多かったり。

そういう、絵本作家として著名ではない方の「新しい絵本」を発表する場があればいいなと思い、立ち上げました。

自己満足の作品はダメ。こだわりの絵本書店に

有名ではない絵本を集めると、クオリティを保つのが大変ではないですか?

販売する絵本は厳しくセレクトしています。
作家さんの自己満足の作品は絶対ダメですね。たくさんの人に届けたいという気持ちがあるものでないと。

わたしたちは、作り手と読み手の架け橋になるような絵本を扱いたいので、そういった目線でかなり厳選しています。

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この人たちの絵本をつくりたい!自主レーベルの立ち上げ

自主レーベルでオリジナル絵本を作られた経緯を教えてください。

絵本て、販売価格が高いと感じる方も多いと思うんですが、仕入れる金額も高いんです。
仕入れて販売する方法では、なかなか採算が合わない事に気付いて、自分で作ってしまおうって思ったんです。そんな頃に、作家のはらぺこめがねさんと偶然出会いました。

彼らの絵本を作りたいという気持ちも後押しになり、レーベルを立ち上げるに至りました。
初めて出したのは、そのはらぺこめがねさんの「フルーツポンチ」という絵本で、現在まで5冊を私たちのレーベルから出版しています。

「フルーツポンチ」は、こだわりを感じる絵本ですね

もっと普通のかたちにしてコストを下げることはできたんですが、どうしてもこだわりたかったんです。取引をしている印刷会社さんが、とてもていねいに私達の作りたいものを聞いてくださり、納得のいくものができました。

88歳!りぼん創刊号に執筆の絵本作家

作家さんからニジノ絵本さんのレーベルで出版したいという問い合わせはきますか。

問い合わせは多数いただいています。作品を送ってくださる方もいます。
はらぺこめがねさん以外に、良い作家さんは見つかりましたか?

はい!「はっけようい」と「うたいましょう」という絵本を描かれた宮坂栄一さんという方で、お年が88歳なんです。

元々、児童漫画の作家さんで、少女マンガの「りぼん」創刊号にお話を描かれていたそうです。

同じく少女向けの漫画を描かれていた、手塚治虫さんの一つ先輩です。その頃の児童漫画家さんが現在2名ご健在らしいのですが、宮坂さんはそのうちのお一人なんです。

素敵で元気な画家のおじいさまなんです。絵本は初めて出版されたんですが、少しレトロな作風が若い方にもとても好評です。

とにかく繊細な作風が素敵で、この絵本はたくさんの人に伝えたいと思ったので、英語と日本語のW表記にしています。

作り手と読み手の架け橋になるような絵本屋に

では、最後に、石井さんにとってネットショップの「ニジノ絵本」とは?

住んでいるところが実店舗から遠かったり、いろんな事情があって来られない人でも、足を踏み入れた気持ちになってもらえるような。ネット上のもう一つの「ニジノ絵本」というお店でありたいと思っています。

これからも期待しております。今日はありがとうございました!

*こちらの記事は、2015年によむよむカラメルに掲載されたインタビューを再編集して公開しています。