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東京・中野の閑静な住宅街にあるベーカリー「BOULANGERIE LEBOIS(ブーランジェリールボワ)」さん。
パン職人の森朝春さんと、奥さまの葵さんで2001年に開店。夫婦二人で営む小さなお店にするつもりが、「本場フランス仕込みのパン屋さん」の先駆けとして、空前のパンブームに乗り、あれよあれよとあらゆる雑誌に取り上げられるカリスマ店へ成長してしまいました。
そしてパンブームがひと段落して始めたネットショップでも、思いもよらない幸せなエピソードが。
カラーミーショップ大賞2015「職人賞」獲得を記念いたしまして、ネットショップを担当している奥様の葵さんに、お店のこと、ご主人のことなど、お話をたくさんお聞きしました。
さっそくですが、ご主人はどんなきっかけでパン屋さんになることを志されたんですか。
葵さん
主人は石川県の羽咋市という所にあるパン屋の三代目なんです。給食のパンなんかもつくる、いわゆる「街のパン屋さん」の息子だったんです。
それで、パンの勉強をしようと「東京製菓専門学校」に進学して。その時は、東京で数年間修行したら、地元に帰ろうくらいに思っていたそうですよ。
ご主人と葵さんとは東京で出会われたんですか。葵さん
そうですね。彼が専門学校を卒業後に働いていたパン屋に、私がアルバイトとして出会って、結婚することになりました。
ちょうどそのとき、私はヨーロッパに行きたいなと考えていて。
じゃあ、地元に帰る前にパンの本場のフランスに行ってみようか、ということになって、彼の専門学校の先生に、フランスで見学させてもらえるパン屋さんを教えてもらいました。
どのくらい住まれていたんですか。葵さん
本当は、半年間のつもりだったんですけど、結局は2年8ヶ月もいました。
全然違いますね!お仕事はどうされたんですか!葵さん
まずは、見学のつもりで行ったお店で働かせてもらえることになって。
そうしたらちょうどそのお店のオーナーさんの親戚がパン屋のオープニングスタッフを募集していて、気に入ってもらえて。
フランス語はできたんですか。葵さん
全然できませんでしたよ。「トラヴァイエ、トラヴァイエ!(働く、働く!)」みたいに単語でなんとかしのいで。今思えば若気の至りですね。
なんと…。フランスはやっぱり刺激的でしたか。葵さん
そうなんです。そんなに長くいたのも、そもそもは、主人が、フランスで始めての朝食で出会った「クロワッサン」が、とても衝撃的だったんですって。
専門学校を卒業して、5年働いて、もう自分は立派な職人だと思っていたのに、これはなんなんだ!って。そこから、真面目にパンのことを勉強し始めたんです。
それがルボワさんの絶品クロワッサンの原点なんですね。葵さん
そうなんです。
そのあと日本に帰国されて、どうしたんですか。葵さん
今は無くなってしまったベーカリーに、オープニングスタッフのスーシェフ(副料理長)として入ることができて。
そこのシェフたちは、フランスで修行された方や、木村屋でしっかりキャリアを積んだ方だったりして、たくさん勉強させていただくことができました。
そして、2001年に独立を決めて、今のお店をオープンしました。
ご夫婦で始められたんですか。
葵さん
そのつもりだったんですけど…。
私が店番をして、主人がパンを作って、少しずつ口コミで広がっていったらいいな、くらいに思っていたんですが、あれよあれよとものすごいお客さんが来てしまって!
最初から、集客ができ過ぎてしまったんですね。
葵さん
「フランス帰りのシェフが作ったお店」という触れ込みと、パンブームが重なってしまって。
とてもとても二人では回せなくなってしまったんです。
パンブーム!葵さん
すごかったんですよ。バスでパン屋を巡る「パンの会」みたいなものがあって、日本中から団体さんで押し寄せてくるかと思えば、雑誌やテレビも次々に来て、どんどん有名になってしまって。
主人がお客さんの前に行くと、「わ〜 ルボワの森シェフだ!サインしてください!!」とか言われるんですよ。
すごいですね!!超有名人じゃないですか。みなさん、お目当てはなんだったんですか。
葵さん
クロワッサンですね。デニッシュ系です。人気商品は今と変わりません。
順調すぎてしまったんですね。葵さん
もう、大変でした。声は出なくなっちゃうし、たくさんの人を雇わないといけないし。製造に、彼を含めて3人いても、朝の3時くらいから23時まで働いても終わらないんです。
お店を開いたばかりで、張り切って、出来合いのものは一切使わないぞとか、もう全部やろうとするから、さらに大変で。
お子さんも小さかったんじゃないですか。葵さん
そうなんです。子どもの保育園のお迎えはいっつも一番最後に駆けこんで。
下の子が2歳、上の子が6歳のときにオープンしたので、子育てもままならなくて。とにかく、ご飯だけはきちんと食べさせなきゃ!と必死でした。
それはどのくらい続いたんですか。葵さん
パンブームが落ち着くまで、3年くらいかな…。
長いですね!!
パンの種類は今と同じですか。葵さん
もちろん変わっていますが、昔からあるパンもたくさんありますし、メッセージパンもずっとあります。
メッセージパンは、どういった経緯で作られるようになったんですか。葵さん
私たちのメッセージパンのような「飾りパン」は、フランスでは、「パンシュープリーズ」と呼ばれていて、コンクールもあるんです。
もともと、フランスで一番最初にお世話になったパン屋さんに教えてもらっていて。
ただ、主人は最初、やりたいけど、できないといっていたんです。
私は美大をでてますし、粘土も触っていたので、じゃあ、私が作ろうと思い、最初は私が作って彼に教えていました。
もともとメッセージパンは葵さんとの合作だったんですね!葵さん
でも、いつのまにか、彼のほうが断然上手になってしまって。
やっぱりパンの性質を知らないと、膨らんだらどうなるとか想像もつきますしね。ですから、今は彼が全て作っています。
先ほど見学させていただいたとき、ご主人が作るメッセージパンの細かさにびっくりしました。葵さん
こだわっちゃうんです。
この間も、クリスマス時期でものすごく忙しかったのに、もう、一つ一つそれは丁寧に…。
ですから、メッセージパンは、1日6個が限界なんです。
クロワッサンも繊細な味ですよね。パリパリ、サクサク…。
葵さん
クロワッサンだけは、どんなに忙しくても、他の人に折らせることもしなかったんです。
すごいこだわりですね。葵さん
本当は、とても忙しかった時期に、工場を建てて、大量生産をして、などと勧められたこともあったんですけど、うちの主人には無理だなと思いました。
今は落ち着いて、一人で作って回せているので、とても楽になったようです。まあ、忙しいですけどね。
ブームが落ち着いてきたころにネットショップは始められたんですよね。どうしてカラーミーショップを選んでいただいたんですか。葵さん
実は、最初は、大きなモールさんから営業をいただくこともあったんですけど、利用料金がとても高くて・・・。
利益を出すためには、1日にどのくらい売ればいいですか?と聞いたら「100個です」と言われて。うちには、無理だと思いました。
それで、他のサービスを探している時に、あるネットショップがカラーミーショップさんを使っているとわかって、利用料金も安いし、これにしようと決めました。
初めてみて、いかがでしたか?葵さん
お店に来てくれていた人は、買ってくださったんですけど、新規のお客様を獲得するのは難しかったですね。
勇気を持って、カラーミーショップさんが開催していたセミナーに参加をして、そこで基本的な検索エンジン対策などをお聞きして、少しずつ改良することができました。
私たちのセミナーが役に立ったんですね。嬉しいです。葵さん
なにより、インターネットにビビっていた気持ちがなくなりました。
あとは、その会をきっかけで、他の先輩ユーザーさんとお友達になって、たくさんのことを教えていただきました。
それはとても素敵ですねえ。
その後、ネットショップを続けていく中で、お客様は増えましたか?葵さん
はい、増えましたね。頑張って少しずつ改良しましたし…。なにより、リピーターさんが増えました。
どういった要因で増えたんですか。葵さん
うーん。確実にはわからないんですが、よく言っていただけるのは、ラッピングが丁寧で驚いたって言われますね。
パンをインターネットでよく買われるお客様も、うちの「梱包が違う!」といってくださって。
実際、梱包はこだわられてるんですか?葵さん
はい。主人が何日間もかけて、一生懸命作ったパンを、最後にお客様に渡すのは私じゃないですか。それはお店での接客もそうですけど。
だから、そこで失敗しないように、シールはきちんと真ん中に、紙はずれないようにとか、小さなことなんですけど、とても気を使っています。
お店での接客と同じように、梱包を丁寧にすることが、ネットショップの接客になるのかもしれないですね葵さん
せっかく美味しくても、そこでがっかりされたくないですよね。とても緊張してやっています。
リピートされる方が少しずつ増えて、今があるということですね。葵さん
そうですね。知ってる人の知ってる人がつながって。そして今年はついに、メッセージパンをお断りしなくてはならないくらい受注が入ってしまいました。
すごいですね!!葵さん
クリスマスシーズンで、お店での受注もたくさんはいって、もう、毎日徹夜で…。ネットショップは在庫設定を減らさないといけなかったのに、間に合いませんでした…。来年は気をつけたいと思っています。
積み重ねってすごいですね。
ネットショップを運営されていて、嬉しかったことはありますか。葵さん
あります!10年以上前に、うちの近所に住んでいたお客様が、その頃に販売してたパンは売っていないのか、とお問い合わせをくださったことがあって。
たまたま作れる材料が揃ったので、特別に作りますよとご連絡したら、お子さんが1、2才の時に近所に住んでいて、そのパンがとても好きだったと返信をくださって。
わあ、感動的ですね!葵さん
そのパンの最年少ファンですね!って返信したんですが。本当に嬉しかったです。
お引越しされてからも、買い続けてくださるんですね。葵さん
そういう方がたくさんいらっしゃるんです。ここは東京なので、地方に転勤だったり、実家に帰ったりで、引越される方がとても多いんですよね。
葵さん
新しいおうちの周りにも、パン屋さんはたくさんあると思うですけど、うちを選んでくれるのは、やっぱり思い入れがあるからなのかなと思うんです。そういうことがとても嬉しいんですよね。
たしかに、インターネットだったらずっとつながっていられますもんね。葵さん
転勤をたくさんされる方は、注文が入るたびに、違う場所にいらっしゃったりして。ああ、今はここに住んでるんだな〜とか、ちょっとした文通のような気持ちでとても楽しいですね。そして、すごく嬉しいです。
何て素敵なお話・・・!
では、最後に、カラーミーショップ大賞のお話を。ルボワさんはカラーミーショップ大賞2015年でとてもたくさんの一般投票を獲得されましたね。なにかコツがあったりしますか。
葵さん
とにかく頑張りました!実店舗のほうで、チラシを配ったり、SNSで呼びかけたり。途中でちょっと疲れちゃうくらい頑張りましたよ。
でも、お客様がわざわざお店に「投票したよ」なんて教えてくれたりして、良いコミュニケーションにもなりました。
それだけ、ルボワさんが普段からお客様に愛されてるということですよね。「職人賞」を受賞されていかがでしたか?葵さん
地味な手仕事を評価してもらえる場ってなかなかないじゃないですか。主人は本当に嬉しかったようです。モチベーションが確実に上がりましたね。
まあ、わたしは「職人」じゃないので、ちょっとがっかりしましたけどね(笑)
ご主人に喜んでいただけて私たちも嬉しいです!次はぜひ葵さんの頑張りで、大賞を目指してください!!葵さん
ふふ。でも、今年は途中で疲れない程度にがんばりますね。
葵さん、本日はありがとうございました!
※ブーランジェリールボワさんは、2017年にカラーミーショップをご卒業され、新しいサイトへお引っ越しされました。
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