最初から成功なんてない、まずはできること全てやる!「びっくりカーテン」の戦略と独自の運営体制

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びっくりカーテン オーナー 片岡幸美さん インタビュー

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カラーミーショップ大賞2016 で大賞に輝いた「びっくりカーテン」さん。魅力的なスタイリング写真やていねいな接客対応など、こまやかな気配り満載のネットショップでファンを増やし成長し続けているお店です。今回はショップの運営会社である株式会社ソレイユの社長・片岡幸美さん、取締役・羽田幸恵さん、デザイナー・杉本笑子さんにお話を伺いました。

「いいね!」を購入までつなげる難しさ

「びっくりカーテン」を始めた経緯を教えてください。

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(写真右:片岡さん)

片岡さん: もともと父がやっていた健康器具の会社を継ぐかたちで、がらりと事業形態を変えてカーテンの通販をはじめました。もう8年前になります。今でこそ20名ほど社員はいますが、最初は経理担当者と羽田とわたしの3名でした。

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当時は「死ぬ気で働かないと!」という想いと「お問い合わせ=いつでも繋がる」というイメージがあったので、お客さまからの電話を携帯に転送していつでもどこでも対応していました。そのうち「商品ページを見ながらじゃないと対応できないぞ」と気づいて、そこで初めて時間制限をつけましたね(笑)

最初のころはかなり無理をしていた時期もあるんですね。なんでもポンポンと上手くいったわけではない。

片岡さん: ぜんぜんですよ。本当に苦労しました。

カーテン販売のむずかしさってどこらへんにありますか?

杉本さん: 雑貨やインテリアの市場ですと「いいものがみつかる」→「購入」へすぐに繋がると思いますが、カーテンの場合はお店にいいものがあっても買わないんですね。

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(写真左:杉本さん 写真右:羽田さん)

羽田さん: それは日本人の暮らしにおけるカーテンの位置付けが特殊であることが関連していて、海外のようにインテリアコーディネートの一部としてデザインを選ぶのではなく、お引越しやリノベーションなど節目のタイミングに機能やサイズを見て買うものである「文化」も関連しています。

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なるほど。

羽田さん: なのでSNSやブログで商品の魅力を発信しても「いいね!」はもらえるけど「購入」までモチベーションを高めるのが非常に難しいんです。

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片岡さん: わたしたちとしては、そもそも日本におけるカーテンの価値自体をがらりと変えて、もっと自由に楽しくカーテンを選ぶことを提案していくことで、購入機会を増やしていきたいです。

開店当初から広告には積極的に挑戦

購入機会が少ない特有の「難しさ」もありながら、着実に成長していらっしゃるところが目を見張ります。まずどのように集客したんですか?

片岡さん: やはりお店を見てもらわらないことには始まらないので、3人で始めた頃からずっと変わらずリスティングやADwordsなど広告を活用しています。

担当はどなたが?

片岡さん: わたしがやっていました。

もともと広告の知識があったんですか?

片岡さん: いえいえ。やっぱり調べて勉強して。最初は自分でやっていたんですが、いろいろ試してみても効率が合わず2カ月ほどの運用を経て業者さんに委託しました。ほんの少しではありましたが自分で実践してみたメリットは、業者さんからの運用レポートの内容が妥当か否かを判断できた点です。

なるほど!

片岡さん: 初めから業者さんに委託していたら「このくらいの成果が妥当ですよ」と言われてしまうと比較対象がありませんので、それが効率的なのか悪いのか判断することが難しいと思います。その点で良かったと思っています!

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担当者不在でもSNSの運用が効率的に回る理由

見てもらうための努力、すばらしいです…!そうやって集めたお客さまへカーテンのコーディネートをわかりやすく写真で提案していらっしゃいますね。

杉本さん: そうですね。商品写真はこのスタジオを使ってできるかぎり自分たちで撮影しています。

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カメラマンさんがいらっしゃるわけではないんですね!

羽田さん: はい。性能のいいカメラがあれば、あとは教えあったりしながらそれぞれのカーテン担当者が撮影しています。
FacebookTwitterを中心に運用していますが、同じようにSNSも担当者がいるわけではなくて…

いらっしゃらないんですか!

片岡さん: はい。ひとつのカーテンシリーズに1人の担当者がつくので、商品が決定したあとは、写真撮影・SNSやブログでの告知は一貫して1人が担当するかたちで回しています。

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更新頻度が高く保たれているのは複数人での運用だからなんですね!

リアルで親近感の湧く写真や言葉が購入の後押しに

スタッフからの発信のほかに、お客さまの声も積極的に掲載されていますが。

片岡さん: ラブリールーム」ですね。開店当初から集めているものになります。写真と感想をいただくかわりに北欧ファブリックのインテリアフレームをもれなくプレゼントしています。

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杉本さん: 集まる写真はそれぞれお部屋で撮影されていて機材も環境もバラバラですので、画像が少し見づらい場合もあるのですがあえて加工はせず生の声であることを重視しています。
嘘みたいにキレイな写真よりも、リアルで親近感の湧く写真や言葉のほうが信頼できると思ったんです。

なるほど。生の声を大切にされている。

羽田さん: はい。あとは、いただいた感想に対してスタッフがコメントしているので、そのコメントを楽しみにレビューをくださる方もいます。

一方的な発信というよりも、一種のコミュニケーションツールとなっているかもしれません。

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アイデアは月1全体ミーティングで出し合う

戦略は、チームなどで決めているんですか?

片岡さん: そうですね。月に1回社員みんなで集まってミーティングをします。物流倉庫で梱包台(梱包用に使用しているテーブル)を囲んでアイデアを出し合うかんじです。そこでたとえば「生地を買われるかたが多い」「ハンドメイドをされている方が多い」とかでてきて「じゃあ生地を販売してみましょうか」って、その場で決まっていくというか。

そこではフラットにアイデアを出し合ってるんですね。

羽田さん: はい。まず社長からアイデアが子どものようにバンバン出てくるんですよ(笑)それに引きずられてまわりもアイデアを出していって、なんとなくかたちになっていくっていう。

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事業戦略といえば「びっくりカーテン」のほかに2015年に新たにオープンしたお店「トキメキカーテン」もありますね。

杉本さん:
こちらのショップのターゲットとなる方は、少し年齢が上の方を想定しているのでより見やすいページにする意識で作っています。購入層の異なる商品を全て「びっくりカーテン」で紹介するのはむずかしいですし、思い切って新たにスタートしてみました。

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ターゲットに応じてショップをわけたんですね。こちらも今後の展開が楽しみです。

カーテン市場での戦略と新しいビジネスチャンス

ちなみに「びっくりカーテン」、お店の名前は片岡さんが付けたんですか。

片岡さん: 冗談でいくつか案をだしあって「びっくり」は量販を想像させるしどうかな?とも思ったんですが、最終的には覚えやすさが決め手で選びました。(笑)

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たしかに1度聞いたら忘れない名前です! 「量販」とは違う「こだわり」はありますか?

片岡さん: 量販さんとの最大の違いは「専門性」だと考えています。「安いものをたくさんご用意しました!サイズが近いものを持って帰ってください」という販売スタイルに対して、うちでは特に接客に力を入れています。メールや電話での対応がメインですが、図面をいただき、ご希望の機能やイメージをお伺いして綿密に打ち合わせを経たうえでカーテンをご提案しています。

ネットショップではあるけれども「接客」に強みがある!

片岡さん: はい! たとえばお客さまがご希望の場合は、取り付けまできっちり責任をもって対応しています。対応するカスタマーサポートは、ほとんどが未経験から始めたスタッフですが、お客さまに喜んでいただきたい!という気持ちは他のお店のどのスタッフにも負けません。たくさんうれしい感想をいただけるのは、そのほとんどがカスタマーサポートの接客力の賜物だと感じています。カスタマーサポートの対応力といいますか。人間力が「びっくりカーテン」の一番の強みなんです。

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今後チャレンジしたいことありますか。

片岡さん: 大きく2つあります。ひとつは、オリジナルアイテムの開発を強化していくこと。もうひとつは、生地の販売です。

オリジナル商品の開発がなぜ必要かというと、現状は限られた市場の取り合いをするうえで他店との差別化が明確にできていなければ価格競争に陥ってしまうからです。なので単に「色がオリジナルで当店でしか買えないカラーですよ」とかいうものではなく、他のお店では見たことがない商品またはそれよりも優れた商品を独自にたくさん提案して、「びっくりカーテン」でお買い物をしていただく理由を、今よりもっとたくさん作っていくことが今後やらなくてはならないことだと考えています。

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激しい市場の競争で生き抜くために差別化を強固にしていかねばならないのですね。

はい。同じ意味で、カーテンの輸入も差別化戦略の一つです。海外のカーテンは日本にはない魅力・デザイン力があるのでネットショップに掲載しているだけでも「この店は違うな」と思わせる力があります。輸入も開発も莫大なコストがかかりますし、売れるかどうか実績もない商品ばかりです。リスクが非常に大きいのですが、今のカーテン業界では「びっくりカーテン」にしかできない試みだと思っています。

リスクもあるけど、独自性ある取り組みというところでチャレンジしていらっしゃる。

片岡さん: それとは別に、生地を販売しようと考えています。
日本においてのカーテンの位置づけは先にお話しましたとおり、通りすがりや衝動的な動機などで訪れる人なんてほとんどいません。一度購入したらなかなか購入するものではないので、そんな状況を打破するための試みの一つとして、本来なら来るはずのなかったお客さまに来ていただけるような商品を並べてみようと思ったんです。

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なるほど。そこでなぜ「生地」を選ばれたのですか。

雑貨や家具などのほかのライフスタイル商品では、カーテンを発展させる内容になりにくいと考えたんです。そこで、今大流行中のハンドメイドに目をつけました。ハンドメイドの市場では、その資材となる生地の調達に苦労されている方が多いようですし、カーテンを扱ううちのお店にはここでしか買えない生地がたくさんあります。ハンドメイドをされる方は定期的に購入される方が多いのでリピーターのお客さまを、より確実に増やせるのではないかと考えています。また何度もご来店いただくうちに、ハンドメイドしたクッションやテーブルクロスに合わせて「カーテンも掛け替えようかな」と、思われる方も出てくるかもしれません。

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先々まで見越しての戦略なんですね。

はい。ハンドメイドが難しいアイテムでも、受注生産で多少の難しいオーダーメイド品もご用意もできるので「生地から作る何か」を探しているとき「びっくりカーテンを見てみよう」と思っていただけるような、より身近なお店になればいいなと思っています。

カーテンの手前、生地販売でさらに身近な存在を目指していくんですね。

そうですね。現在の日本ではカーテンを購入する機会って人生で1回か2回。「右も左もわからないお客さまたちをなんとか最後までサポートしたい!」そういう使命感でお店を運営していますし、そもそもの日本におけるカーテンの価値、カーテン市場自体を変革していきたいです。

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