商品に込めた思いを伝えるために、とことんこだわり抜く。創業百余年の「和ろうそく大與」が考えるデザインの話

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和ろうそく 大與(だいよ) 大西 巧さん インタビュー

滋賀県高島市に工房兼店舗を構える「和ろうそく 大與(だいよ)」さん。「カラーミーショップ大賞2017」では、伝統を残しつつ時代に合わせてより良いものへと刷新する姿勢が評価され「にっぽん文化奨励賞」を受賞しました。今回は、商品パッケージへのこだわりやデザイナーとの関係づくりについて詳しく伺いました。

滋賀県高島市にある「和ろうそく大與」の工房兼実店舗で、4代目社長の大西巧(さとし)さんにお話を伺います。

パッケージデザインにかけた期間は8カ月!すべての商品の裏側にある「ストーリー」

改めて、大與の成り立ちについて教えてください。

うちのひいおじいさんが1914年に始めて、2014年に創業100年を迎えました。僕らで4代目です。
創業時から宗教用、いわゆる寺院やお仏壇用に使う「和ろうそく」づくりが主軸になっています。

「和ろうそく」とは、どのような商品ですか?

一般的には櫨(はぜ)という植物から抽出した ろう でつくった「櫨ろうそく」のことを指します。一部のろうそくを除いて、芯も胴体部分もすべて自分たちの手作業でつくってます。

このカラフルなろうそくは、宗教用ではなさそうですね。

これは4年くらい前に僕が中心となって商品開発した「色ろうそく」ですね。原料も違って、米ぬかから抽出した油分で作っています。
特に「○○専用」というわけではなくて、生活の道具として使っていただいても、もちろんお仏壇にも使っていただいてもいいと思います。祈りの形は多様化していますから。使い方は使い手に任せています。

生活用商品を開発するときのこだわりはありますか?

物ありきでアイデアを出すのではなく、課題解決ベースで考えるようにしています。「こういうことで困ってる人たちがより生きやすくなるためには…」っていう。
例えばこの新商品は、最近のお仏壇事情を考慮して今までにないくらい小さいサイズにしてみました。


小さくてかわいい!これは日常的にも使えそう。パッケージもかなり凝ったデザインですね。

そうですね、生活道具としては、例えばお休みになる前に15分間だけ灯してもらうとか。
今は電気のオンオフで明るくも暗くもできますよね。つまり昼と夜を一瞬で変えられてしまう。
だけど、自然はそうじゃないでしょう。昼と夜の間には、夕方っていう時間があって、グラデーションがある。そういう時間を短時間燃焼のろうそくで作れないだろうか、みたいな。
大與の商品は、すべてにストーリーがあるんです。商品自体はもちろんパッケージに対してもしっかりと中身を詰めることにこだわっています。

ちなみにこのパッケージを作るのにどれくらい時間をかけましたか?

8カ月くらいかな。

8カ月も!

自分で使う用だけじゃなくギフトが多いので、贈る側も贈られる側も嬉しくなるデザインを重視しています。
例えば、このパッケージデザインには猫とネズミがいるでしょ?私たちのろうそくは植物性100%の蝋を使っているので、ネズミが蝋を食べにくるんです。それでろうそく屋さんは猫を飼って、貴重な蝋を守っているというストーリーがあるんです。
いやらしい話をすると、猫がパッケージに描かれていると売上が伸びる、という情報も早くに持っていました。(笑)
パッケージ次第で売れ行きも全然違うので、しっかりと時間をかけて検討しました。

より良いデザインを追求するため、まずはデザイナーと「友だち」になる。

パッケージだけでなく、店舗も素敵なデザインですよね。

graf」というクリエイター集団に、Webサイトも実店舗も含めて全部デザインしてもらいました。
彼らには、100周年を迎えた時に大々的に実施したリブランディングに関わってもらってて。この1年前くらいから、ずーっと話して、和ろうそくが何を伝えたいか、何を伝えるべきかを共有するのに時間をかけました。


デザイナーさんと出会うきっかけは、どのようにして生まれるんですか。

例えばグラフィックだったら、イベントのフライヤーとか見て、「このデザイン良いなぁ」って思うことがありますよね。そしたら誰がこれを作ってるんだろうって調べたり、わからなかったら主催者に直接聞いたりしてました。

インターネット上で出会ったデザインも同じです。良いデザインに出会ったら、そこのサイトの問い合わせフォームから「どこのデザイナーに頼んだんですか?」って聞くんです。

実際そのようにして出会った方はいますか。

色ろうそくのイラストを描いてくれたdannyちゃんとか、さっき言ったgrafもそうですね。

出会ったあと、どのように仕事へつなげられたんですか。

大事なことは、まず友だちになること。仲良くなって仕事を受けてもらえる土台を作ってから「こういう仕事頼みたいんやけど」って言う。

仲良くなる。

はい。デザイナー相手だと、「プロがこっちのほうが良いって言ってるから」と萎縮してしまうことがあるんです。それが仲良くなると圧倒的に言いやすくなる。コンセプトをしっかりと伝えられるようになるのは大きなメリットだと思います。

ネットショップは生産者がお客さんに直接思いを伝えられる場所

「カラーミーショップ大賞2017」の授賞式でも伺いましたが、インターネット黎明期の頃からWebでサイトを作られていたんですよね。

父親がインターネット大好きで、1998年にはホームページを作ってました。ロリポップ(※GMOペパボ株式会社が提供するレンタルサーバー)を使いはじめて、同じ会社が運営しているカラーミーショップを知ってネットショップを始めたっていう流れですね。

国内・海外への卸しや実店舗があるなか、ネットショップはどのような役割になっていますか?

すごくありがたいツールですよ。卸しとして扱ってくれてるショップは増えてるけど、やっぱりまだまだ少なくて。
メディア取材がきっかけで知ってくれた人とか、僕らと縁を持ってくれた人たちが検索できて、そこでさらにお買い物もできるっていう良い流れを作れていると思います。

ありがとうございます!運営時にアプリは使っていますか?
iPhoneでもiPadでも使ってます。やっぱり売上が来た時に通知が来るのが嬉しいんですよね。カラーミーさんからの情報も、アプリから見ることが多いです。

iPad に対応!「カラーミーショップ iOSアプリ」がさらに便利になりました

いろんなデバイスを活用されているんですね。ネットショップをやっていて良かったと思うことはありますか。

それこそ、直接やり取りができるのがいい。たとえば卸しで置いてもらっていても、自分の言葉で商品の良さを直接知ってもらうことはできない。商品の思いをしっかりと伝えようと思えば伝えられるっていうのは、ネットショップの良さですね。

ちなみに、ネット上では文章を書くことが多いと思いますがそれは得意ですか?
得意なほうだと思います。逆に僕は小出しにすることができなくて長くなりすぎちゃうんです。(笑)あとでちゃんと編集しますけどね。

ネットショップでの今後の目標があれば教えてください。

できれば、売上をもっと上げたい。僕たちの商品は消耗品なので、どこかで手にとってくれた方が気に入ってくだされば、リピートしてくださいます。そのときにネットショップを利用していただきたいです。

それはなぜですか?

僕がデザイナーと仲良くなるように、お客さんとも仲良くなりたいんですよ。生産者としての思いをしっかりと伝えられて、お客さんと直に繋がれるのは、実店舗もネットショップも同じです。

商品への思いをしっかりと伝えられるサイトにしたい。

はい。売りたいとはいえ、伝えたいことが伝わらないまま単純に商品写真などのビジュアルだけで買われていくことはちょっと悲しいなとも思っていて。そのために、もっと検索エンジン対策に力を入れることやサイト上の導線整理することや本体サイトとの連携が次の課題ですね。

大與さんの取り組みがますます楽しみになりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!